公益社団法人 日本伝熱学会 会員

園井 健二

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これまで筆者自身や身近な人の健康増進のために集めた文献を元に、自ら実践して確かめたことに絞り、個人情報込みの健康情報を、コラムに掲載させて頂きました。
引用文献も、著者やご家族の健康の個人情報に抵触することでも書かれているか?を重視しました。今は、相反するさまざまな健康情報が有り過ぎて、判断に迷う時代です。虚偽情報だけでなく、特に、生活習慣病は、一人一人の状況が異なるので例外も多く、統計的な処方箋が当てはまらないことが多いようです。

健康管理の最終責任は自分にあり、他者の責任にできないと割り切ることが必要です。独断は禁物ですが、素直に、頭の声でなく体の声に耳を傾け、良いと思うことを実践し、観察・評価の上で取捨選択することです。
素直になるには、自然の中に入り、穏やかな気持ちで浸ることが有効です。

また、医薬品は、動物実験などで評価されていますが、人工的なものですから、薬に頼らず、自然の食品の中から体に合うものを探し出す「自助努力」も必要です。
今回は、越冬のため 4000km を旅してきた、元気な「瓢湖の白鳥」をご紹介します。私たちも自然の一部ですから、日常生活の中で、身近な自然から素直に学びましょう。筆者は暫く休みを頂きますが、読者の皆様がより一層ご健康であることを祈念します。

長時間飛行の後、瓢湖に着水する直前の写真(11月22日時点で、6150羽の白鳥が飛来)

間近に野生の白鳥を観察できる「瓢湖」は、新潟県 阿賀野市にあり、最初に訪れたのは雪の降る時でしたが、10 月中旬は今回が初めてです。白鳥が未だ飛来していないのではないか? と思いながら、JR 水原駅から瓢湖へと向かいました。
既に、白鳥は飛来しており、前日までの発表では、2666 羽でした。偶然、数百羽の白鳥が飛来するという ”タイミング” にも恵まれました。

瓢湖に新設された白鳥資料館「白鳥の里」で、TV 放送番組のビデオを見ますと、飛来する白鳥でコハクチョウの故郷は、東シベリアの北極海沿岸チャウン湾の湿地帯です。繁殖地では警戒心が強く、1 km 四方に 1 家族単位で産卵と子育てをします。北緯70度に位置しますから、短い夏が終わり9 月ともなると、早くも海が凍り始めます。白鳥たちの旅立ちの時で、越冬のため、家族単位で故郷を離れて南下します。資料館で見ると、1 家族で 9 羽が最多記録ですが、飛んでいる姿から、5 羽くらいが多いようです。カムチャッカ半島から、千島列島沿いに北海道に渡って集結し、瓢湖までのルートで飛来します。更に、南下する白鳥もいますが、多くの白鳥はリピーターのようで、瓢湖で越冬します。安全な繁殖地と越冬地を求め、距離にして約 4000km の長い空の旅です。

白鳥は警戒心が強いので、人が近づくと、逃げたり威嚇しますが、瓢湖では、エサを貰うために近づいてきます。
もっとも、多数のカモが岸辺に集まっていますので、多くは遠くで休んでいます。

白鳥のえさ と 油脂

白鳥は、毎年往復 8000km の旅をするわけですから、何を食べてそんなに移動できるのかと、興味を持ちます。

冬は、6000 羽を越える白鳥と、数万羽のカモがいますから、自然のえさが積雪で摂れなくなった時、必要なえさは大量です。瓢湖では、お米やパンの耳などの寄付を受け付けています。
私たちが、与えられる「白鳥のえさ」は指定されたものだけです。お米を蒸かしたもので、軽いので沈まず、水に浮きます。向かい風が強い時は、撒いても足下に戻ってきますから、風の吹く合間を感じて下手投げで撒きます。

白鳥のえさ(看板に記載の説明他)
 自然のえさ  水田の落ち穂や二番穂・マコモ・クロクワイ・
ヒロモ・水草の根など穀物や草
(環境保護のため、地元は減農薬で稲作)
 人工的えさ  もみ、粃(しいな:米で未成熟のもの)、パン
 定時のえさ  軽い粃(しいな)を切った食パンと混ぜたもの
米は水に沈むので、エサ場に置いておく

穀物は、油脂を含んでいますから、十分なエネルギーになります。穀物を消化し、油脂と糖質を脂肪細胞に取り込み、中性脂肪にします。中性脂肪は飽和脂肪酸ですが、低温で固まりやすいので、不飽和脂肪酸の比率を高くしているのではないでしょうか? 白鳥は首を使い、脂肪腺から出る油を羽毛に塗り、手入れしています。油脂は、用途が多いので最重要な栄養素です。

