2012/04/10 業界コラム 瀧本 孝治 状態監視モニタ vol.8 ~ 回転モニタ(その2) ~ 新川電機株式会社 瀧本 孝治 マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室 前回は回転モニタの信号処理の流れと入力センサに関して説明しましたが、今回は振動モニタや変位モニタにはない、回転モニタ特有のパルス整形回路のヒステリシス設定や、オートトリガとマニュアルトリガの違いと特徴等について説明します。 これは回転パルス誤検知を防ぐための基礎知識としても必要な内容であり、回転モニタに限らず、1パルス / 1回転の位相基準を検知するフェーズマーカモジュールや偏心モニタにおいても関係があります。 パルス波形整形回路のヒステリシス回転モニタ内部のパルス波形整形回路では、センサの種類とターゲットの形状等によりさまざまな波形となるセンサからの信号を、例えば、ローレベル0Vとハイレベル5Vのきれいなパルスに整形しています。 このパルス波形整形回路では、図12のようなON(5V)、OFF(0V)の判断処理が行われています。入力信号がトリガレベル設定電圧より高い時はONに、トリガレベル設定電圧より低い時はOFFにしてパルスを整形しますが、このトリガレベルに幅を持たせて、整形パルスをONにする入力電圧とOFFにする入力電圧に差を持たせるようにしています。この幅のことをパルス波形整形回路のヒステリシスと呼びます。 図12. 入力波形信号と整形パルス図13に示すように、このヒステリシスにより、入力信号に乗ったノイズや大きな波形歪による誤検知をある程度防ぐことができます。 ただし、入力信号の振幅よりヒステリシスが大きくなったり、図14のような設定になってしまうとパルスが検知されなくなりますので注意が必要です。 図13. パルス波形整形回路のヒステリシス拡大による誤パルス抑制図14. 不適切なトリガ設定状態また、回転モニタにはもうひとつのヒステリシスである「スピードリレーヒステリシス」がありますので混同しないように注意が必要です。 これは図15に示すように、回転モニタの警報接点出力であるスピードリレーが自動復帰モードの場合に、回転数がスピードリレー設定値付近で上下を繰り返した場合の接点のチャタリングを防ぐための機能で、VM-5SやVM-703Bではそれぞれのスピードリレー設定値に対して、0~100rpmの範囲でスピードリレーヒステリシスを設定することができます。 (a) オーバースピード設定 (b) アンダースピード設定 図15. スピードリレーヒステリシス オートトリガとマニュアルトリガトリガレベルとは、上記の説明でも出ていますが、モニタの入力電圧がトリガレベルより高い時は出力をON、[トリガレベル] – [ヒステリシス]より低い時はOFFとしてパルスを整形するための比較基準電圧となるものです。 回転モニタには、トリガ方式の選択として「オートトリガ」と「マニュアルトリガ」があり、それぞれに特徴がありますので、パルス誤検知を防いで正しく計測するためには、個々のアプリケーションに応じて適切に選択する必要があります。それぞれの特徴を表5に示します。 通常の回転数計測であればほとんどの場合オートトリガで問題ありませんが、入力波形の周波数が非常に低くなるゼロスピード検知やパルス状波形入力のデューティ比が10%未満(または90%を超える値)となるような1パルス / 1回転の位相基準信号検知(フェーズマーカ)などの場合にはマニュアルトリガによる設定が必要となります。 表5. オートトリガとマニュアルトリガの比較 オートトリガ マニュアルトリガ トリガレベル 自動的に入力波形のピーク値とボトム値を検知して、その中央にトリガレベルを自動設定します。 手動でトリガ電圧を設定し、その値は固定されます。 特徴 FKなど、渦電流センサ入力において、運転中にギャップが変わるような場合でも、トリガレベルは波形の中央になるよう自動追従します。 面倒なトリガレベルの設定が不要です。 入力波形の繰返し周波数が非常に低くなっても、トリガレベルは一定値であり、極低速回転まで検知可能です。 注意点 入力波形の繰返し周波数が低く(1Hz未満)なると追従できなくなります。 実運転前に、一度対象の機械を低回転から定格回転まで試運転して、センサの出力波形を観測し、全ての回転域でパルス検知できる値にトリガレベルを設定しておく必要があります。 適用アプリケーション 通常の回転数計測 オーバースピード検知 ゼロスピード検知 フェーズマーカ 偏心計のパルス入力 回転モニタのその他の機能回転モニタには、回転数の計測だけでなく下記のような機能もあります。 回転加速度計測 回転数(回転速度)の時間的変化、つまり回転数(回転速度)を微分した値を回転加速度として計測します。 単位はrpm/minで表し、加速中はプラス、減速中はマイナスになります。 逆転検知(リバースローテーション) ひとつの回転パルス検出用歯車に対して、2個の渦電流式変位センサを取り付けますが、この時、2つのセンサで検出する回転パルスの位相差が90度(または270度)となるようにセンサ間の角度を設定します。(この角度は回転パルス検出用歯車の歯数により変わります。) このように設定することで、2つのセンサで検出する回転パルスの位相差により回転方向を検知することができます。ポンプの逆転検知などに適用されます。 VM-7モニタの場合、ひとつの機種(VM-703B回転&偏心モニタモジュール)で回転数計測だけでなく、回転加速度計測と逆転検知機能も含まれますが、VM-5モニタの場合は、通常の回転モニタがVM-5S、回転加速度計測用がVM-5R、逆転検知用がVM-5Qというように機種が分かれています。 