唐突ですが、苦手な人と対峙しなければならない状況になったとき皆さんはどうされますか ?
厄介な状況は様々ですので、一概には言えませんが相手の一挙一動に磁石のように反応していては恐らく収拾がつかないことが想像できますね。こんな時は(感情的になっているとなおさら、思うようにはいきませんが)、相手はどうしてそう思うのか(そうするのか)に立ち戻ってみるとなるほどと共感が生まれ、解決策が出てくるかもしれません。
ノイズに共感してみる
第9話ではノイズになり得る状況をコンデンサへの電流チャージという挙動から考えてみました。厄介なノイズを相手にするには、相手(ノイズ)の成り立ちを考えてみると、ノイズへの共感が生まれるかもしれません。
ノイズの発生

ノイズとは不要な高周波歪みです。波形で見ると方形波になってほしいのに、望まない歪みの部分が不要な高周波部分であることは第7話でお話ししました。歪みの起きる例として、スイッチがオンした瞬間に回路に存在する容量成分に流れ込む充電電流ということは第9話でお話ししたとおりです。
コンデンサ充電電流の時定数\(\tau\)は以下で表わされます。
C:容量 R:回路抵抗
つまり、充電時間を周波数で見直すと以下のように表現されます。
この式は、単一周波数ですから、複雑な歪み=高次高周波の足し算とはほど遠くなります。言い換えると、充電回路を描くと図1のように単純ですが、プリント基板などに実装しパターンを形成すると、意図しない回路があちらこちらに分布してしまうことがあります。このように意図しない分布定数の存在により、単純な回路のはずが複雑な回路となり結果として複雑な歪みとなり、この状態がノイズとして現われることになり得ます。
ここでは『意図しない分布定数』と表現しました。つまり、意図していないところに意図しない現象として起きるので『いやなやつ』となり、なんとか力ずくで抑えようとなっている状態と言えます。このあたりは、対人の『苦手なやつ』と似ていませんか。
相手を理解すれば対処法も冷静に
なぜその現象は生じるのかの成り立ちが理解できれば、厄介ではあるが対応の方法も冷静に考えられるものです。
分布定数が計算できる=歪みの周波数成分とその成分をコントロールできるとも言えます。分布定数を解明し、計算するのはそう簡単ではありませんが、ノイズの成り立ちから原因と対処法を大まかに類推することは可能です。
今回の事例では、容量Cへのチャージが起点になっています。逆説的に考えるとチャージ電流を抑えればノイズの発生はゼロにはならなくともレベルは低くなるというのは理にかなっていそうです。
単純にはオームの法則により、チャージラインに抵抗を挿入すれば電流は制限され、充電時間もゆるやかになります。

結局ノイズは誰のせいなのか その2
こうなってくると、ノイズは自ら設計したスイッチ回路が起点であり、回路の実装設計の結果発生してしまった分布定数がその歪みの原因ということがなんとなくわかってきました。起点(ここでは仕様を達成するためのスイッチ回路)は商品開発の共通課題といえますが、実装設計は明らかに電気系特有の原因ですのでやはり、謙虚に捕まえることが必要と思います。
ノイズの対策方法はいろいろ考えられます。理論に基づき自分の手の届く範疇で対応することも可能かもしれませんし、配線の工夫や構造での対策も必要かもしれませんね。
後者の場合は特に、構造系への調整や部材の手配など関連部門との調整が重要なのは言うまでも無いことですね。結論は前回と同じになりました。
次回はノイズの対策について考えていこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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