株式会社 ODR Room Network 代表取締役

万代 栄一郎

1981年 立教大学経済学部 経営学科卒業
...もっと見る
1981年 立教大学経済学部 経営学科卒業
事務計算センター(現日本システムウエア株式会社)入社
イスラエル製品マーケティング担当 副本部長

2004年 株式会社リンクマネージ取締役 経営管理担当

2008年 日本システムウエア株式会社(NSW) 非常勤顧問

2008年 株式会社 ODR Room Network 代表取締役

システムエンジニアとして各種システム設計・開発・運用に従事、
早稲田大学 情報化プロジェクト、杏林大学 総合情報センター技術顧問、
独立後 ODR 専門家として外資系日本法人の IT コンサルティング、弁護士事務所等の IT サポート、総務省のODRプロジェクト、経済産業省 ERIA プロジェクト、経済産業省の国境を越える電子商取引の環境整備プロジェクト、消費者庁越境消費者センター事務局

群馬県出身 / 横浜市在住

働き方改革が話題となっている。裁量労働制については、議論が錯綜し、まだまだどうなるのか予断を許さない。制度的な仕組みは、ブログで意見を述べても “遠吠え” になってしまうので、もっと身近に実践できる「働き方改革」について、検討してみよう。

私が自分で会社を始めたのは、異国での訴訟での証言を遠隔地からできる方法として ODR(Online Dispute Resolution)に着目したからだ。IT の発達とブロードバンドネットワークにより、映像も音声も安定的に使用できるようになった昨今、これを使って働き方の改善にも役立てることができそうだ。

そこで、私が実践している遠隔地間業務についての、試みをご紹介したいと思う。いずれも実験途上ではあるものの、効果も出しつつある。



 まずは、3 つの IT ツールについてご紹介していこう。

3 つの IT ツール実践:自分でできる働き方改革

自殺者が出てブラック企業がニュースに取り上げられ、原因となった労働環境やそうせざるを得ない企業・雇用者の実情も注目され明らかになりつつある。そして政府は首相官邸主導で「働き方改革」を推進している。

 

働き方改革実現会議(出典:首相官邸ホームページ政策会議)

 

こうした政府主導会議をきっかけにして目指すのは、

  • 個々の事情に応じた「多様で柔軟な働き方」を選択可能とする社会
  • 人々の「ワーク・ライフ・バランス」の実現
  • 「生産性の向上」を目指し
  • 「企業文化や風土」を変えていく

である。

 

しかし当然こんなに簡潔にはいかない。相互に様々に関わり合い、時には相反することもある。

  • 規格化された働き方は、逆にいえば安定したサービスを供給する原動力だ。さて、「多様で柔軟な働き方」で安定したサービスや製品を供給しつづけるにはどうすべきか。
  • ワークとライフのバランス =「ワーク・ライフ・バランス」では、“ワーク” を減らして十分な収入を得続けることができるようにならなければいけない。
  • そして、減ったワークで企業が利益を維持しつづけるには生産性向上が不可欠だ。
  • では、「生産性向上」させるための投資や開発の原資、人的リソースはどこからくるのか。
  • 「風土、文化」は、先に変えられるのか、結果として変わるのか?

我々各人は誰かを待つのではなく、今の自分の環境をよくしていくことができないだろうか。例えば、身近な IT ツールを工夫して活用していけないだろうか。

 

キーワードの一つは、「移動を減らす」ことだ。

1.TV会議

企業で働く場合、単独よりチームの場合が多い。そのほうが効果的に手分けしていけるからだ。手分けした作業を効果的に行うには、バラバラに勝手にやるのではなく、手順や役割を分担することになる。同期するために打ち合わせが必要となりコミュニケーションや意思決定のため会議を開くことになる。しかし、柔軟にいろいろな場所で働くことになると会議のために集まるというのは移動時間を使うことになり本末転倒となる。

 

例えば弊社では、パートナーとの定例会議がある。これは顧客への週報を作成するための情報共有だ。短く 30 分ほどで終わるが、「必ず集まる」のでは移動時間がもったいない。

また地方に本社のある別会社の定例会議は現地に 2 名、こちらに 4 名。移動には新幹線が必要で複数人が移動するには時間も費用もかさむ。

そこで TV 会議を活用している。すでに無料で使用できる環境もありすぐできそうだが実用するといくつか工夫が必要となる。

  • まずはワイドレンズ。多くの参加者が映らないといけない。

広角 120 度で、カメラ近くの範囲まで映る。かなり広いので数人が並んでも問題なさそうだ。そしてセットアップについては、最近の周辺機器は自動インストールが充実している。この製品も iMac の USB に接続して何も起きない = 認識のメッセージも、ドライバーのインストールも、静かな状態なので、心配になって接続しなおしたりした。

それでも変化がないので、Skype を起動してみるともうカメラを認識しているのだ。つまり何も設定は必要なかった。スバラシイ。

2.資料を同時に閲覧するためのマルチモニタ化

相手拠点の映像をフルサイズで出しておかないと臨場感がないのだが、そうなると資料の画面を出すスペースがなくなってしまう。資料を見ながら会話すると相手の様子が見えなくなりもどかしい。

 

そこで。

 

余っていたモニターを横に設置してマルチスクリーン化し、資料映像はそちらに表示できるように設置。これで、相手の顔をみつつ、資料も大写しできるので、実用レベルが高まった。

3.共通の議事録ボード

リアルな会議では、決定事項や議論事項を書き出してみんなでみるためのホワイトボードなどがある。そうした専用システムもあるが投資が必要だ。そこで無料で使えるドキュメントツール。これは複数拠点が同じ議事録のファイルを見ながら、同時に各拠点からも書込みが可能だ。これで情報共有には、かなりの効果が期待できる。

以上 3 つの IT ツールをご紹介したが、それぞれ、簡単ではない面はある。投資や工夫は必要だ。しかしそれにあまりある働き方の改善は見込める。

 

「考えている」というのは、やらないと決めていることだと最近気がついた。

やらない理由ではなく、やるためにどうするかを考え、決断し、実践することは、昔より遥かに簡単になっている。

 

注意するのは、いずれも、無料であること。

すなわち、

  1. 突然サービスから撤退される可能性がある
  2. 無料の代償としてなんらかの情報提供が条件となっていないか
  3. 情報データの所有権や利用する権利は大丈夫か

事前に問題がないかを確認しておくべきだ。