Electrical & Magnetic EM上島Lab 代表

上島 敬人

【略歴】
総合家電メーカーにて42年間白物家電...もっと見る
【略歴】
総合家電メーカーにて42年間白物家電の設計開発部門にて下記業務に従事。
《商品設計(電気系)》
 ハードウェア設計・評価:アナログ設計、SW電源、インバーター等
 プリント基板設計:製造性、法規に熟知した実装パターン設計
 品質・信頼性評価:EMC、熱、電気系信頼性評価・対策
 開発マネジメント:FMEA、DR、法規等QMS管理・対内外折衝、VE推進
《電気系開発技術・システム開発》
 CAD/PDMを中心としたシステム開発・運用
 CAE:電磁界シミュレーションを活用したEMC検証、対策

【取得資格】
 iNARTE EMC Design Engineer

皆様こんにちは、EM上島Lab 上島です。
今回は、雷による現象について考えてみます。

自然界からのノイズ 雷

雷の発生については、第2話で少し触れました。
地球規模の帯電の結果、空気絶縁の破壊電圧を超えるエネルギーが発生すると、絶縁破壊電流が流れます。
雲と大地の間で絶縁破壊が起きると、大地への落雷の発生です。

このエネルギーの大きさは、私たちは音や光で感じ取ることができます。樹木に落ちれば木は裂け、人に落ちれば命に関わります。この膨大なエネルギーは、音や光に変換され光=高電流が絶縁破壊した空気を流れていきます。
落雷のエネルギーは数万~数十万A、電力に換算すると一般家庭50日分に相当すると言われています。これだけのエネルギーが開放されるわけですから、電気的な歪み (ノイズ) は相当なものであることも感覚的に捉えることができます。

雷サージの侵入

想像に絶する雷のノイズはその侵入元により、様々な性質 (特性) を持っています。
アースをとっている (筐体を大地へ接続している) 家電商品近傍への直撃雷の場合、大地から侵入し商用電源に抜けていきます (またはその逆向き) 。

つまり、商用電源の入り口である平行コンセントの一方と大地の間に生じた高い電位差によりプラス電位からマイナス電位の方向に電流が流れます。
家から離れた落雷では、電源の相間に発生した高い電位差により、コンセントの一方の相から侵入し、もう一方の相に向かってサージ電流が流れます。これを誘導雷と呼びます。 (図1)

図1 落雷によるノイズ侵入

落雷により何が起きるか

短時間に生じた電位差:大きなdv / dt
大きな電位差によるサージ電流:大きなdi / dt

これらの現象は、電気磁気学で言うところの短時間電位変化ですからいわゆるノイズに変身していきます。
大きなdi / dtは、そうですねアンペールの法則により電流の流れる導体を中心に磁界が発生します。 (図2)

図2 電磁誘導

発生した、磁界は次から次へと導体間を伝導していきます。
伝搬した磁界は導体間の電位差を生じさせ、かくして雷サージによる影響として回路内に現われます。この時回路に意図しない電位差が生じることとなり、設計した信号にノイズが混ざり込むことで意図した信号波形とは異なる波形になってしまいます。
伝搬したノイズのエネルギーが大きいと、デバイスが意図しない動作をする『誤動作』が生じてしまったり、デバイスの許容耐圧を超えるなど破壊につながる場合もあります。

地震、雷、火事、親父

昔から (一説には江戸時代後期から使われてきたらしい) 恐ろしいモノの代表格として使われてきた言葉です。
親父はともかくとして (いまはヘタレの代表か ? ) 雷は今も昔も制御できない恐ろしく強大な代表として認識されてきました。

近年日本は地球温暖化の影響か亜熱帯のような気候で、もはやスコールのような雷雨が多く、直撃雷による人身事故が1年間に数件起きています。人モノ双方に多大な影響を与える雷ですが、将来、制御可能なエネルギーとして利用できるような技術が開発できるといいですね。
密かに研究されている方もおられるでしょう。雷は脅威ではなく人類に有用な自然エネルギーとなることを期待して応援したいと思います。

次回、第5話では静電気を深掘りしてみたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

次回は2025年1月号に掲載予定です。