2011/08/02 業界コラム 園井 健二 人に優しい設備、 パソコンの体に優しい使い方と疲労回復法 No.1 公益社団法人 日本伝熱学会 会員 園井 健二 当社 技術顧問...もっと見る 当社 技術顧問 3回に渡り「人に優しい設備、パソコンの体に優しい使い方と疲労回復法」をテーマに体験談を織り交ぜてお話ししたいと思います。 1回目は10年以上前のことになりますが、目視検査の自動化システムを構築した経験から考えた、人に優しい設備についてです。 目視検査の対象物は、径で1cm程の凹凸のある粒で、自動化前の作業は、多数の粒をコンベア上に幅方向に広く並べた状態で搬送し、粒に混入している異物を、傍らにいる作業者が見つけ、指で摘んで取り除くというものでした。 当時の責任者の方が「費用と期間が掛かっても自動化したい」と長年思っていた課題でもありました。その理由は、目視検査後の作業者は目の疲労を訴えるだけでなく、真っ直ぐに歩けないという平衡感覚の変調がよく起きていたこと、年齢が上がるにつれ検出率は低下しているという統計的な事実があることで、自動化を実現し、作業者を人間らしい仕事に配置転換したいということでした。 平衡感覚が変調を起こす理由ビデオカメラ初心者の方は、周囲の景色をカメラを動かしながら録画する際に、手ブレを起こすと共に、場面が速く回り過ぎて見ていて疲れるという失敗を冒します。しかし、その人が同じ景色を直接見ている時は、ブレもなく、回り過ぎない像として認識しています。網膜に写る像が動いていても、体の動きが先に分かるため、脳は補正して認識していることが理由です。 目視による異物検出は、作業者の負荷が少ないように見えますが、流れる粒を、目で追いかけては戻る、の繰り返し作業のため、脳内での補正認識が長時間継続した状態になり脳の特定の部分に疲労が蓄積し、平衡感覚に影響を与えているわけです。 適度で偏りのない作業が必要な理由血液循環には、心臓だけでなく、全身の筋肉も関係しています。体を動かさない場合、心臓だけに負担が掛かり、血行が悪くなります。更に、多数の細胞からなる私たちの体は、特定の機能のみを使い続けると、一部の細胞だけに疲れが溜まり、痛んだ細胞が、血管から運び込まれる栄養によって再生されるまで日数を要することになります。 近年、組立工場では、流れ生産方式からセル生産方式へ移行しています。仕事の達成感による生産性と品質向上が目的ですが、そろそろ「人間を機械のように見る考え」から抜け出す必要も有るかもしれません。機械の場合は、不要な動きのない方が故障し難いのですが、人間の場合は、無駄と見えても、全身を満遍なく、無理なく動かした方が健康的と言えるからです。 人に優しい設備の条件人に優しい設備とは何かを私なりに考えてみました。 危険な作業を無くすこと 作業環境を良くすること(照明、空調、作業台や椅子など) 眠気を誘ったり、間違えやすい作業を無くすこと 身心の局所的な過労を防ぐこと などが挙げられると思います。今は、鉄鋼、ガラス、半導体、液晶などの分野では、目と脳に過度な負荷を掛ける目視検査の自動化が進んでいて、生産性向上と品質の均一化が実現されているようです。 異物検出自動装置の開発次は私が係った異物検出自動装置の開発に関しての話です。 異物検出の為のハードウエアとして、必要な分解能のあるカメラを選定し、異物が強調される照明方法を検討します。カメラの出力信号を処理する画像処理装置は、画像入力ボードを実装します。 一方、画像処理のソフトウエアは、対象に合わせた応用ソフトの作成が不可欠です。ソフト作成では、最初に画像処理方法を検討します(画像処理アルゴリズムといいます)。ここは、人間と機械との違いが出るところで、人間の判断プロセスを、画像の特徴だけ使った自動的な演算処理に還元する方法です。 画像処理アルゴリズムは、事前に、実物を使った実験での確認が不可欠です。私たちは、ありのままに見ていると思っても、無意識にフィルターを掛けて見ていることが多いです。その一つに、輪郭が有ります。目視で特徴を捉える時、自然と輪郭を強調して見ています。文字、図形は、太さのある線で作成されますし、似顔絵は線画です。しかし、物には多くの場合、輪郭は有っても輪郭線は有りません。 線状の異物は、太さの有る線を強調する「画像の演算処理」で抽出できますが、同時に、輪郭も、ある程度強調して抽出されます。そのまま判定すると誤検出が頻発します。その防止が必要ですが、輪郭が不定形の場合は「パターン認識」の手法が使えません。人の場合は、「輪郭に類似しているので異物ではない」と判断できるのですが…..。 