Electrical & Magnetic EM上島Lab 代表

上島 敬人

【略歴】
総合家電メーカーにて42年間白物家電...もっと見る
【略歴】
総合家電メーカーにて42年間白物家電の設計開発部門にて下記業務に従事。
《商品設計(電気系)》
 ハードウェア設計・評価:アナログ設計、SW電源、インバーター等
 プリント基板設計:製造性、法規に熟知した実装パターン設計
 品質・信頼性評価:EMC、熱、電気系信頼性評価・対策
 開発マネジメント:FMEA、DR、法規等QMS管理・対内外折衝、VE推進
《電気系開発技術・システム開発》
 CAD/PDMを中心としたシステム開発・運用
 CAE:電磁界シミュレーションを活用したEMC検証、対策

【取得資格】
 iNARTE EMC Design Engineer

静電気の発生については、第2話でさわりをお話ししました。もう少し静電気の成り立ちと実際について見ていきましょう。

静電気の成り立ち

すべてのモノは、基本的な原子からできています。原子は科学的な手段ではそれ以上分割できない基本単位です。原子は陽子と中性子からなる原子核とその周りを電磁気的に束縛された電子から成り立っています。
なんだか難しいですが、要するにプラスの電荷を持った原子核とマイナスの電位を持った電子により安定した状態にあり、原子の種類は原子核の数によって決まっています。

静電気に話を戻します。原子の種類により原子核の数が異なるということは原子の種類 (物質) ごとに潜在的なエネルギーが異なるとも言えます。異なる物質同士がぶつかったとき、マイナスの電子を引っ張る力が強い方に一方の電子が引っ張られバランスを崩してしまった結果、一方はマイナスの電荷、もう一方はプラスの電荷を余計に保持することとなり、この状態を『帯電』と呼びます。

図1 電荷を持つ=不安定な状態

放電という現象

帯電している状態は、バランスが崩れた状態ですので、常に安定状態に戻ろうとします。
マイナスに帯電した物質とプラスに帯電した物質が一定の距離に近づくと電子が移動、つまり電流が流れます。
この現象はプラスまたはマイナスに帯電した物質が十分大きな安定電位物質に近接しても起きます。

自動車から降りてドアに触れた瞬間『バチッ』という音とともに痛みを経験した方はたくさんいらっしゃるでしょう。自動車から降りるとき、服と座席シートなどの摩擦により人が帯電することがあります。自動車は大きな金属導体 (安定電位) のため、帯電した人がドアに触れようとして近接すると電荷が安定状態に戻ろうとします。言い換えると、帯電により一定の電位にある人体が安定電位導体に絶縁破壊距離まで近づくと放電が起こり、絶縁破壊電流が流れます。
この放電のショックが痛みの原因になります。

人からの放電は仕方がないもの ?

人はいつもモノとぶつかっています (接触、離反を繰り返しています) 。服を着るとき、本を手に取ったとき、カーペットの上を歩いている時などあらゆる行動が静電気の発生 (帯電) につながってます。
人はいつも帯電していると言ってもいいのかもしれません。

図2 人体からの放電

そうなると、電気の通りやすい大きな金属体に触れたり (金属のドアノブに触れたときなど) 、逆極性に帯電した物質に触れたり (他の人に触れたり) すると放電が起きます。
放電先が電気製品だと電気製品の回路内部へ電流が流れ故障の原因になります。人は帯電するものとすれば、電気製品側で静電気放電による故障が生じないようにしなければならないのです。

静電気の都市伝説

静電気放電による痛みっていやですよね。私もあの痛みはとっても苦手です (電気風呂みたいでピリピリ大好き・・みたいな方おられるのでしょうかね) 。
静電気放電による痛みの回避にはいろいろな都市伝説があります。

私が実践しているのは次の二つ

  • 自動車から降りるときはドアの金属部分に触れながら座席から立ち上がる
    体は常時安定電位に触れているので、帯電しない (放電のショックがない) と信じている
  • 金属のドアに触れるときは、まず『バン』とたたくように触れてからノブに触れる
    これは『バン』とたたいた痛みで紛らわさす説と放電時間が短くなり感じ方が少ない説などがあります。

怖いですねー、皆様は信じますか ?

次回、第6話では人工的なノイズの事例として、インパルスノイズを取り上げます。
最後までお読みいただきありがとうございました。

次回は3月号に掲載予定です。