2010/03/02 業界コラム 瀧本 孝治 回転機械の状態監視 vol.4 振動解析・診断システム 新川電機株式会社 瀧本 孝治 マーケティング部 ST推進企画...もっと見る マーケティング部 ST推進企画 各種産業分野で多くの回転機械が使われており、その中でも重要なものに関しては機械の状態、特に振動の定期的な監視や常時監視が行われ、効率的なメンテナンスや異常解析、診断などに利用されています。 今回は、振動波形データを用いた大型回転機械の振動解析・診断システムについて説明します。 4.振動解析・診断システム振動解析・異常診断としては、転がり軸受で支持された小型汎用回転機械の軸受振動を据付または可搬型の加速度センサで定期的に計測し、振動値の傾向管理や周波数解析による異常診断が古くから行われていて一般的に良く知られていますが、ここでは主にすべり軸受で支持された大型回転機械の振動解析・診断システムについて説明します。通常これらの大型回転機械は、軸の危険速度を越えて運転される弾性軸(フレキシブルロータ)であり、計測された軸振動波形の周波数解析を行なうだけでなく、1パルス / 1回転の位相基準信号を取り込み、振動波形の位相解析も重要な解析項目の一つとして行われます。 このシステムの基本的な構成要素を図5に示します。ロータ上の1箇所に設けられたキー溝状の切り欠きをロータの機械的な位相基準位置として、ここにvol.2で説明した渦電流式センサを設置することにより1パルス / 1回転の位相基準信号を得ることができます。 軸振動センサは軸受毎にそれぞれ90度の角度を持って2個の軸振動センサが設置されますので、一つのマシントレイン当たり複数の軸振動センサが設置されますが、図5では図を簡単にするため1点のみ描いています。 図5. 解析・診断システムの構成要素概要さて、ここで検出した位相基準信号と振動波形信号はvol.3で説明した状態監視モニタに入力され、回転数や振幅値変換等を行い、振動値が過大となった場合には異常振動の警報を発します。同時に状態監視モニタに入力された信号は、バッファアンプを通してそのまま入力信号と同じ波形を保ったバッファ信号として出力されていますので、通常はこの信号を振動解析に利用します。状態監視モニタから出力されたバッファ信号は解析データ収集装置DAQpodに入力され、DAQpod内部でA/D変換され、位相解析や周波数解析等の演算処理が行なわれます。 これらの解析演算処理されたデータは解析ソフト(アナリシスビュー VM-773)を搭載した解析PCに伝送され、解析PCによりトレンドグラフ、スペクトルグラフ、リサージュ、ボード線図、ポーラ線図など異常解析に必要な描画処理とデータ保存が行なわれます。 図6にRV-200解析・診断システム構成例を示します。ここで示すように、VM-7シリーズ状態監視モニタはモニタラック内に解析モジュールを内蔵することで、DAQpodのような別置きの解析データ収集装置を介さないで、直接Ethernetで解析PCに接続することができます。 図6. RV-200解析・診断システムの構成例図7にRV-200の表示画面例を示します。従来から行なわれている状態監視モニタによる機械の異常監視だけでなく、ここで述べたような解析・診断システムを導入することにより下記に示すような効果が期待されます。 図7. RV-200解析・診断システムの画面表示例振動値(オーバーオール振幅)の監視だけでは分らない異常の検知が可能 定格定速運転時に急激な位相変化を伴うようなロータの異常は、振動振幅値の顕著な増加として現れなかったり、逆にバランスの改善を伴って振幅値の減少として現れる場合がありますが、ベクトル図にエリア警報を設定することで異常検知することが可能となります。 現場各機器の診断ノーハウの蓄積 異常時のデータを単に振動値としてだけでなく、振動波形やスペクトル等の解析データとして残すことができますので、保全要員の五感と経験による診断結果や、さらに機械の分解調査結果を解析データと関連付けて定量化、定性化することで、現場の診断ノーハウとして蓄積することができます。 異常原因の解析診断をサポート 異常発生時に解析システムの診断プログラムにより、振動スペクトルのデータを基にした異常原因推定(異常原因となる可能性の重み付け)を行うことができますので、保全要員や診断技術者の判断のサポートとして活用できます。 専門家へのデータ提示 機械の異常発生時に、社内外の専門家や機械メーカへの波形やスペクトルデータなどの詳細データを提供、共有することができるので、より早く的確な診断が可能となります。 振動の傾向管理によるメンテナンス計画の立案 保全計画の立案、見直しの検討支援としてトレンドデータによる傾向管理を活用することができます。万一計画保全時期の前に異常傾向が現れた場合にも、重大故障に至る前に対応策の検討を行って、その影響を最小限に食い止めることが可能となります。 これまで、4回に渡って大型回転機械の状態監視システムに関して概要を説明いたしました。このようなシステムに馴染みのない方にとっては分りにくい部分も多かったのではないかと思いますが、状態監視システム全体に関して概要をある程度ご理解いただけたのではないかと思います。各センサ、モニタの機種、解析グラフの詳細などについては、また別の機会に説明させていただきます。 本コラム関連製品 infiSYS RV-200infiSYS 3.0Kenjin この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 新川電機株式会社 瀧本 孝治さんのその他の記事 2024/07/09 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 4 ) 2024/07/02 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 3 ) 2024/06/25 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 2 ) 2024/06/17 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 1 ) 2024/02/14 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2023/11/07 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2014/09/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(13)バランス調整 / 不釣合い修正 2014/08/05 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(12)ハイスポットとヘビースポットの位相角 2014/07/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(11)振動ベクトルとポーラ線図 2014/05/13 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(10)同期サンプリングにおける設定 2014/04/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(9)非同期サンプリングにおける設定 2014/03/11 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(8)同期サンプリングと非同期サンプリング 2014/02/12 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(7)データ収集間隔 / データ保存間隔 2014/01/14 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(6)サンプリング周波数 2013/12/10 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(5)位相基準信号(フェーズマーカ) 2013/10/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること 2013/09/03 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(3)軸振動センサのX-Y取付け 2013/08/06 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(2)ターゲット、システムケーブル長 2013/07/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(1)非接触変位センサの精度に関する用語の意味 2013/06/11 業界コラム 振動解析と診断 vol.11 ~ ポータブル振動解析システムKenjin ~ 2013/05/14 業界コラム 振動解析と診断 vol.10 ~ 振動解析診断システムの紹介(5) ~ 2013/04/09 業界コラム 振動解析と診断 vol.9 ~ 振動解析診断システムの紹介(4) ~ 2013/03/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.8 ~ 振動解析診断システムの紹介(3) ~ 2013/02/13 業界コラム 振動解析と診断 vol.7 ~ 振動解析診断システムの紹介(2) ~ 2013/01/16 業界コラム 振動解析と診断 vol.6 ~ 振動解析診断システムの紹介(1) ~ 2012/09/04 業界コラム 振動解析と診断 vol.5~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(2)~ 2012/08/07 業界コラム 振動解析と診断 vol.4 ~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(1)~ 2012/07/10 業界コラム 振動解析と診断 vol.3 ~ オービットとポーラ線図 ~ 2012/06/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.2 ~ 解析グラフ ~ 2012/05/15 業界コラム 振動解析と診断 vol.1 ~ 振動解析の概要 ~ 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月