公益社団法人 日本伝熱学会 会員

園井 健二

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冬近しですが、野生動物は、食料の少ない冬を生き延びるため、秋の収穫物を腹一杯食べて、脂肪細胞に溜め込みます。
この能力が高い程、越冬での生存確率は高くなります。
現在の私たちは、食料の備蓄、衣類や暖房により、余剰の栄養分を 内臓脂肪や皮下脂肪として大量に蓄積する必要性は少なくなっています。
しかし、不足しがちな脂肪酸をしっかり摂取し、冬の寒さに対する備えを したいものです。

どんぐりの栄養素

栄養価に富み、18% が脂肪で、6% がたんぱく質、68% が炭水化物で、ビタミン A、C をはじめアミノ酸を多く含みます。 但し、タンニンやサポニンの成分が多いためにアクが強く、(動物と違って)わたしたちが口にできるようになるまでには 時間と手間を必要とします。
出典:いいJAん! 信州 長野県のおいしい食べ方:どんぐりはわたしたちに大切なものを伝える

体内の脂肪の種類

【体脂肪】 体内の備蓄用脂肪
 皮下脂肪  ・備蓄エネルギー用
 内臓脂肪  ・短時間かつ大量のエネルギー備蓄用
食間、夜間、持久運動時に使用
体内のエネルギー貯蔵量
(基礎代謝量換算)
 糖質  8 時間
 たんぱく質  13 日分
 ★たんぱく質がエネルギーとして 使われる
 のは飢餓時のみです
 脂質  55 日分
【血中脂肪】 血液の中を流れる脂肪
 中性脂肪  ・エネルギーの貯蔵物質 ・血液中に流れている中性脂肪は、余剰な糖分が有る場合、
インスリンにより上記【体脂肪】の脂肪細胞に吸収される
 リン脂質
コレステロール
 ・細胞を形成する細胞膜を作る
細胞膜: 細胞を包んでいる二重の薄い膜   主成分: リン脂質、糖脂質とコレステロール 
・脳や神経を正常に働かせる
リン脂質、アラキドン酸、DHA、EPA など
・体を調整するホルモンと血液の原料となる

出典:大櫛 陽一 著 「糖質オフのレシピ」※1 執筆者による編集(文責:筆者)

食品の油脂に含まれている脂肪酸と多く含まれている食品例

出典:白澤 卓二 監修 「ココナッツオイルでボケずに健康」※4 執筆者による編集(文責:筆者)

中鎖脂肪酸(炭素数 8~12)は、長鎖脂肪酸と異なり、吸収されると、体内ですぐエネルギーになります。

ココナッツオイルには、話題となった美容やアルツハイマー予防効果に比較すると目立ちませんが、抗菌作用もあります。

★ココナッツオイルが、これから本番の”インフルエンザ”に有効な理由

天然の細菌キラー

中鎖脂肪酸は特定の微生物にとっては極めて有害である一方、私たち人間には無害である。・・(略)・・

ほとんどの細菌とウイルスは、脂質二分子膜で覆われている。・・(略)・・だが、私たちの肌が比較的強靱なのと違い、 これらの微生物を包む脂質膜は液状に近い。・・(略)・・脂肪膜で覆われたウイルスや細菌を、中鎖脂肪酸は簡単に 殺すことができる。・・(略)・・中鎖脂肪酸は微生物の膜を構成するものと似ているので、容易に膜に引きつけられ、 吸収される。・・(略)・・もともと液体に近かった膜は弱くなり、・・(略)・・ぱっくりと裂け、中身が流れ出して微生物は 死んでしまう。
出典:ブルース・ファイフ (Bruce Fife) 、三木 直子 訳 「ココナッツオイル健康法」※5

炭素数 18 の脂肪酸が、動植物の代謝で、さまざまに変化します。

オメガ 3 とオメガ 6 脂肪酸の摂取バランス

日本脂質栄養学会や国際脂肪酸・脂質学会では、リノール酸(オメガ 6):α-リノレン酸(オメガ 3)= 約 2:1 を理想の摂取比として推奨しています。しかし、そのためには大幅に食事内容を変える必要があるため、厚生労働省はひとまず 4:1 としています。

 推奨摂取比  理想  現行
 リノール酸 (オメガ 6)  2  4
 α-リノレン酸(オメガ 3)  1  1

出典:守口 徹「えごま油健康法」※2

植物は、全てつくる酵素をもっていて環境に適した比率で生成します。野生の動物も、食べ物が決まっていますから それに応じた代謝もできています。私たちは、進化で失った酵素もあり、雑食で食べ物も急激に変化していますから意識的に、油脂を選ぶ必要があります。

