2016/01/13 業界コラム 万代 栄一郎 弁護士は教えてくれない その1 株式会社 ODR Room Network 代表取締役 万代 栄一郎 1981年 立教大学経済学部 経営学科卒業 事...もっと見る 1981年 立教大学経済学部 経営学科卒業 事務計算センター(現日本システムウエア株式会社)入社 イスラエル製品マーケティング担当 副本部長 2004年 株式会社リンクマネージ取締役 経営管理担当 2008年 日本システムウエア株式会社(NSW) 非常勤顧問 2008年 株式会社 ODR Room Network 代表取締役 システムエンジニアとして各種システム設計・開発・運用に従事、 早稲田大学 情報化プロジェクト、杏林大学 総合情報センター技術顧問、 独立後 ODR 専門家として外資系日本法人の IT コンサルティング、弁護士事務所等の IT サポート、総務省のODRプロジェクト、経済産業省 ERIA プロジェクト、経済産業省の国境を越える電子商取引の環境整備プロジェクト、消費者庁越境消費者センター事務局 群馬県出身 / 横浜市在住 当社の社名にある ODR は、殆どの方が聞き慣れないのではないかと推察します。ODA と間違える方も多い。 ODR は、Online Dispute Resolution の頭文字で、オンライン技術を活用して紛争を解決する考え方です。イメージしやすいのは、TV 会議を使った遠隔地間の裁判や証言ですが、国内でも時差のある米国や、統合された欧州など複数の国にまたがる取引が多い地域では既に多くの活用事例があります。残念ながら日本では、まだ認知されるに至っていませんが、今後越境の取引が増えてくるに従って活用事例も増えてくるのではと期待されています。部分的には、海外から電子商取引で物品を購入した場合のトラブル解決に、国民生活センターが提供する「越境消費者センター」が ODR 的なサービスを提供しており、弊社も事務局を務めています。 そもそも私が現在の会社を立ち上げるきっかけになったのは、イスラエル企業との仲裁訴訟でした。 前職の中堅上場 IT 企業で新規事業などの開発を担当していた私はあるイスラエル製品の主担当となり、製品開発や市場開拓を進めていましたが、その製品の開発が頓挫し、最終的には開発元企業が倒産、日本国内で進めていたプロジェクトもストップし、更には、倒産の原因はこちらにあるという仲裁訴訟が起こされ、こちらも反訴、仲裁地イスラエルでの 8 年に渡る仲裁に関わりました。最後の重要な証人喚問に訪れたベングリオン空港に迎えにきた現地の弁護士から告げられたのは、 「相手の作戦にあなたの暗殺がある(可能性がある。だから充分に用心しろ)」 今でこそ海外での勤務はテロや誘拐などの危険を伴う時代になっていることが実感されていますが、当時は、(冗談だろう)と思いました。 結果的には、ドラマのような事実が次々と明るみに出て、劇的な幕切れを迎えました。 この仲裁をきっかけに、オンライン技術を活用して紛争解決に貢献したいと考え ODR(Online Dispute Resolution) Room Network を設立しました。テロの危険のある国で海外企業との紛争に長年関わり、ODR の必要性と有用性を確信したからです。グローバル化の進展は、距離を隔てた国際間の商事紛争も増加させていくでしょう。 どこにいても事故やテロの危険のある現代においては、紛争解決のための移動時間、移動コストだけでなく、企業にとって重要な人物へのリスクを低減することは重要課題となっています。ブロードバンドが発達した現在では、オンラインを活用した紛争解決手段がもっと活かされるべきです。 前置きが長くなりました。さて、裁判や仲裁の当事者になる方はそれほど多くはないと思いますが、万が一そのような場合の「心構え」として、国際仲裁の証人となった私の体験をお話させていただきます。 弁護士は教えてくれない その 11. 偽証できるのか訴訟というとドラマでしか見た事ないという場合が殆どでしょう。そこでよく出てくるのは偽証のシーンです。 TV ドラマなどの法廷での弁護士による尋問のシーン。ドラマでは被告側が口裏を合わせて偽証するのですが、「偽証」をするのは経験上、ものすごく難しいと思っています。 いや実は・・・実際に証人となるまでは、できると思っていたのですが。。。。現実にも、国会議員が偽証罪に問われることがありますが、「なぜ、偽証がばれるのかな」とも思っていました。「自分ならうまくウソ突き通せるのに」と。 ところが。 法廷では、最初に宣誓をします。イスラエルでは「神の名において」、日本では「良心に基づいてウソをつかない」ことを誓います。形式的なものだと思っていましたが、これが意外と心に重くのしかかるのです。 ウソをついたら罰せられることにも同意します。(海外の場合、その国の法律で罰せられるし、そこで禁固刑にでもなったらどうなるかわからないので怖さが増します。) いずれにしても、改めて「宣誓」することで普通の精神ならウソがつきにくくなるのです。「宣誓」は予想以上に重いのです。 