株式会社 ODR Room Network 代表取締役

万代 栄一郎

1981年 立教大学経済学部 経営学科卒業
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1981年 立教大学経済学部 経営学科卒業
事務計算センター(現日本システムウエア株式会社)入社
イスラエル製品マーケティング担当 副本部長

2004年 株式会社リンクマネージ取締役 経営管理担当

2008年 日本システムウエア株式会社(NSW) 非常勤顧問

2008年 株式会社 ODR Room Network 代表取締役

システムエンジニアとして各種システム設計・開発・運用に従事、
早稲田大学 情報化プロジェクト、杏林大学 総合情報センター技術顧問、
独立後 ODR 専門家として外資系日本法人の IT コンサルティング、弁護士事務所等の IT サポート、総務省のODRプロジェクト、経済産業省 ERIA プロジェクト、経済産業省の国境を越える電子商取引の環境整備プロジェクト、消費者庁越境消費者センター事務局

群馬県出身 / 横浜市在住

新しい技術は日々現れる。そして、大抵は制度の方が追いついていなくて、できるのに「やってはいけない」とされている場合も多い。今回は、最近の新技術ではあるが、制度がおいついていない話題を 2 つご紹介する。まずは、

自動運転どの命を救うべきか問題

もう随分前からこの問題は議論されている。原作・鉄腕アトムの時代から。

人命に関わる究極の選択時、誰を救うようにプログラミングすべきか。

 

NewsWeek 日本版 2018 年 12 月 10 日(月)

自動運転車は「どの命を救うべきか」世界規模の思考実験によると…

  • 子供が車道に飛び出してきた。避ける道は 1 つ。するとその先に 5 人の老人がいる。

同じ命題で、

  • トロッコの先に 5 人の作業員。分岐で切り替える先には 1 人の作業員。
  • ノーベル賞候補者の 1 人か、そうでない 5 人か
  • 男性 5 人か女性 1 人か、女性 5 人か男性 1 人か
  • 高額納税者か、生活保護受給者か
  • 与党議員 1 人か、野党党員 5 人か、野党 1 人か与党 5 人か
  • キリスト教徒かイスラム教徒かユダヤ教徒か仏教徒か神徒か、無宗教者か

人数か、学歴か、性別か、収入か、政治信条か、宗教か、、、、いい人か悪い人か。。。

 

答えている人の素性や立ち位置によっても異なりそうだ。

 

人口が少ない国なら人数をとるかもしれない。

知識の豊富な老人を守る国柄もある。

若い可能性を選ぶべきか。

学歴のある研究者が生きるべきだ?

女性は子供を産めるから。。。

男性がいないと守れない?

高収入者がいなくなると困るかも?

与党で安定?  野党で革命?

マイナー宗教こそ守るべき?

 

「鉄腕アトム」が原作の浦沢直樹氏の漫画 PLUTO(PLUTO – Wikipedia)では、「あらゆる可能性をインプットしようとするとロボットは目覚めず、なんらかの基準を持った “憎悪” をいれることで目覚める」ことになるが、

偏り、こだわり、欠点を持たせないと、上記の命題には答えられないのかもしれない。ただ、車の場合、止まるという機能強化ができそうにも思う。

そうなると、急停車により、乗車している人の命があやうくなるのか。

上に、ジャンプという選択肢はとれないのかな。

しかし、よくよく考えてみれば、これは自動運転だけの命題ではなく、人間が運転していても遭遇する選択だ。人間の運転であれば責任は人間について回るが、自動運転の場合は誰に責任がいくかが問題になるので、選択の理由がより議論されているのだ。

単に技術的な問題ではなく、実は答えが出ない問題は世の中にたくさんある。そうしたことに折り合いをつけていくべきなのだ。そういう時期に世界は、日本は、入ってきている。

請求書の電子化

さて、もう一つは、請求書の電子化。「紙の請求書なんか時代遅れや?、変化できんのは頭が古いからや?」という向きもあるだろうが、実際にやろうとすると出てくる具体的な、時に制度的な問題にぶち当たる。そこから解決に向き合っていこう。

昨年の BLOGOS ブログ。請求書が紙で要求されることにすごく怒っている有名ブロガーがいた。

 

いまだ紙の請求書を郵送させるのは企業。今すぐメール添付に切り替えろ

 

多少は同感するが、実際はどうなのか?  改めて自分でも自社の場合を元に考察してみる。

 

  • 自社送付の請求書
    自社の取り引き先で請求書を紙で送っているのは、91%。メール添付は 9%。圧倒的に紙が多いが、電子化もそれなり増えつつはある。
  • 自社受け取りの請求書
    自社の受け取る請求書のうち紙は 35%(11 月時点)、電子化されているのは 65%。電子化が主流になってきているのか?  しかし、これらには、電話会社、携帯会社なども含まれている。またクラウドサービスの会社などが含まれている。
  • 電子化で受け取った場合
    月次集計時に印刷している。これは在宅で依頼している会計担当者に送付するためだ。以前は電子データを送っていたが作業効率や正確性の点から結局印刷して作業しているとのことなので、時間と印刷コストを負担されないようにそのように変更。
    また、将来会計監査が入った際に備えて帳票は印刷してファイルしている。
  • デジタル監査のためには
    監査がデジタルだと、何をどのように渡すのか?  なんらかの専用システムやデータ標準が必要になるだろうし、渡す側がそれに合わせてデータを揃える必要があるだろう。社内のデータ統一や窓口の一本化なども実務的には必要となる。そうでないと、結局、税務監査の際に誰かが全部印刷することになる。もしそうなら、単に紙出力の工程を先送りにしただけのことだ。

情報センサー 2018 年新年号

デジタル監査の実現にむけた IT 施策 -監査インフラとしての IT 技術の展開-

 

  • システム対応できているかどうか
    そうなると、請求書を受領する側がデジタル請求、会計、監査までに対応できているかどうかがポイントとなる。一方的に請求書をデジタル化して送りつけても誰かがどこかのタイミングで印刷し紙資料にしなくてはならない。

 

  • 税理士からの見解
1) 国税関係書類に保存については原則、紙ベースとなる。
2) 書類を電子化して保存する場合は開始 3 ヶ月前までに税務署に承認申請を行う必要があるが、電子保存についてはかなり事細かい要件があり、実際にはあまり進んでいないのが現状。
3) 電子帳簿保存法では、受領書類、発行書類ともに、監査に備えて、a)記録の修正履歴などの確保、b)帳簿間での相互関連性、c)検索性の確保が求められ、守られていない場合青色申告が取り消される可能性もあり。
4) 結局、適用には要件を具備した電子計算処理システム等が必要となる。
5) ちなみに、スキャナ保存の要件のひとつで入力期間の制限があるが、これまで受領者以外の者が電子化を行う必要があったが、H28 年 9 月の規制緩和において、領収書受領者本人が電子化する場合の特例方式が追加された。 上記受領者本人が電子化する場合は受領後、自筆でフルネームを署名して、3 日以内に電子化を行う必要があり、期限を過ぎてしまった領収書等については、紙ベースでの保管が必要となる。まめに保存しないとダメだということ。これらもコスト要因。
6) また従業員がいない場合、相互けん制の要件を満たさないため、税理士の定期的な検査(最低年 1 回)が必要となり検査終了後、領収書等の廃棄が可能となる。
7) 税務調査については、調査官がパソコンで自らデータの検索を行って調査することも考えられる。

 

こうして改めて冷静に考えて見ると、請求書の “一方的な” デジタル化は、新たなブラックを生み出してしまいそうだ。