画像処理での誤検出防止は、「バックライト照明を追加し、対象物の輪郭と背景との明るさを調整して近づけ、輪郭を目立たなくする」という方法で実現しました。その内容を簡単にご紹介します。 画像処理アルゴリズムの説明下図は、バックライト照明の有り(A列)無し(B列)による画像の違いを表しています。 実際に目に見える画像です。不定形の粒(黄色)が有り、その中に異物(黒の曲線)が混じっています。 カメラに写る画像です。色を使った画像処理ではないので、濃淡画像で表しています。上方からの照明だけでは、粒の背景に影が出来ます(2A)。その影は、下方からの照明(バックライト)で打ち消すと共に、粒の境界線での濃度差を少なくします。(2B) カメラ画像から特徴を抽出した処理画像です。処理は、隣接する画素間の演算ですが「人の網膜の機能」に近い演算です。バックライト無しの処理では、輪郭は濃い線で、異物に近い濃度です(3A)。3Aの状態で判定すると、輪郭を誤検出します。バックライト有りの処理では、輪郭は淡い線で、異物と区別できる濃度です。(3B) 処理画像を濃淡のしきい値で2値化した判定画像です。3Bの状態で判定すると、異物のみを検出できます。(4B) 人間という生命の素晴らしさ異物か、輪郭かを区別するのと類似な例ですが、ここで表示している文字列を「意味をもった文字か、それとも無意味な模様か」判断できるのは、文字を知っているからです。ひらがな、カタカナ、漢字、英数字など、多様な文字を駆使してコミュニケーションする私たちは、機械のような扱いには馴染みませんが、文字認識が出来るという柔軟性は驚くばかりです。そして、画像処理の世界は、人間という生命の素晴らしさと大切さを感じさせてくれる分野であると私は思っています。 次回は、人と機械との関係で最も身近な、パソコンと周辺機器を材料に、「パソコンの体に優しい使い方」の体験談をお届けする予定です。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 公益社団法人 日本伝熱学会 会員 園井 健二さんのその他の記事 2017/01/11 業界コラム 安全対策 ~ 「うっかり」と「うとうと」によるミスを防ぐ方法 No.16 2016/12/06 業界コラム 日常生活での健康法 ~ 環境や視点を変えて心を整える習慣 No.15 2016/09/06 業界コラム 日常生活での健康法 ~ 睡眠時間と体内時計を乱さない生活習慣 No.14 2016/08/02 業界コラム 日常生活での健康法 ~ 頭脳を休める生活習慣 No.13 2016/07/05 業界コラム 日常生活での健康法 ~ 発酵食品を摂取する生活習慣 No.12 2016/06/07 業界コラム 日常生活での健康法 ~ 腸内フローラを育てる生活習慣 No.11 2015/12/08 業界コラム 日常生活での酸化還元反応観察 ~ 良い油脂をバランスよく摂取する健康法(5)No.10 2015/11/03 業界コラム 日常生活での酸化還元反応観察 ~ 良い油脂をバランスよく摂取する健康法(4) No.9 2015/10/06 業界コラム 日常生活での酸化還元反応観察 ~ 焙煎した種子を摂取する健康法(3) No.8 2015/09/08 業界コラム 日常生活での酸化還元反応体験 ~ 抗酸化物質による健康法(2) No.7 2015/08/04 業界コラム 日常生活での酸化還元反応観察 ~ 抗酸化物質による健康法(1) No.6 2015/07/07 業界コラム 日常生活での血糖値測定 ~ 食後高血糖を抑える健康法 No.5 2015/06/09 業界コラム 日常生活での温度測定(2)~ 発酵食品による健康法 No.4 2015/05/13 業界コラム 日常生活での塩分測定(2) ~ 「適切なミネラルバランスによる健康法」 No.3 2015/04/07 業界コラム 日常生活での塩分測定(1) ~ 塩分濃度測定による健康法 No.2 2015/03/10 業界コラム 日常生活での温度測定(1) ~ 酵素を生かす加熱法 No.1 2011/12/06 業界コラム 人に優しい設備、 パソコンの体に優しい使い方と疲労回復法 No.3 2011/10/04 業界コラム 人に優しい設備、 パソコンの体に優しい使い方と疲労回復法 No.2 2011/08/02 業界コラム 人に優しい設備、 パソコンの体に優しい使い方と疲労回復法 No.1 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月