新川電機株式会社

瀧本 孝治

マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室

各種産業分野で多くの回転機械が使われており、その中でも重要なものに関しては機械の状態、特に振動の定期的な監視や常時監視が行われ、効率的なメンテナンスや異常解析、診断などに利用されています。
今回は、前回説明したセンサの信号を受けて、各監視パラメータに変換、監視するモニタについて説明します。

3.状態監視モニタ

写真3. VM-5シリーズモニタ

状態監視モニタに関してもAPI 670規格の中で振動モニタや軸位置モニタなどに関する詳細な要求事項が示されています。VM-5シリーズモニタ(写真3)やVM-7シリーズモニタ(写真4)は基本的にAPI670規格の要求に沿って設計された監視モニタであり、API670規格で規定された振動や軸位置監視に適用されるのは勿論ですが、vol.1でも述べたように事業用の大型タービン発電機のTSI監視モニタとしても適用されています。

写真4. VM-7シリーズモニタ

状態監視モニタは振動波形や変位、回転パルスなどのセンサからの電圧または電流信号を受け、これらの信号を振動振幅値や軸位置、回転数などの監視パラメータに変換・演算して機械の状態を監視します。

状態監視モニタの主な機能としては、

  1. 監視パラメータへの変換
  2. 測定値の表示
  3. 測定値の出力
  4. 危険/注意警報の検知
  5. 危険/注意警報の表示
  6. 危険/注意警報の出力
  7. 解析のための振動波形のバッファ出力

などがあります。図3に状態監視モニタの主な機能のイメージを示します。また、図4にコンバインドサイクル発電システムのTSI監視としてVM-7シリーズモニタを適用した場合のシステム例を示します。

図3. 監視モニタの機能イメージ

事業用大型タービンのTSI監視システムにおいては、API 670規格でも規定されている振動や軸位置だけでなく表2に示すような偏心や伸び差など特殊な監視パラメータもあります。表2において警報欄に丸印があるものはその監視項目が警報に使われることを示し、遮断に丸印があるものはトリップ接点信号を出力しタービンの停止信号として使わることを示しています。

なお、vol.2で説明した渦電流式変位センサは軸振動計測用センサとしてだけでなく、表2に示す、回転数、偏心、伸び差、軸位置計測用センサとしても使用されます。ケーシング振動には渦電流式変位センサではなく動電型速度センサや圧電型速度センサ、圧電型加速度センサが使用され、回転数には渦電流式変位センサ以外に電磁ピックアップも使用されます。また、伸びと弁開度にはLVDT(差動トランス)が使用されますが、これら渦電流式変位センサ以外のセンサについては別の機会で説明します。

表2. TSIの監視項目
項目 内容 警報 遮断
回転数 タービンの回転数を計測。振動の警報値の切替用接点を出す場合もある。
偏心 軸の偏り(曲がり具合)を測定。タービン起動可否判断の重要な測定項目。
伸び タービンケーシングの熱膨張による伸びを測定。
伸び差 タービンケーシングとタービンロータの相対的な熱膨張差を伸び差として測定。ロータとケーシングの接触事故防止のための重要な測定項目。
振動 タービンの振動を測定。
軸位置 スラストベアリング近傍でロータの軸方向の位置を測定。メタルの接触によるベアリング焼付き事故防止のための重要な測定項目。
弁開度 蒸気加減弁の開度に応じた測定。
軸受温度 軸受部の温度を測定。

通常は状態監視モニタによる各監視項目の表示(VM-7の場合パネルPCを使用)、計測値に対応した電圧または電流信号、および警報接点出力までがTSIの基本的な範囲ですが、近年では振動センサによって得られた振動波形と位相基準信号を基にした位相解析および周波数解析を行い、更にその解析結果より異常診断を行う解析・診断システムまで含めて導入されるケースが多くなってきています。図3の中のRV-200がこれに相当する解析・診断システムですが、その内容については次回説明をします。

図4. TSI タービン監視計器システム構成例

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