2024/07/09 業界コラム 上島 敬人 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第2話 ノイズはどこから来るのか Electrical & Magnetic EM上島Lab 代表 上島 敬人 【略歴】 総合家電メーカーにて42年間白物家電...もっと見る 【略歴】 総合家電メーカーにて42年間白物家電の設計開発部門にて下記業務に従事。 《商品設計(電気系)》 ハードウェア設計・評価:アナログ設計、SW電源、インバーター等 プリント基板設計:製造性、法規に熟知した実装パターン設計 品質・信頼性評価:EMC、熱、電気系信頼性評価・対策 開発マネジメント:FMEA、DR、法規等QMS管理・対内外折衝、VE推進 《電気系開発技術・システム開発》 CAD/PDMを中心としたシステム開発・運用 CAE:電磁界シミュレーションを活用したEMC検証、対策 【取得資格】 iNARTE EMC Design Engineer 皆様こんにちは、EM上島Lab 上島です。 家電製品に有害なノイズのあれこれと発生源について考察してみたいと思います。 電気磁気学的に議論しているノイズは当然ながらその発生源があります。電気回路、部品を発生源とするものと、自然現象の結果として発生するものがあります。今回はその内の自然現象によるノイズについて考えてみます。 身近にあるノイズの発生源身近な電気的な自然 ? 現象では、静電気があります。静電気を語ると長くなるので、端的に説明すると、どのような物質でもプラスとマイナスの電荷を持っており、安定状態では中和 (バランスのとれた) 状態にあります。異なる物質AとBをこすり合わせると、一方の物質Aからマイナスの電荷を持った電子がもう一方の物質Bに移動します。そうすると物質Aはプラス、物質Bはマイナスに『帯電』します。この物理現象は小学校の時にプラスチックの下敷きをセーターとこすり合わせて、下敷きで髪の毛を立たせて遊んだりして体験した方も多いのではないでしょうか。 静電気の頂点『雷』 静電現象の頂点と言えるのが『雷』です。何しろ、雲の上の出来事ですし、下敷きとセーターをこすり合わせる様子が見えないので余計怖い (不思議な) 現象ですね。 『雷』の現象 (雷雲の発生と放電) については、ウィキペディア日本語版から以下のように要約ができます。 図1 雷の発生引用元:ウィキペディア日本語版『雷』 上昇気流により発生した水蒸気には多くのOH-とH+を含んでおり、これらのイオンを持った氷が接触を繰り返しながら気温の低い上空にはプラスに帯電した氷、低空ではマイナスに帯電した水蒸気として雷雲が形成されます (水蒸気が多い雲は逆の帯電) 。 そして、上層と下層の電位差が拡大して、空気の絶縁限界値を超えると電子が放出されます (絶縁破壊される) 。また、雲下層のマイナス電荷が蓄積されると、地表にはプラス電荷が静電誘導により誘起されます。ここでも一定の電位差を超えると絶縁破壊が起きます。雲の中で絶縁破壊が起きる現象を『雲放電』、対地表で起きる現象を『落雷』と呼びます。 【参考】 雷;フリー百科事典 ウィキペディア日本語版 静電気イミュニティさて、静電気とノイズはどういう関係なのか。 静電気放電が起きると、放電経路に瞬時電流が流れます。 そうですね、電位の急激な変化はノイズとなるのでしたね。 静電気によるイミュニティと雷によるイミュニティは発生源 (ノイズの侵入経路) とエネルギーが異なるため、その検証や対策の考え方は別々の取り扱いをします。 いずれにしても、電荷の蓄積により空気の絶縁破壊が起き、電流が急激に流れる変化により『ノイズ』となり電子回路に影響を及ぼすことになります。 ノイズは世界にあふれている その2ノイズの発生は、自然現象の中にも、回路自身、あるいは人為的に造りだした施設にもあります。 自然現象では今回例として出した『雷』が代表的ですが、人為的な (意図的ではない) 発生源としては 放送局⇒強電界 人に帯電⇒静電気 車のイグニッション放電など⇒連続性インパルス といったように様々なノイズにあふれています。 時には、家電製品がノイズ源となり周辺の商品に影響を与えることもあります。エアコンを動かすとラジオが聞きにくくなったり、テレビにノイズが入ったりという経験をしたことがあると思います。世の中はノイズにあふれているのです。 このまま放置することはできませんので、規制がかかることになります。世界にはEMCに関する法律があり私たちは法律を守る必要があります。EMIは数値規制があり、EMSは結果として不安全にならないよう規制されています。これらの法規に向き合いながら商品設計をしなければなりません。追々内容は紹介させていただきますが、新川電機様ではセミナーを通じてノイズへの向き合い方をお伝えする準備をしておられるようです。機会がありましたらご参加されてはいかがでしょうか。皆様のご都合がよろしければ、直接お話しできる機会もあるかもしれません。 次回、第3話では侵入してくるノイズにどのように付き合えばいいのかについて考察していきます。 最後までお読みいただきありがとうございました。 次回は、9月号に掲載予定です。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする Electrical & Magnetic EM上島Lab 代表 上島 敬人さんのその他の記事 2024/09/10 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第3話 イミュニティ対策は必要か 2024/07/09 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第2話 ノイズはどこから来るのか 2024/05/14 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第1話 イミュニティの世界 2024/02/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第12話 (最終回) 仮説を立てる 2023/12/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第11話 ノイズに対峙するということ 2023/10/11 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第10話 ノイズは厄介者 ? 2023/08/08 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第9話 ノイズの第一歩 2023/06/13 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第8話 ノイズはどこからやってくるのか 2023/04/11 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第7話 ノイズはなにものなのか その2 2023/02/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第6話 ノイズはなにものなのか 2022/12/13 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第5話 配線は受け身ですから 2022/10/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第4話 配線をどう決めるのかの実際問題について 2022/08/09 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第3話 ネジと電気磁気学の意外な関係 2022/06/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第2話 シールドはガウス(の法則)と知り合い ? 2022/04/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第1話 配線のノイズはクーロン力で考える 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月