新川電機株式会社

島本 治

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先般、政府から30年代の原発稼働ゼロを目標に掲げた「革新的エネルギー・環境戦略」が発表されましたが、使用済み核燃料の再処理事業については継続するとか2050年まで稼動する原発の建設許可を出すなどの矛盾の指摘、米国との原子力利用協調への配慮、更には、経済三団体から一斉に猛反発されて、結局、1週も経たない内に発表内容は参考資料とする事になりました。

これがいい例で、原発問題についての議論は未だ続くと思われますし、日本の今後を大きく左右する方針決定を選挙対策のためなどで拙速に行なうのは厳に避けるべきと考えます。

多様な対応が必要となる電力管理

しかし、新規原発を次々と建設し電力需要の半分をまかなうという従来の原発路線の見直しは必至であり、経済産業省の電力システム改革専門委員会でまとめられた基本方針-国民に開かれた電力システムを目指して-にある様に「安くて手軽な電力の時代」は終わったという「電力供給」を巡るパラダイムシフトを前提として、以下の様な各種施策を社会全体で取り入れていく事になっていくのだと思います。

  • 再生可能エネルギーの開発・導入
  • 電力の自由化
  • 発送電の分離
  • 多様な電力料金体系
  • 省エネ社会と省エネ電力取引

製造業各社では震災後の電力不足に緊急避難的な施策での対応を行なわれてきましたが、上記の様な社会全体での「電力供給」を巡るパラダイムシフトに対応して自社に最も合った電力管理改革を体系的に推し進めていく事が必要になってきます。

電力管理対応力の低下

しかし、この様な社内での活動を考える場合、顧客でよくお聞きするのがそういった活動を進めていく人材が不足している、または今後不足するという事です。企業内において電気設備の計画/導入/維持運用を行なっていく時、ある程度以上の設備で必要になる電気主任技術者の不足の事を言われている場合が多いのですが、具体的には最も基本的なレベルである第三種電気主任技術者試験の合格者の2000年以降の推移は図1の様になっています。

図1 第三種電気主任技術者試験 合格者数推移

この図の様に合格者は減少傾向にあります。これらは若年者の絶対数の減少/工学系志望者の減少/電気系の卒業者が採用数も多い電気自動車や燃料電池など新たな分野を志望する傾向が強い/製造業の海外シフトなどが原因として考えらますが、「電気の時代」と言われだしたここ数年は新規分野を志望する者も技術的なレベルの証のために受験する例が多いとの事なので(受験者数は増加しています)、製造業での電力管理を希望しての合格者はかなり減少していると思われます。

また、2007年問題という事で団塊の世代が60歳になり定年でベテラン技術者が減るという事が言われましたが、実際には定年延長などで少し遅れて、彼らが65歳となる今年以降、高度成長期に多くの電力管理や電気設備の計画から維持運用までの実務を経験したベテランが大量に去っていくという事が現実の問題となります。

ギャップの解消のために

すなわち、図2の様に電力管理の担当部門でやるべき業務量は高度化し、増大していくのに、それをこなしていく体制を整えるのが難しくなるという事で、このギャップをいかに埋めていくかが今後の大きな課題になっていくという認識を各社でお持ちになっていると思います。

図2 経験年数による業務量と対応力(概念図)

当社も、震災前から地球温暖化防止のための省エネ推進再強化の視点で、エネルギー管理支援システム(EMAS)の開発を行い、ギャップ解消対策のご提案を幾つか行ってきましたが、今後はこのギャップ解消のためのニーズが益々顕著になると考えています。

次号からはギャップ解消の為に「どの様にして電力管理業務の効率化をおこなうか」、「電力使用量に制限がある場合にどの様に最適化をおこなうか」についてEMASを応用した事例でご紹介したいと思います。