2019/04/02 業界コラム 小畑 きいち 地域(地方)創生に関する諸視点 つづき( 3 ) 社会リサーチ・サイエンスト、日本専門家活動協会理事 青山学院大学社会情報学部元客員教授 小畑 きいち 学歴:青山学院大学で経営学を学ぶ、東京電機大学大学院で都市工...もっと見る 学歴:青山学院大学で経営学を学ぶ、東京電機大学大学院で都市工学を学ぶ、 東京大学大学院で技術管理・MOT を学ぶ 職歴:米国系メーカーで、ソフト製品開発、コンサルタント、マーケティング、国際協働チームマネジメント、 カストマー・サポート統括、産学連携マネジメントを歴任 教育歴:工学院大学、浦和大学、東京大学先端研、早稲田大学(早稲田総研)、青山学院大学、東京電機大学などで非常勤、常勤、特任、客員など講師、研究員、教授などで従事 担当分野:システム工学、E-ビジネス、プロジェクトマネジメント、技術経営、社会情報、ユーザ・リサーチ、AI、空間計画(街づくり)、都市交通、都市社会、起業論など 前回は、西欧における大都市と中都市における再活性化事例について述べた。かつて工業都市として繁栄を極めた都市が製造業などの海外への生産移転で空洞化が進み、コスト競争力低下による工場閉鎖などにより地域産業が衰退し、人口減に見舞われた工業都市の衰退した例が先進国で多くみられる。 先進国ではコスト重視の製造分野から、より高付加価値産業への転換を目指すようになり、コスト中心から、より先端的かつ複合的でクリエティブな業務分野への産業移行を進めるようになった。 事例にあるように文化複合を含めた分野と街への人々の流入・交流促進を目的としたビジネス・ツーリズムを促進する都市再生方策が注目されようになった。さらに街の魅力を強化し、人々が住みたいと思う街、「働く」意欲をかき立てるような都市環境、職住接近による良好な地域整備による市街地創生を目指す傾向がうかがえる。人の交流による複合型産業創生と起業など社会的な好循環とするために地域が人材のハブとなる人集めとしてのツーリズム手法と快適な都市整備によってさらに「働く意欲」、「楽しみ・気晴らし」、「過ごし易い生活環境」などを叶える市街地整備と地域環境プロデュースにより地域環境の向上により人々が流入する創造文化的な都市とすることが持続可能な地域・都市であろう。 先端情報技術の導入による産業構造変化に対応したビジネス環境へ転換によって需要創出サービス型産業と雇用創出を可能とする計画が活性化ケースとする事例が増加している。 人が行き交い、人を呼び込み、就業ができ、快適な街にするには、 ・創造と継承できる街の魅力づくり ・地域支える産業育成クラスター化と地域のブランド化 ・協働活動・共生を活かせる地域組織化 ・快適な地域社会環境と多くの人を集める文化 ・集客施設整備 ・環境保全と災害に強い街づくり ・複合的で持続可能な創造の地域づくり 地域・街づくりは、数年では達成困難で長期的な視野が必須である。 しかし、日本では、多くの地域は、政府の指示待ち、平均的な対応に終始、個性のない地域活性化に奔走している。故堺屋太一は、著書「平成 30 年」で指摘するように、「何もしなかった日本」に記すように、改革を先送りする日本型統治組織への警告している。地域活性化においても、現状を変えずにいる自治体がまだ多い。 ここで、地方の活性化と中小企業などによる地方(地域)活性化創生事例を外国に見てみる。 前回、英国、ドイツ、フランスの事例を説明したが、今回は、政府に対して圧倒的に自立性が強い自治体が多い、EU4 位の国イタリアについて見てみる(一部筆者が、訪問時の主観が含まれるのでお許しください)。 イタリアは南北格差が大きい、これは歴史的経緯に基ずくものと考えられる。北部はミラノ、ベネツィア、ジェノバなど都市国家として、中部は教皇領として、南部は両シシリーなど王国として、それぞれ歩み。日本の明治維新前の 1861 年にイタリア王国として統一された経緯があり、日本のように強引に中央集権された統治体制と異なる。北部はハプスブルグ帝国、フランスなどの侵攻による文化産業的な影響も色濃く地方の独自性が残されている。 事例では主にイタリア中北部について見ることにする。