オメガ 3 の脂肪酸を高い比率で含む植物が少ない理由

陸から生まれたリノール酸(オメガ 6)、海から生まれた α-リノレン酸(オメガ 3)
さまざまな動植物の持つ脂質がどのような脂肪酸で構成されているかは、育つ地域や環境、種によっておおよそ決まります。
一般的に、陸上の動植物にはリノール酸のようなオメガ 6 系脂肪酸が多く、海洋の動植物には α-リノレン酸、すなわち、オメガ 3 系脂肪酸が多く含まれているといえます。
例外的に α-リノレン酸を多く含む陸上の植物は、えごまと亜麻仁くらいしか見当たりません。
また、植物はリノール酸を α-リノレン酸に変換する酵素を持っています。つまり、リノール酸を作っていた植物でも、自身が持つ酵素を使えば、α-リノレン酸に変えることができるのです。
出典:守口 徹「えごま油健康法」※2

コーヒーブレーク

秋らしい草花といえばコスモスでしょうか?散歩道の道端にあるコスモスは、秋の始まりから次々と咲き続けてくれています。筆者の近くには古くからの農家も多く、お庭には実のなる木が多く植えられています。美容と健康に良いザクロの果実も実っていました。10 月 11 日には富士山に初冠雪があり、秋の深まりとともに紅葉の季節が到来しています。

新潟県北にある胎内平の紅葉を見に行きました。胎内川の沿道の桜並木が紅葉し美しい風景でした。
胎内のホテルで、久しぶりにコーヒーを頂きましたが、水が良いので、コーヒーの美味しさも変わりません。

【引用文献および参考文献】

大櫛 陽一「糖質オフのレシピ」(成美堂出版 2013年2月)、p30-37
— 著者紹介 —
1971年、大阪大学大学院工学研究科修了。
大阪府立羽曳野病院、大阪府立成人病センター、
大阪府立母子センター、大阪府立病院などを経て、
1988年より東海大学医学部教授。
2012年より東海大学名誉教授。
2006年、日本総合健診医学会シンポジウムで、全国約70万人の
健康診断結果から日本初の男女別・年齢別基準範囲を発表。
著書に、『コレステロールと中性脂肪で、薬は飲むな』(祥伝社新書)、
『100歳まで長生きできるコレステロール革命』(永岡書店)
『間違っていた糖尿病治療』(医学芸術社)など多数。

守口 徹「えごま油健康法」 (アチーブメント出版 2015年9月)、p58-59、p64
— 著者紹介 —
麻布大学 生命・環境科学部食品生命科学科教授
日本脂質栄養学会 副理事長
国際脂質脂肪酸学会 理事
1982年横浜市立大学卒業後、製薬会社の薬理部門に勤務。
国立がんセンター研究所、東京大学薬学部に研究出向後
同大学で博士号を取得し、1997年客員研究員として
米国国立衛生研究所(NIH)で脂肪酸と脳研究に関して研究。
2008年より麻布大学 生命・環境科学部教授に就任、現在に至る。
おもな監修書に 『脳と体に効く油』 (宝島社)、『「油」で健康になる!』
(マガジンハウス)がある。

Dr.クロワッサン「「油」で健康になる!」(マガジンハウス 2014年)
— 著者紹介 —
守口 徹   麻布大学 生命・環境科学部 食品生命科学科教授
青木 絵麻  東京・浅草橋「金田油店」店長
作田 雅子  管理栄養士、公認スポーツ栄養士 調理師
〈 目次 〉
第1章 油についての基本の「き」
第2章 目的別油のシンプルレシピ ひとめでわかる!植物油の目的別一覧表
第3章 植物油ディクショナリー ひとめでわかる!植物油の脂肪酸別一覧表

白澤 卓二 医学監修 「ココナッツオイルでボケずに健康」(主婦の友社 2014年2月)、p14の表1
— 著者紹介—
順天堂大学大学院医学研究科
加齢制御医学講座教授

ブルース・ファイフ (Bruce Fife) 、三木 直子 訳 「ココナッツオイル健康法」(WAVE出版 2014年2月)、p123-125
— 著者紹介—
著述家、講演家、公認栄養士、自然療法医。
『Coconut Cures』『 Coconut Lover’s Cookbook』を含む20冊以上の著書がある。
『Healthy Ways Newsletter』というニュースレターの編集・発行人であり、また、健康・栄養面におけるココナッツの価値について一般に知らしめることを目的として設立されたココナッツ・リサーチセンターの所長でもある。
ココナッツオイルがもつ健康効果に関するさまざまな医学研究を、一般読者にも理解できる、読みやすい形にまとめて発表したのは彼が初めてであり、ココナッツオイルの健康効果を知ることにかけては右に出る者がないとされている。
そのため、「ココナッツ・グル」と呼ばれたり、敬意を込めて彼を「ドクター・ココナッツ」と呼ぶ人も多い。