2024/11/12 業界コラム 上島 敬人 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第4話 雷によるサージノイズの侵入を考える Electrical & Magnetic EM上島Lab 代表 上島 敬人 【略歴】 総合家電メーカーにて42年間白物家電...もっと見る 【略歴】 総合家電メーカーにて42年間白物家電の設計開発部門にて下記業務に従事。 《商品設計(電気系)》 ハードウェア設計・評価:アナログ設計、SW電源、インバーター等 プリント基板設計:製造性、法規に熟知した実装パターン設計 品質・信頼性評価:EMC、熱、電気系信頼性評価・対策 開発マネジメント:FMEA、DR、法規等QMS管理・対内外折衝、VE推進 《電気系開発技術・システム開発》 CAD/PDMを中心としたシステム開発・運用 CAE:電磁界シミュレーションを活用したEMC検証、対策 【取得資格】 iNARTE EMC Design Engineer 皆様こんにちは、EM上島Lab 上島です。 今回は、雷による現象について考えてみます。 自然界からのノイズ 雷雷の発生については、第2話で少し触れました。 地球規模の帯電の結果、空気絶縁の破壊電圧を超えるエネルギーが発生すると、絶縁破壊電流が流れます。 雲と大地の間で絶縁破壊が起きると、大地への落雷の発生です。 このエネルギーの大きさは、私たちは音や光で感じ取ることができます。樹木に落ちれば木は裂け、人に落ちれば命に関わります。この膨大なエネルギーは、音や光に変換され光=高電流が絶縁破壊した空気を流れていきます。 落雷のエネルギーは数万~数十万A、電力に換算すると一般家庭50日分に相当すると言われています。これだけのエネルギーが開放されるわけですから、電気的な歪み (ノイズ) は相当なものであることも感覚的に捉えることができます。 雷サージの侵入想像に絶する雷のノイズはその侵入元により、様々な性質 (特性) を持っています。 アースをとっている (筐体を大地へ接続している) 家電商品近傍への直撃雷の場合、大地から侵入し商用電源に抜けていきます (またはその逆向き) 。 つまり、商用電源の入り口である平行コンセントの一方と大地の間に生じた高い電位差によりプラス電位からマイナス電位の方向に電流が流れます。 家から離れた落雷では、電源の相間に発生した高い電位差により、コンセントの一方の相から侵入し、もう一方の相に向かってサージ電流が流れます。これを誘導雷と呼びます。 (図1) 図1 落雷によるノイズ侵入落雷により何が起きるか短時間に生じた電位差:大きなdv / dt 大きな電位差によるサージ電流:大きなdi / dt これらの現象は、電気磁気学で言うところの短時間電位変化ですからいわゆるノイズに変身していきます。 大きなdi / dtは、そうですねアンペールの法則により電流の流れる導体を中心に磁界が発生します。 (図2) 図2 電磁誘導発生した、磁界は次から次へと導体間を伝導していきます。 伝搬した磁界は導体間の電位差を生じさせ、かくして雷サージによる影響として回路内に現われます。この時回路に意図しない電位差が生じることとなり、設計した信号にノイズが混ざり込むことで意図した信号波形とは異なる波形になってしまいます。 伝搬したノイズのエネルギーが大きいと、デバイスが意図しない動作をする『誤動作』が生じてしまったり、デバイスの許容耐圧を超えるなど破壊につながる場合もあります。 地震、雷、火事、親父昔から (一説には江戸時代後期から使われてきたらしい) 恐ろしいモノの代表格として使われてきた言葉です。 親父はともかくとして (いまはヘタレの代表か ? ) 雷は今も昔も制御できない恐ろしく強大な代表として認識されてきました。 近年日本は地球温暖化の影響か亜熱帯のような気候で、もはやスコールのような雷雨が多く、直撃雷による人身事故が1年間に数件起きています。人モノ双方に多大な影響を与える雷ですが、将来、制御可能なエネルギーとして利用できるような技術が開発できるといいですね。 密かに研究されている方もおられるでしょう。雷は脅威ではなく人類に有用な自然エネルギーとなることを期待して応援したいと思います。 次回、第5話では静電気を深掘りしてみたいと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。 次回は2025年1月号に掲載予定です。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする Electrical & Magnetic EM上島Lab 代表 上島 敬人さんのその他の記事 2024/11/12 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第4話 雷によるサージノイズの侵入を考える 2024/09/10 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第3話 イミュニティ対策は必要か 2024/07/09 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第2話 ノイズはどこから来るのか 2024/05/14 業界コラム 家電をとりまく迷惑ノイズの実際問題第1話 イミュニティの世界 2024/02/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第12話 (最終回) 仮説を立てる 2023/12/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第11話 ノイズに対峙するということ 2023/10/11 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第10話 ノイズは厄介者 ? 2023/08/08 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第9話 ノイズの第一歩 2023/06/13 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第8話 ノイズはどこからやってくるのか 2023/04/11 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第7話 ノイズはなにものなのか その2 2023/02/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第6話 ノイズはなにものなのか 2022/12/13 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第5話 配線は受け身ですから 2022/10/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第4話 配線をどう決めるのかの実際問題について 2022/08/09 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第3話 ネジと電気磁気学の意外な関係 2022/06/14 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第2話 シールドはガウス(の法則)と知り合い ? 2022/04/12 業界コラム 身近にある家電 with ノイズのストーリー第1話 配線のノイズはクーロン力で考える 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月