新川電機株式会社

島本 治

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使用可能な電力が企業の制約条件になる場合、電力は工場各部門から企業全体までの殆どの活動に関係してくるため、電力量や電力料金の最適化を考える場合に非常に多くの制約条件の基でのコストミニマムまたは利益最大化を検討する事になります。

製造業における電力管理を含む最適化問題

この様な場合に有効になる手法がオペレーションズ・リサーチの代表的な手法である線形計画法(LP)です。LP及びその考え方を発展させた非線形計画法は古くから石油精製企業において製造量、製品性状、半製品の混合比率、在庫能力など数多くの制約条件の基で企業全体としての利益を最大化するための生産計画立案やボイラーを複数缶運転している場合、各ボイラーの負荷量をどの様に割り振れば、全体としてコストミニマムになるかという最適負荷配分計画立案などの場へ適用されて大きな成果を挙げられています。

この手法の利用により、電力使用量に制限がある場合にその制約の範囲内で企業の利益を最も損なわない生産計画の立案や時間毎に異なる電力料金で契約している場合、またはその契約の検討時に時間帯別に多段で実行し、トータルとしての電力料金を最小化する計画を立案する事が可能になります。

これらの問題の解を求めるには、大きなモデルの場合、以前は大型コンピュータを用いなければなりませんでしたが、現在では以前の大型コンピューター以上の能力になったパソコン上でマイクロソフト社のExcelのアドインソフトであるソルバー機能を用いてかなりの規模のモデルにまで適用する事が可能になりました。また、対話形式で各種のケーススタディーを行う場合は大型コンピューターよりパソコンの方が有効だと言えます。

ただし、ソルバーでは図1の様にモデルを定義していく訳ですが、実際の生産計画で製品数が数十、制約式数が数百になる場合には、正確に定義するのは大変な作業になります。このため当社の電力管理支援システム(EMAS)では生産計画モデルと複数機器の運転計画モデルを用意しており、表形式でデータを定義すればマトリックスジェネレータとしてソルバーの式を自動的に生成して実行できます。これにより、ユーザーでは制約式を定義する作業を大幅に軽減できると共にモデルの正確性を図る事が出来ます。図2が生産計画モデルの簡単な実行例で、水色のセルを入力して実行ボタンを押すと利益合計が最大となる様に緑色のセルが算出されます。

図1.ソルバーの定義画面 (制約条件をひとつだけ入れた時点の例)
図2.EMASによる生産計画モデルの簡単な実行例

また、従来の電力デマンド管理システムでは契約電力を越えそうな場合、空調だとかオフサイトの系統を一括停止して、製造部門の停止は極力避けるという対応が多かったのですが、先般の計画停電時には多くの企業でそれだけでは不足なため製造量を落として対応されました。ただし、その対応は人手で行なわれたため製造部門のご担当が走り回られている様子がテレビでも報道されていました。

そのため、今後電力不足への対応が必要な場合に使用可能な電力量の範囲内で最も利益を損なわない工場全体の生産計画の立案システムとその計画に則り各製造部門の製造量を自動的に変化させるランピング制御システムが必要になると思われますが、当社ではこの従来のデマンド管理システムより大幅に機能アップさせたアドバンスト・デマンド管理システムをEMASとSCADAの組合せで実現します(図3)。

ただし、その様なシステムを稼働させる前提として社内各部門、各工程の電力使用特性の精度の良い定式化が必須であり、この様なフェーズにおいても当社ではSCADAで必要なデータを収集しEMASの統計解析モジュールにより定式化を行うシステムのご提案を致します。

図3.アドバンスト・デマンド管理概念図