イタリア商品で思い浮かべると、「Gucci」(トスカーナ州フィレンツェ)、「Tods」(マルケ州)、「Lamborghini」(エミリア・ロマーニャ州ボローニュヤ)、「BACAROFERRO」(ヴェネト州ヴィチェンツァ)、「Rossimoda」(ヴェネト州ストラ)、「Luxottica」(ヴェネト州ベッルーノ)、「GEOX」(ヴェネト州モンテベッルーナ)、「Ferrari」(エミリア・ロマーニャ州モデナ)、「Kappa」(ピエモンテ州トリノ)など世界的商品ブランドがある。都市発のブランドもあるが、多い地方発ブランドに注目したい。 イタリアの地方発ブランドの多くは、トスカーナ州以北のロンバルディア周辺、ベネツィア北周辺に存在する。 その主因と考えられるのは、コムーネと呼ばれる自治組織と都市国家として歴史的に旧領主・住民によ自立的に組織された構成された自治意識、政権・行政に依存しない組合運営体制などによる自立運営体制によるものと思われる。 その特徴としては、 コムーネ・都市国家以来の伝統を活かす産業から国際市場へ地場産業を飛躍させ自立した地方創生に成功して例がある。その要因とは、 ・地域における自立協働体制の強化 ・中小企業の高い企業性(協働組合による後継者育成、デザイナー・技術者育成、専門職訓練 施設設置、国外にも開かれた専門人材の招き入れ登用なども含まれる) ・エンドユーザー向けの事業に重心(下請け受注は回避、垂直型契約の回避) ・強力なリーダー・コーディネターの存在育成 ・個人中小など地場産業による協働企業組合・クラスター形成 (政府による保護支援政策が期待できない、協同組合またが自治体による協働創生) ・国際市場に向けたデザイン・ブランド指向に重視(積極的に国際市場に進出) ・商品価格支配力の確保維持(低コスト競争を回避) ・多種少量上質指向の商品販売 ・最終工程は国内を基本としブランド力保持 以上のように、主として地場産業を持続発展するために国内に留まらず、常に情報視点を国際的に広げ、地方においても国際的であり続け、都市・地域での各種国際見本市の開催により人々を呼び込み街の賑わいを演出し、ユニークな地方・地域の特質を生かしたコンセプト概念を設定している。このような地域・都市・街とビジネス・ツーリズムを巧みに結びつけている事例はわが国における良い参考となりえる。 国内においても、新潟県燕三条(食器金属加工)、岐阜県関(刃物加工)、広島県熊野(高級筆製作)、福井県鯖江(眼鏡フレーム)、愛媛県今治(高級タオル)など地場産業を地域の活性化のためにツーリズムとの共生を促進しているが、まだまだ国際化の可能性を充分活かしていない。 地方中小都市・地域は、収縮化する国内市場から、外に向けて視点変更する動きにイタリアの事例が地域持続的発展の参考になるではと考える次第である。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 社会リサーチ・サイエンスト、日本専門家活動協会理事 青山学院大学社会情報学部元客員教授 小畑 きいちさんのその他の記事 2024/03/12 業界コラム 都市を巡る『北スペインにおけるスマートシティ』 2023/05/09 業界コラム 海外都市を巡り『キーウ (キエフ)』歴史に翻弄されてきた千古の歴史都市 2022/09/13 業界コラム 都市を巡る『中国・重慶 Chongqing』退潮工業都市から先端スマートシティへ 2022/02/08 業界コラム 都市を巡る『米国・デンバー Denver, Colorado』公共交通基盤整備による地区再開発と地域再生・ビジネス振興の仕組みづくり 2021/04/12 業界コラム 都市と地域創生 / 再生都市巡り『イタリア・ボローニャ(Bologna)』 2019/04/02 業界コラム 地域(地方)創生に関する諸視点 つづき( 3 ) 2019/03/05 業界コラム 地域(地方)創生に関する諸視点 ( 2 ) 2019/02/05 業界コラム 地域(地方)創生に関する諸視点 ( 1 ) 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月