脂肪由来のエネルギー源 ケトン体

脂肪は、重量当たりのカロリーが高い注1 ので、空を飛ぶ鳥のエネルギーとして最適です。
糖質由来のグリコーゲンは、体内貯蔵量が数時間分程度です。空を飛ぶ白鳥は、飛行中にエネルギー切れで落下するわけにはいきません。肝臓で、豊富にある体内脂肪をもとに、分子量の小さいケトン体に変え、筋肉のエネルギー源にします。

*人間の場合も、心臓の筋肉のエネルギー源はケトン体で、ブドウ糖ではありません。
注 1:糖質 4Kcal/g、脂肪(脂肪・油) 9Kcal/g

出典:大櫛 陽一 著 「100 歳まで長生きできるコレステロール革命」※1

ケトン体は、ひと言でいえば、「脂肪由来のエネルギー源」。食事に含まれる脂質や体内に蓄積された中性脂肪をもとにして、肝臓において合成されます。細かく言えば、ケトン体は「アセトン」「アセト酢酸」「3-ヒドロキシ酪酸」の 3 つの総称です。これらが血中に放出されると、脳や筋肉などに送られてエネルギー源として利用されます。しかも、筋肉や脳に入る際にインスリンを必要としないので、膵臓のβ細胞を疲弊させることなく、エネルギー利用をしていくことが可能なのです。

出典:大櫛 陽一 著 「糖質オフのレシピ」※2

渡り鳥にみるケトン体エネルギー
渡り鳥はケトン体だけをエネルギーに 3800km 連続飛行する

脂肪由来のエネルギー源「ケトン体」の重要性が知られたのが、渡り鳥の研究。
アメリカムナグロ鳥は、脂質をエネルギーにアラスカから南米の端まで 3800km(最長区間:筆者注)を連続飛行できることがわかっています。このことからも、ケトン体がいかにタフなエネルギーなのかということがわかります。

どうして 3800km と分かったのでしょうか?
「エンカルタ 総合大百科 」※4 で検索すると、下記の情報がありました。

カナダ東部のノバスコシアから南アメリカ北東部までの 3860km は、まったく陸地のない大西洋の上を越えていく。

右図は、同ソフトの地球儀で計測した結果です。
ノバスコシアから、真南に大西洋を渡っていくルートで、3800kmです。
時速 100km でも 38 時間ですから、2 日間は、飲まず食わず休まずに体内のケトン体だけで飛び続けるわけです。

アメリカムナグロ鳥が最長飛行距離保持鳥かと思いましたが、もっと上がいました。オオソリハシシギです。

出典:ティム・バークヘッド、沼尻由紀子訳 「鳥たちの驚異的な感覚世界」※5

オオソリハシシギは磁気感覚に従い、途中で休むことなくアラスカからニュージーランドまで 1 万 1000km を 8 日間で移動する。

右図は、上記ソフトの地球儀で計測した結果で、11000km です。
時速 60km × 24 時間 × 8 日間 =11,520km

しかも、アラスカからニュージーランドの方向は、完全な真南ではありません。日中は太陽、夜は星座で方向を決めても、悪天候の場合があります。 地球磁場を使った「磁気感覚」も併用して、目的地に到達します。

鳥類の磁場感知のメカニズムは未だ仮説

磁気コンパスと磁気図の説に生物学者がみな賛成しているわけではなく、この地場感知のメカニズムは今のところ仮説だ。

スタミナをつける脂質の上手な摂取法

【飽和脂肪酸】

穀物には、オメガ 6 系の油が十分含まれていて、抗酸化物質で守られています。精製しない状態(玄米、全粒粉)で摂取すれば、必要量は足りてしまいます。不足するオメガ 3 系の油(えごま油、アマニ油)を、加熱しないで摂取します。青魚類の EPA/DHA を摂取します。

注:酸化した油は逆効果です。新鮮な油で摂取します。

【飽和脂肪酸】

中鎖脂肪酸のココナッツオイルは、食後、直ぐに肝臓に送られ、ケトン体になります。ケトン体を使う体質になると、中性脂肪を引き出して燃焼させることが容易になります。結果、古くなった中性脂肪を新鮮なものに入れ替えることができ、解毒効果もあります。加熱料理には、酸化し難い飽和脂肪酸(ココナッツオイルや動物性油脂)を使用します。

