昨年は 10 回にわたり、食による健康法を記載しました。
今回は、健康に役立つレシピとして、ご紹介します。

私たちの腸粘膜の上に、お花畑のように群生している細菌叢「腸内フローラ」を善玉菌優位にし、腸内環境と腸粘膜を良くする生活習慣が、今、注目されています。
★腸内環境と腸粘膜に良い生活習慣
- 悪玉菌を減らす。
- 善玉菌を増やす。
- 腸粘膜を癒す。
- 摂取する栄養素は完全消化できる量までとする。
- 毒になるものは摂取しない。
- 睡眠中は胃腸を休ませる。
腸内の善玉菌/悪玉菌/日和見菌の細菌バランスが、悪玉菌優勢のまま善玉菌を摂取しても、細菌バランスは良くなりません。悪玉菌を減らすことが優先です。一般的には、薬を服用する方法ですが、同時に善玉菌も減ってしまう副作用があります。本稿では、筆者の実践している悪玉菌のみ減らす方法をご紹介します。
腸内の悪玉菌のみ減らす方法
ココナッツオイルの抗菌作用で腸内を殺菌します。ココナッツオイルの主成分であるラウリン酸は、酵素で分解されてモノラウリン酸になると、悪玉菌に対する抗菌力が現れます。しかも、善玉菌には無害ですから、後で善玉菌を補充する必要もありません。因みに、ラウリン酸は、母乳の 成分の 1 つで、乳児の病気を防ぎます。乳児の腸内はほとんど善玉菌ですから、善玉菌に無害の理由は明らかです。
また、消化に悪影響を与えないので、断食する必要はありません。
食物酵素と補酵素で、ココナッツオイルを事前消化
ココナッツオイルを摂取した時、膵臓から分泌される消化酵素はリパーゼです。食後、腸で検知してから分泌されますが、分泌量にも限度があります。予め食物酵素で事前消化してから食べると、抗菌作用が直ちに利用でき、消化酵素を節約できます。事前消化に利用する食物酵素は、野菜のなかでも「大根」を摺り下ろした「大根おろし」が便利です。
大根おろしには 100 種類以上の酵素が含まれていて、タンパク質や炭水化物も消化できます。多くの酵素は、酵素の働きを助けるミネラルも 必要ですから、ミネラル豊富な塩を添加し、味も調えます。
食物酵素を、酵素活性の高い温度に加温
加温すると酵素の働きが良くなります。但し、多くの酵素は 48℃ 以上で不活化するため、35~45℃ まで温めますが、高温にはしません。
オメガ 3 系の油で、炎症を起こしている腸粘膜を修復
オメガ 6 系の油は炎症を促進するのに対し、オメガ 3 系の油は炎症を鎮めます。オメガ 3 とオメガ 6 の油の摂取比率 1:2 が理想ですが、現在の食生活では、オメガ 6 の比率が高くなり過ぎています。
食物酵素で、タンパク質を完全消化
「肉を食べれば、直ぐ吸収されて元気が出る」と思いがちですが、タンパク質をアミノ酸まで完全分解するには、多量の消化酵素と時間がかかります。また、必要量以上のタンパク質や消化途中のアミノ酸が連なった「ポリペプチド」は、排泄されてしまいます。
成人の場合、体重 1kg に対し、約 1~1.5g/日 |
成人男性(体重 60kg):推奨量 60g/日 |
成人女性(体重 50kg):推奨量 50g/日 |
しかし、腸粘膜が弱っていると、「ポリペプチド」を吸収してゴミとして細胞内に溜まります。炎症があれば、ポリペプチドは燃料となって炎症を悪化させます。(※1 の参考文献より。文責筆者)
食材と摂取量 | ||
生卵(1 個) | 牛肉(100g) | |
タンパク質含有量 | 6.5g | 20g |
プロティンスコア | 100 | 80 |
調理による目減り | 1 | 0.5 |
タンパク質摂取量 | 6.5g | 8g |
生卵だけを食べるとした場合、成人男性では 9 個/日になります。3 食ですと、毎食 3 個分が必要なタンパク質量です。実際には他の食品からも摂取しますから、卵 1~2 個/日が推奨されています。しかし、タンパク質は、体内に貯蔵できません。必須アミノ酸のバランス(プロティンスコア)をとって、必要量を毎日摂取しなければならない栄養素です。
◎膵臓の消化酵素だけで、卵を週に何個消化できるでしょうか?
この質問を今まで何人もの方にしてみましたが、多くの方は、「1 日 1 個として週に 7 個ですか?」と、返事されます。筆者にも驚きの数値ですが、成人女性の場合で、2 個/週です。
私たちの調査では、成人女性でも、鶏卵は週に 1 個か 2 個しか消化しきれないという結果が出ています。つまり、月曜の朝に目玉焼きを食べたら、その週は、あとはせいぜい、ゆで卵を 1 個しか食べられない、というわけです。一方、現代の栄養学では「鶏卵の栄養成分は理想的だから」といって、毎日摂取するように勧めています。 |
一見矛盾するようですが、必要なアミノ酸の量と、” 自前 ” でタンパク質をアミノ酸にまで分解できる量が大きく異なるためです。伝統的な和食の長所ですが、膵臓の消化酵素の働きに依存しないで、食物酵素、発酵菌や食物繊維の摂取量を増やし、腸内フローラを整えて、消化を助ける必要があります。
炭水化物は、お粥にして完全消化
お腹をこわしたときは「お粥」が重宝されます。
炭水化物は、消化酵素のアミラーゼで、短時間でブドウ糖になります。更に、大根おろしで「お粥」にすると、アミラーゼも要りません。大根おろしの食物繊維は、腸内フローラのエサになります。
膵臓から分泌されるインスリンは、ブドウ糖を細胞に吸収するとき必要です。インスリンを使わない方法は、りんごなど果物を摺り下ろし、果糖と酵素を一緒にして食べる方法があります。適量なら、果物は体に最も優しい食材です。果物の場合はカリウムが多いので、塩分も摂取し、ミネラルバランスを取るのが良い方法です。
消化が良く、腸内の悪玉菌を減らして炎症を鎮め、栄養豊富な「おかゆ」の作り方

