2012/03/13 業界コラム 瀧本 孝治 状態監視モニタ vol.7 ~ 回転モニタ(その1) ~ 新川電機株式会社 瀧本 孝治 マーケティング部 ST製品企画室...もっと見る マーケティング部 ST製品企画室 これまで回転機械の状態監視モニタとして、振動、スラスト、偏心、伸び差に関して説明してきましたが、今回は回転数を計測する回転モニタについて説明します。 信号処理の流れ信号処理の流れ回転モニタにおいて、回転数に比例した周波数のパルス状信号入力を受けて、回転数に変換するまでの信号処理の流れを図11で説明します。なお、回転モニタでは回転数の上限 / 下限それぞれに対して注意警報と危険警報を設定できますが、図11では回転数に比例したレコーダ出力までの流れを示し、警報や指示の部分については割愛しています。 回転モニタに入力される信号は「回転数に比例した周波数のパルス状」と書きましたが、これはセンサの種類とターゲットの形状などによって変わります。通常、完全な矩形のパルス波形ではなく、正弦波に近い形状のものから矩形の角が取れたような形状のひずみ波形になります。そこで、入力された波形は図11の①に示すトリガ回路と②③に示す波形整形回路を通してきれいなパルス波形に整形しています。 この波形整形回路③の出力である整形されたパルス信号は、回転数演算処理部④に入力され、回転数への変換処理が行われます。回転数演算処理部では、一定のゲート時間内に入ってきたパルスの数と最初のパルスから最後のパルスまでの時間を計測して、パルスの平均周期t(s)を演算します。なお、ゲート時間内のパルス数が1個以下の場合にはパルス1間隔毎のパルス周期t(s)を計測することとなります。 ここで演算されたパルス周期t(s)は、パルス周波数f(Hz)の逆数であり、回転数検知歯車の歯数をN、回転数をR(rpm)とすると、R = (60×f) / N = 60 / (t×N)の関係から回転数が演算されます。 図11の⑤に示す入力異常判別部分は他のモニタと基本的に同じで、入力信号の直流成分がある範囲を逸脱した場合に入力異常として判断しています。この入力異常警報設定値はセンサの種類によって異なります。 入力異常状態となった場合には⑥の信号制御によりアナログ出力は抑制されますが、入力異常がないと判別されている状態では、④の回転数演算処理部で演算された結果がレコーダ出力として出力されると同時に、表示や警報比較に使われます。 図11. 回転モニタの信号処理の流れ入力センサの種類回転モニタの入力センサとしては、2011年2月号および2011年3月号の「回転パルス検出センサと位相基準センサ」で取り上げた、渦電流式変位センサ(FK-202F、RD-05A)や電磁ピックアップ(MSシリーズ)が適用されます。 回転パルス検出用センサとして適用する場合の渦電流式変位センサと電磁ピックアップのそれぞれの特徴、比較に関しては表4を参照ください。 表1. 回転パルス検出における渦電流センサと電磁ピックアップの比較 機種 渦電流センサ (FK-202F) 電磁ピックアップ (MSシリーズ) イメージ 原理 センサは空芯のコイルから成る。 ドライバからMHzオーダの高周波電流をセンサに供給、センサより高周波磁界を発生する。この磁束によりターゲットの金属表面に渦電流を発生するが、その距離(ギャップ)によりセンサのインピーダンスが変化することを利用して、距離(ギャップ)に比例した電圧を出力する。 ピックアップは検出コイルとポールピースとマグネットから構成される。 検出歯車の回転に対応してピックアップと歯車との距離(ギャップ)が連続的に繰り返し変化し、検出コイルを貫通する磁束が繰り返し変化する。これにより検出コイルに誘導起電力が発生する。 ターゲット 金属製の矩形歯車 鉄製(磁性体)のインボリュート歯車 特徴 低速から高速回転まで安定して検知 回転数が変化しても振幅が一定 電源が不要 構造が単純 注意点 インボリュート歯車は渦電流センサ用の回転パルス検出歯車としては不適当。 インボリュート歯車でもモジュール数にもよりある程度の出力電圧(振幅)は得られるが、安定した回転パルス検知用としては推奨されない。 インボリュート以外の歯形では注意が必要。特に矩形歯車では出力波形が減衰振動を生じ、モニタでの回転数誤検知の原因となる。 1回転に1箇所だけの突起やキー溝状ターゲットを検知する位相基準センサとしては不適当。 出力電圧(振幅値)はセットギャップと回転数の影響を受ける。 低速回転になると十分な出力電圧(振幅)が得られなくなるため、低速回転数計測やゼロスピード検知用センサとしては不適当。 用途 オーバースピード検知用 一般の回転数計測用 (低速~高速回転まで可能) ゼロスピード検知用 位相基準検知用 (フェーズマーカ) オーバースピード検知用 一般の回転数計測用 (低速回転不可) ここでそれぞれのセンサに関して、上記の「信号処理の流れ」で述べた入力異常判別について説明します。 表1. 回転パルス検出における渦電流センサと電磁ピックアップの比較 機種 渦電流センサ (FK-202F) 電磁ピックアップ (MSシリーズ) イメージ 原理 センサは空芯のコイルから成る。 ドライバからMHzオーダの高周波電流をセンサに供給、センサより高周波磁界を発生する。この磁束によりターゲットの金属表面に渦電流を発生するが、その距離(ギャップ)によりセンサのインピーダンスが変化することを利用して、距離(ギャップ)に比例した電圧を出力する。 ピックアップは検出コイルとポールピースとマグネットから構成される。 検出歯車の回転に対応してピックアップと歯車との距離(ギャップ)が連続的に繰り返し変化し、検出コイルを貫通する磁束が繰り返し変化する。これにより検出コイルに誘導起電力が発生する。 ターゲット 金属製の矩形歯車 鉄製(磁性体)のインボリュート歯車 特徴 低速から高速回転まで安定して検知 回転数が変化しても振幅が一定 電源が不要 構造が単純 注意点 インボリュート歯車は渦電流センサ用の回転パルス検出歯車としては不適当。 インボリュート歯車でもモジュール数にもよりある程度の出力電圧(振幅)は得られるが、安定した回転パルス検知用としては推奨されない。 