2023/04/11 業界コラム 上島 敬人 身近にある家電 with ノイズのストーリー第7話 ノイズはなにものなのか その2 Electrical & Magnetic EM上島Lab 代表 上島 敬人 【略歴】 総合家電メーカーにて42年間白物家電...もっと見る 【略歴】 総合家電メーカーにて42年間白物家電の設計開発部門にて下記業務に従事。 《商品設計(電気系)》 ハードウェア設計・評価:アナログ設計、SW電源、インバーター等 プリント基板設計:製造性、法規に熟知した実装パターン設計 品質・信頼性評価:EMC、熱、電気系信頼性評価・対策 開発マネジメント:FMEA、DR、法規等QMS管理・対内外折衝、VE推進 《電気系開発技術・システム開発》 CAD/PDMを中心としたシステム開発・運用 CAE:電磁界シミュレーションを活用したEMC検証、対策 【取得資格】 iNARTE EMC Design Engineer 皆様、こんにちは。EM上島Lab 上島です。 第6話では、ノイズを定義するために、波形と波形の持つ周波数成分をスペクトラムという概念で説明しました。スペクトラムの概念はこれからノイズを理解する上で重要となります。 結局、ノイズは意図しない変化により生じた、意図しない周波数成分 (不要輻射) ということになります。しかし、不要輻射の中には、意図した信号波形にもかかわらず、必然として含まれていることを忘れてはいけません。高次高調波が様々な寄生成分に共振することで、目立ってしまう (課題になるくらい強調される) 事態になった周波数成分だけでなく、矩形波のスペクトラムに含まれる高次高調波そのものもノイズとなってしまう場合があるということです。 少し、概念的な話になってしまいましたが、具体的な波形 (現象) でみてみます。 図1 理想と現実理想の波形が方形波だとして、回路の実波形を観測すると図の様に、様相が異なる波形となっている場合、実際の波形のひずんだ部分が理想波形に混入してしまった、不要なノイズということが言えます。スペクトラムでみると、方形波を構成する基本周波数と整数倍の高調波に加え、歪みの周波数成分が現れます。理想方形波を前提にフィルターなどの回路定数やマイコンのフィルタリングアルゴリズムを設計した場合、想定外のノイズはスルーしてしまい、誤動作や伝導雑音増加の原因となり得ます。 電磁誘導とノイズさて、このようなノイズ成分がなぜ理想信号に混入してしまうのかについて考えてみたいと思います。 ノイズ = 歪みとした場合、歪みが発生する原因はいくつか考えられます。一つは自ら発生してしまう場合、もう一つは外乱の侵入です。今回は外乱の侵入を紐解いてみます。外乱そのものの発生も、雷などの外的要因、内部回路素子のスイッチング等による内的要因がありますが、ここでは言及しません。いずこかで生じた外乱が回路に侵入していく様を考えた場合、はっきり見えないので『輻射ノイズ』と都市伝説のように先輩諸氏から教わった方も多いと思います。 確かに、高周波源が接続されたワイヤーは放射アンテナとして作用すると思います。ここはアンテナ理論を紐解けば解の一つとなると思いますが、今回は電磁誘導という現象で考えてみます。外乱 = ノイズ源が接続されたワイヤーがあった場合、ワイヤーにはノイズ源からの高周波電流が流れることになります。 無限大の直線に電流が流れる様を想像してみてください。どこかで見た図が思い起こされますね。そうです、第3話でお話しした下記の図です。電流が流れるとアンペールの法則により磁界が発生します。 図2 電流による磁界の発生いかがでしょうか、電磁誘導により高周波信号 (ノイズ) が伝搬していく入り口がなんとなく想像できてきたでしょうか。 上手な説明とはどういうものかなかなか理解してくれない相手に説明したり、説得したりするのは骨の折れる作業です。 うまく相手に話が伝わらない原因は、大きく以下二つの側面があるのでは無いかと思います。 そもそも自分が良く理解していないので適切な説明になっていない。 理論 (式) ばかりの羅列で、そもそも専門外の相手は理解できない。 私も、商品開発に従事していた頃 1. 2. いずれの場合もあったように思い起こされます。 1. は専門書などで勉強したり、経験値を積み上げることで理解度は増していきますが、 2. の場合はもしかしたら、持って生まれた物 (性格) が支配的かもしれません。いくら理論式の間の言葉を選んで丁寧に説明したところで焼け石に水のようにも思えます。どうすれば良いか、諸説あるかもしれませんが、私の場合、相手がイメージできる現象に置き換えたりします。例えば、本稿で書いた、ノイズの電磁誘導現象の解説のように、です (これもよくわからんという諸兄もおられるでしょうが) 。イメージ戦略も説明する相手のレベル (理系、文系によってなど) により言葉を選ぶ必要があるでしょう。 次回はノイズの伝搬について考えていこうと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする Electrical & Magnetic EM上島Lab 代表 上島 敬人さんのその他の記事 2025/03/11 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第6話 お互い様ノイズ インパルスノイズ 2025/01/15 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第5話 静電気ってなに 2024/11/12 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第4話 雷によるサージノイズの侵入を考える 2024/09/10 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第3話 イミュニティ対策は必要か 2024/07/09 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第2話 ノイズはどこから来るのか 2024/05/14 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第1話 イミュニティの世界 2024/02/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第12話 (最終回) 仮説を立てる 2023/12/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第11話 ノイズに対峙するということ 2023/10/11 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第10話 ノイズは厄介者 ? 2023/08/08 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第9話 ノイズの第一歩 2023/06/13 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第8話 ノイズはどこからやってくるのか 2023/04/11 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第7話 ノイズはなにものなのか その2 2023/02/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第6話 ノイズはなにものなのか 2022/12/13 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第5話 配線は受け身ですから 2022/10/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第4話 配線をどう決めるのかの実際問題について 2022/08/09 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第3話 ネジと電気磁気学の意外な関係 2022/06/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第2話 シールドはガウス(の法則)と知り合い ? 2022/04/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第1話 配線のノイズはクーロン力で考える 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月