文献紹介:PHP くらしラク~ル ♪ 1 月増刊号『本当はカラダに悪い食べもの』※3

筆者も以前に購入し実践しましたが、『「空腹」が人を健康にする』(サンマーク出版)など累計 300 万部以上の著者 南雲吉則 医学博士の最新作が『エゴマオイルで 30 歳若返る』(河出書房新社)です。
その内容を、質疑応答形式で要約して、「結局油はどれがいいの?」の章に書かれています。
高橋尚子さんの巻頭インタビュー「意識が変われば、カラダが変わる!」も、分かり易くて奥行きの深い内容です。
健康情報を発信して来られた有名な著者たちの「最新情報のエッセンス」が分かる雑誌です。

コーヒーブレーク

瓢湖で白鳥観察に良い時期
雪が降って辺りが白くなるまでは、日中、間近で見られる白鳥は少ないのです。近くの水田や山に餌を求めて、早朝から運動も兼ねて出掛けています。同時に、親鳥から子鳥へ付近の地理も教えているようです。白鳥は元気ですね。・・・白鳥が瓢湖に戻ってくるのは夕暮れ時以降です。
日没後でも、走る自動車のヘッドライトを利用し、車の真上で鳴き声を交わしながら飛行します。
日没まで瓢湖で白鳥を待ったことは未だ有りませんが、「その光景は幻想的」なようです。
瓢湖に隣接の「リズム・ハウス瓢湖」に宿泊すると、堪能できると思います。。

【引用文献および参考文献】

大櫛 陽一「100歳まで長生きできるコレステロール革命」((永岡書店 2012年1月)、p124
— 著者紹介 —
1971年、大阪大学大学院工学研究科修了。
大阪府立羽曳野病院、大阪府立成人病センター、
大阪府立母子センター、大阪府立病院などを経て、
1988年より東海大学医学部教授。
2012年より東海大学名誉教授。
2006年、日本総合健診医学会シンポジウムで、全国約70万人の
健康診断結果から日本初の男女別・年齢別基準範囲を発表。
著書に『検査値と病気間違いだらけの診断基準』(太田出版)、
『メタボの罠』(角川SSC新書)、『「ちょいメタ」でも大丈夫』(PHP研究所)、
『コレステロールと中性脂肪で、薬は飲むな』(祥伝社新書)、
『脳卒中データバンク2009』(中山書店)などがある。

大櫛 陽一「糖質オフのレシピ」(成美堂出版 2013年2月)、p30-37
— 著者紹介 —
1971年、大阪大学大学院工学研究科修了。
大阪府立羽曳野病院、大阪府立成人病センター、
大阪府立母子センター、大阪府立病院などを経て、
1988年より東海大学医学部教授。
2012年より東海大学名誉教授。
2006年、日本総合健診医学会シンポジウムで、全国約70万人の
健康診断結果から日本初の男女別・年齢別基準範囲を発表。
著書に、『コレステロールと中性脂肪で、薬は飲むな』(祥伝社新書)、
『100歳まで長生きできるコレステロール革命』(永岡書店)
『間違っていた糖尿病治療』(医学芸術社)など多数。

PHPくらしラク~ル ♪ 1月増刊号「本当はカラダに悪い食べもの」((PHP研究所 2015年11月)
— 著者紹介(巻頭インタビュー、第1特集分) —
高橋 尚子 スポーツキャスター
溝口 徹  新宿溝口クリニック 院長
池谷 敏郎 池谷医院 院長
小林 弘幸 順天堂大学教授
南雲 吉則 医学博士、ナグモクリニック総院長
田淵 英一 医師・医学博士
氷見 和己 形成外科医
渡辺 雄二 科学ジャーナリスト
白鳥 早奈英 栄養学博士
山田 悟  北里研究所病院・糖尿病センター長。医学博士

マイクロソフト 「エンカルタ 総合大百科」(マイクロソフト 2003年)

ティム・バークヘッド、沼尻由紀子訳 「鳥たちの驚異的な感覚世界」((河出書房新社 2013年3月)、p194、p247
— 著者紹介—
イギリスの鳥類学者・行動生態学者
シェフィールド大学動物学教授。王立協会特別委員。
鳥類学への多大な貢献が認められ、2011年にアメリカ鳥学会の 「エリオット・カウズ賞」を受賞。
2008年刊行の『鳥類の知恵-図解 鳥類学史』(未訳)は英国鳥類学協会の 「年間最優秀鳥類書籍賞」を受賞。