さらに、弁護士はその道のプロですから、よく人間心理も読んでいます。事実関係を 洗い出す過程で、証人たちの心の葛藤を推測し、質問の順番をよく考えているのですね。聞かれた順番に答えていくと矛盾が出てくるようになっているような気さえします。例えば、 弁護士 「あなたは全力を尽くしましたか?」 証人 (もちろん全力を尽くしました) 弁護士 「それを示す証拠はありますか?」 証人 (毎日 10 時過ぎまで勤務しました。タイムカードがあります) 弁護士 「なるほど。ここに一通のメールのコピーがあります。証人はこれを見てください。これは誰に誰が送ったものですか」 証人 (これは私が友人に送ったものです) 弁護士 「時刻を見てください。これは勤務時間中ではありませんか」 「あなたは全力を尽くしたといいましたが、勤務中に私用メールを書いている。 全力を尽くしたというのはウソですね!」 「あなたは私用メールを時々送りましたね!」 もちろん私用メールの一通や二通は現実的にはあるでしょう。ここでの本質は、「業務に差し障ったかどうか」なのですが、弁護士に、 「あなたは一度も私用メールを送ったことがないのですか?」 「私用メールは業務ですか?」 「全力とはどういうことですか? 全部の力ではないのですか?」 「私用メールを書いた時間は業務でしたか?」。。。 と畳み掛けられると、 段々おかしくなってきます。 一度でもこんな場面があると、証言が極端に慎重になってしまいます。 自信のない証言をすると弁護士に見抜かれる。 そこをつかれて核心に迫る質問でドキっとする。 経験からいうならば、偽証することは実際には難しいし、すぐに暴かれるだろうと思うのです。 2. 質問には罠がある 証人を召喚して質問するのは、それぞれの主張を裏付け、自分を有利に導いていくために証言をしてもらうためですが、相手から見ると、有利な証言をさせないようにすることが必要で、そこにせめぎ合いが出てきます。 証人の証言は、1)事実を正確に証言する、2)ウソや不確かなことを言わない、3)事実に(いい意味で)固執する、ことに尽きるのですが、難しい面があるのです。 それは、複合尋問や誘導尋問といわれているものです。質問の順序や聞き方によって、事実をいっているにもかかわらず相手に有利な証言になってしまうことがあるのです。たとえば・・・ 私が証人だった時のことです。 そのケースでは、お互いがお互いを訴えていました。相手は、 「自分の経営が破綻したのは、お前が支払いを遅らせたからだ。契約違反だ」という主張。こちらは 「破綻は経営の失敗だ。ちゃんとした製品がないから支払おうにも購入できないだろう。契約違反はそっちだ。」 という主張。 ここで彼らが私にした尋問は以下でした。(※()内が応えです) 「あなたは “彼らが” 契約違反をしたといっていますね?」 (はい) 「その理由は A と B だといっていますね?」 (はい) 「ほかにはありませんか?」 (ほかにもあります) (ここで私の注意力は、他の理由を探すことに逸れてしまった) 「ほかはなんですか?」 (C と D と E です。) 「ほうほう、C と D と E。詳しく聞かせてください・・・」 (詳しく話す) 「ところで、もう一度、確認のためにききます」 「あなたが契約をやぶったのは、彼らが、A, B, C, D, Eなどの契約違反をしたと思ったからですね?」 ( はい。) 続く この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 ODR Room Network 代表取締役 万代 栄一郎さんのその他の記事 2020/09/10 業界コラム ITエンジニアが法律に影響している 2020/08/18 業界コラム 「弁護士費用立て替え」という訴訟投資ファンド 2020/08/04 業界コラム 司法IT化は日本でも進むか、その後のステージ 2019/08/06 業界コラム 司法 IT 化は日本でも進むか 2019/07/02 業界コラム オフィスハック -オフィスで役立つ様々な考え方- 2019/06/04 業界コラム テクノロジーは答えか? 2018/08/07 業界コラム 働き方改革 No.3 『散歩ミーティング実践』 2018/07/03 業界コラム 働き方改革 No.2 『議事録 2.0 またはそれ以上』 2018/06/05 業界コラム 働き方改革 No.1 『3 つの IT ツール』 2017/06/06 業界コラム ” 秘密情報 ” の秘密 2017/05/10 業界コラム あ! それは証拠隠滅!!? 2017/04/04 業界コラム 思わぬ漏洩 – 街中の PC は覗かれている – 2016/04/05 業界コラム ナイーブでは困るのです 2016/03/08 業界コラム 謝罪の文化と文法 2016/02/09 業界コラム 弁護士は教えてくれない その 2 2016/01/13 業界コラム 弁護士は教えてくれない その1 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月