インボリュート以外の歯形では注意が必要。特に矩形歯車では出力波形が減衰振動を生じ、モニタでの回転数誤検知の原因となる。 1回転に1箇所だけの突起やキー溝状ターゲットを検知する位相基準センサとしては不適当。 出力電圧(振幅値)はセットギャップと回転数の影響を受ける。 低速回転になると十分な出力電圧(振幅)が得られなくなるため、低速回転数計測やゼロスピード検知用センサとしては不適当。 用途 オーバースピード検知用 一般の回転数計測用 (低速~高速回転まで可能) ゼロスピード検知用 位相基準検知用 (フェーズマーカ) オーバースピード検知用 一般の回転数計測用 (低速回転不可) ここでそれぞれのセンサに関して、上記の「信号処理の流れ」で述べた入力異常判別について説明します。 本コラム関連製品 VM-5シリーズVM-7シリーズFKシリーズMSシリーズ この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 新川電機株式会社 瀧本 孝治さんのその他の記事 2024/07/09 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 4 ) 2024/07/02 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 3 ) 2024/06/25 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 2 ) 2024/06/17 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 1 ) 2024/02/14 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2023/11/07 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2014/09/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(13)バランス調整 / 不釣合い修正 2014/08/05 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(12)ハイスポットとヘビースポットの位相角 2014/07/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(11)振動ベクトルとポーラ線図 2014/05/13 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(10)同期サンプリングにおける設定 2014/04/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(9)非同期サンプリングにおける設定 2014/03/11 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(8)同期サンプリングと非同期サンプリング 2014/02/12 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(7)データ収集間隔 / データ保存間隔 2014/01/14 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(6)サンプリング周波数 2013/12/10 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(5)位相基準信号(フェーズマーカ) 2013/10/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること 2013/09/03 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(3)軸振動センサのX-Y取付け 2013/08/06 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(2)ターゲット、システムケーブル長 2013/07/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(1)非接触変位センサの精度に関する用語の意味 2013/06/11 業界コラム 振動解析と診断 vol.11 ~ ポータブル振動解析システムKenjin ~ 2013/05/14 業界コラム 振動解析と診断 vol.10 ~ 振動解析診断システムの紹介(5) ~ 2013/04/09 業界コラム 振動解析と診断 vol.9 ~ 振動解析診断システムの紹介(4) ~ 2013/03/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.8 ~ 振動解析診断システムの紹介(3) ~ 2013/02/13 業界コラム 振動解析と診断 vol.7 ~ 振動解析診断システムの紹介(2) ~ 2013/01/16 業界コラム 振動解析と診断 vol.6 ~ 振動解析診断システムの紹介(1) ~ 2012/09/04 業界コラム 振動解析と診断 vol.5~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(2)~ 2012/08/07 業界コラム 振動解析と診断 vol.4 ~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(1)~ 2012/07/10 業界コラム 振動解析と診断 vol.3 ~ オービットとポーラ線図 ~ 2012/06/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.2 ~ 解析グラフ ~ 2012/05/15 業界コラム 振動解析と診断 vol.1 ~ 振動解析の概要 ~ 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月