本コラム関連製品 VM-5シリーズVM-7シリーズFKシリーズMSシリーズ この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 新川電機株式会社 瀧本 孝治さんのその他の記事 2024/07/09 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 4 ) 2024/07/02 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 3 ) 2024/06/25 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 2 ) 2024/06/17 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 1 ) 2024/02/14 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2023/11/07 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2014/09/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(13)バランス調整 / 不釣合い修正 2014/08/05 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(12)ハイスポットとヘビースポットの位相角 2014/07/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(11)振動ベクトルとポーラ線図 2014/05/13 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(10)同期サンプリングにおける設定 2014/04/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(9)非同期サンプリングにおける設定 2014/03/11 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(8)同期サンプリングと非同期サンプリング 2014/02/12 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(7)データ収集間隔 / データ保存間隔 2014/01/14 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(6)サンプリング周波数 2013/12/10 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(5)位相基準信号(フェーズマーカ) 2013/10/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること 2013/09/03 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(3)軸振動センサのX-Y取付け 2013/08/06 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(2)ターゲット、システムケーブル長 2013/07/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(1)非接触変位センサの精度に関する用語の意味 2013/06/11 業界コラム 振動解析と診断 vol.11 ~ ポータブル振動解析システムKenjin ~ 2013/05/14 業界コラム 振動解析と診断 vol.10 ~ 振動解析診断システムの紹介(5) ~ 2013/04/09 業界コラム 振動解析と診断 vol.9 ~ 振動解析診断システムの紹介(4) ~ 2013/03/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.8 ~ 振動解析診断システムの紹介(3) ~ 2013/02/13 業界コラム 振動解析と診断 vol.7 ~ 振動解析診断システムの紹介(2) ~ 2013/01/16 業界コラム 振動解析と診断 vol.6 ~ 振動解析診断システムの紹介(1) ~ 2012/09/04 業界コラム 振動解析と診断 vol.5~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(2)~ 2012/08/07 業界コラム 振動解析と診断 vol.4 ~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(1)~ 2012/07/10 業界コラム 振動解析と診断 vol.3 ~ オービットとポーラ線図 ~ 2012/06/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.2 ~ 解析グラフ ~ 2012/05/15 業界コラム 振動解析と診断 vol.1 ~ 振動解析の概要 ~ 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月