材料と測定器
- 酵素:大根おろし
- 補酵素、補助因子:ミネラルとしてキパワーソルトまたは藻塩を推奨
- 加熱:デジタル温度計
- 油脂:ココナッツオイルとえごま油
- たんぱく質:プロティン、きな粉、生卵も可
- 炭水化物:白米、雑穀米、発芽玄米、玄米(24時間以上浸水)
作り方

1.「大根」を切って皮を剥き、「おろし器」でおろします。

大根おろしは、還元力があります。
塩分濃度:0.2~0.3% で、成分にカリウムが多い。

塩分計 0.3%を表示

2.ミネラルを加えます。
写真は、「キパワーソルト」を使用しています。
還元力があり、ミネラルバランスも良い。
塩分濃度:0.5~0.7% になるまで入れます。
味もまろやかになります。

3.点火し、30 秒程度、かき混ぜながら、弱火で温めます。
デジタル温度計で、35℃ になったら火を止めます。
鍋が熱いので、余熱で温度は上がり続け、40℃ になります。
大根おろしは、糖化酵素やたんぱく質分解酵素が豊富ですが、48 度以上にすると、たんぱく質分解酵素が最初に失活します。そのため、45 度以下で温めます。

4.「ココナッツオイル」を、大さじ 1 杯程度、
温めた大根おろしに入れてかき混ぜます。
ココナッツオイルを加えるのは、主成分のラウリン酸を、大根の酵素で、抗菌力のあるモノラウリン酸に分解するため。
分量:大さじ 1 杯(15 グラム)以下

5.「えごま油(またはアマニ油)」を大さじ 1 杯程度、温めた大根おろしに入れてかき混ぜます。
炎症で傷んだ腸の粘膜をオメガ 3 系の「えごま油(またはアマニ油)」で修復。
分量:大さじ 1 杯(15 グラム)以下

6.タンパク質を加えます。
「プロティン」」を大さじ 1 杯程度、または「生たまご」1 個を、温めた大根おろしに入れてかき混ぜます。

7.炭水化物を加えます。
写真は、玄米 + 雑穀米ですが、アレルギーの場合、白米にします。
【引用文献および参考文献】

永田良隆「油を絶てばアトピーはここまで治る」(三笠書房 2006年1月)、p33-35
— 著者紹介 —
1965年鹿児島大学医学部卒業。
鹿児島大学小児科学大学院修了。
下関市立中央病院小児科部長、栄養管理部長。
日本アレルギー学会、日本小児科学会、日本東洋医学会の各専門医。医学博士。
アトピー性皮膚炎をはじめ、各種の難治性アレルギー疾患の根本治療に取り組む。
本書に結実した栄養学的アプローチから、1 万人を超える患者を治癒するなど、多大の実績をあげ、各方面から注目を浴びている。
日本リュウマチ学会賞受賞。
おもな著書に『アトピー性皮膚炎ハンドブック』『アレルギーの人の食事』
『母乳と和食で家中病気知らず』などがある。
公益社団法人 日本伝熱学会 会員 園井 健二さんのその他の記事
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