2020/08/04 業界コラム 万代 栄一郎 司法IT化は日本でも進むか、その後のステージ 株式会社 ODR Room Network 代表取締役 万代 栄一郎 1981年 立教大学経済学部 経営学科卒業 事...もっと見る 1981年 立教大学経済学部 経営学科卒業 事務計算センター(現日本システムウエア株式会社)入社 イスラエル製品マーケティング担当 副本部長 2004年 株式会社リンクマネージ取締役 経営管理担当 2008年 日本システムウエア株式会社(NSW) 非常勤顧問 2008年 株式会社 ODR Room Network 代表取締役 システムエンジニアとして各種システム設計・開発・運用に従事、 早稲田大学 情報化プロジェクト、杏林大学 総合情報センター技術顧問、 独立後 ODR 専門家として外資系日本法人の IT コンサルティング、弁護士事務所等の IT サポート、総務省のODRプロジェクト、経済産業省 ERIA プロジェクト、経済産業省の国境を越える電子商取引の環境整備プロジェクト、消費者庁越境消費者センター事務局 群馬県出身 / 横浜市在住 昨年の本寄稿では、「司法IT化 は日本でも進むか。」と題して、 「日本で今一番IT化に遠いのは、司法分野、しかし、満を持して、そのIT化が進み始めた」ことをご紹介した。1年後の今、進み度合いはどうなっているのか。 民間ベースの取り組みと並行して、政府の未来投資戦略にも取り上げられ、関係省庁からのヒアリング、意見交換なども公式・非公式に行われた。 日本経済再生本部 裁判手続き等のIT化検討会(いわゆる司法のIT化)を推進 消費者庁 第4期消費者基本計画のあり方で、ODR※の普及を提言 日本ADR協会 シンポジウム「ADRはどう変わるか〜IT化の可能性と課題〜」 閣議決定 「成長戦略フォローアップ」 ODR活性化検討会 ODR基本方針をまとめ ※ODR(Online Dispute Resolution):オンライン技術を活用した紛争解決の仕組み これまでの大学の授業や講演では、主に、歴史や先行事例、あるいは日本での取り組み、そして法制化に関する動き、更には“オモシロ事例”などを中心に発表してきたが、やっとODRが進み始めた日本で、この進みを加速するために何が必要か、 1. ODRが今はどんなステージなのか 2. ODR導入の意義 3. テクニカル面 4. ファイナンス面 について整理しておく。 1. ODRが今はどんなステージなのか先行諸国では、研究、実験期から実用化の時期にある。 そうした各国での導入実用化はどのような形式をとっているかというと、 (1) プラットフォーム専用型eBayなど、マーケットプレイス専用のODRとして導入されているもの。 (2) 特定分野特化型離婚調停など、特定の紛争類型に特化したもの。 (3) 部分的支援ツールSmartSettleなど、金額交渉の部分だけに絞ったもの。 (4) 汎用的AAAなどが提供するあらゆる紛争類型を受け付けることを想定したもの。 (5) 調停人データベースMediateme.Comなど、調停人のデータベースとして提供され、紛争解決を受け付けてくれるもの。 (6) その他 2. ODR導入の意義元々は、コスト削減、時間短縮などを図り、司法へのアクセスを高めることが意義として捉えられている。 (1) コスト、時間の削減、リスクの低減申し立てなど手続きの時間、期日のための移動時間、そこにかかる関連費用などを低減し、また、重要人物の移動リスクなどを軽減 (2) 次世代コミュニケーションによる司法へのアクセスメッセージングツールなどを通じたほうが雄弁になる世代への新しい司法アクセスの提供 (3) LPR単に既存プロセスをIT化するのではなく、ODRにより司法アクセスへのプロセス自体をも劇的に変えるリノベーション的アプローチのはじまり 3. テクニカル面ODRの場合、現時点では特異な技術を使わないと実現できないわけではないが、アプローチには大きく2通りあると認識している。 (1) 既存プロセスのIT化従来からあるIT化と同様に、既存の手続きをIT化していくアプローチ。申し立てのIT化、事件管理のIT化、期日のIT化、執行管理のIT化など。部分的にも着手しやすい。 (2) ODR的に司法プロセスのリノーベーション リーガルプロセス リ・エンジニアリングたとえば、eBayでは、紛争解決をしようとすると「ヒアリングをされるように書き込んだりする」のではなく、最初から、売り手・買い手それぞれの典型的な紛争の問題点を書く種類から選択するところから始まる。これらはプロセスやヒアリングの手順を変えてしまっているが、それにより紛争解決を効率化していく。 (3) 先端技術の適用あえて新しい技術的なアプローチを入れるならば、 ① AI(アルゴリズム)による過去事例からの紛争類型抽出や自動表示、解決案の提示などを行うようにしていくことや、 ② ブロックチェーン応用により、国際間紛争のデータを中央集権的に持ち合わないようにしていくこと などが検討可能であろう。 4. ファイナンス面一番難しい部分である。すなわち、 (1) ODRの意義はコスト抑制であるが、そうなると単独でビジネス成立させるには、多くの紛争を扱うモデルが一つの案だが、紛争はないほうがよいという面もあり、紛争を増やすというマーケティング策が取りにくい。 (2) では、企業体などが資金提供するのはどうか?消費者紛争などでは、企業側が資金提供するODRの中立性が疑われる可能性もある。 (3) 消費者取引では、トラストマークの機関と提携し、ODRの提供機関は費用を抑えた運営を行う場合もある。 公的な機関や認証機関が導入に取り組み、ベンチャーが現れ、資金が動き、利用者が抵抗なくアクセスするようになるまでに、なにをすればいいか。産官学一体とまではいわずとも歩調を合わせて取り組みが進めるといいが… この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 ODR Room Network 代表取締役 万代 栄一郎さんのその他の記事 2020/09/10 業界コラム ITエンジニアが法律に影響している 2020/08/18 業界コラム 「弁護士費用立て替え」という訴訟投資ファンド 2020/08/04 業界コラム 司法IT化は日本でも進むか、その後のステージ 2019/08/06 業界コラム 司法 IT 化は日本でも進むか 2019/07/02 業界コラム オフィスハック -オフィスで役立つ様々な考え方- 2019/06/04 業界コラム テクノロジーは答えか? 2018/08/07 業界コラム 働き方改革 No.3 『散歩ミーティング実践』 2018/07/03 業界コラム 働き方改革 No.2 『議事録 2.0 またはそれ以上』 2018/06/05 業界コラム 働き方改革 No.1 『3 つの IT ツール』 2017/06/06 業界コラム ” 秘密情報 ” の秘密 2017/05/10 業界コラム あ! それは証拠隠滅!!? 2017/04/04 業界コラム 思わぬ漏洩 – 街中の PC は覗かれている – 2016/04/05 業界コラム ナイーブでは困るのです 2016/03/08 業界コラム 謝罪の文化と文法 2016/02/09 業界コラム 弁護士は教えてくれない その 2 2016/01/13 業界コラム 弁護士は教えてくれない その1 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月