2010/09/07 業界コラム 瀧本 孝治 ISO規格に基づく振動診断技術者の認証制度 vol.2 ~ 認証制度のもたらすメリット ~ 新川電機株式会社 瀧本 孝治 マーケティング部 ST推進企画...もっと見る マーケティング部 ST推進企画 ISO規格に基づく認証制度というと多くの方がISO 9000(品質管理システム)やISO 14000(環境管理システム)などのような企業・団体を対象とした認証制度をイメージされるのではないでしょうか。しかし今回は、機械状態監視診断技術者という個人の技術レベルを認証する制度について紹介します。 3.資格認証制度のもたらすメリット上記の資格認証試験に合格すると、日本機械学会より和英併記された証書と認証カードを授与されます。さて、この認証制度および技術者個々に与えられる認証はどのような意味を持つのでしょうか。 一つには、設備機械の状態監視を目的とした振動計測がアウトソーシングされる傾向にあること、もう一つには、産業のグローバル化とそれに伴う振動診断技術者の国際対応と国際競争があると思います。これらに対応してゆくには、振動診断技術者の技術レベルを評価・証明することが求められますが、その手段としてこの認証を利用することができると考えられます。また、この資格認証制度はISO国際規格に基づいて運営されているため、海外においても国内と同様に技術レベルを評価される資格認証であることも重要なポイントです。 また、技術者個人にとっては、現場経験により学習してきた技術、知識に頼るだけでなく(勿論、現場経験はより深い技術レベルの習得にとって非常に有効でかつ重要なことですが、担当した機械の種類や事象に偏った知識となる傾向も考えられます。)、体系立てて機械の振動監視診断技術を学ぶことができるため、より幅の広い視点を持った技術、知識を身に付けることができるというメリットがあります。 認証を取得する技術者にとっては、社会的に認証取得していることが評価される、または必要とされるということも重要な要素となりますが、その一例として電気技術指針原子力編における具体例を示します。日本電気協会原子力規格委員会により2007年12月に制定(2008年6月発行)されたJEAG 4221-2007「原子力発電所の設備診断に関する技術指針 – 回転機械振動診断技術」の中で、「第5章 力量要件」として測定者と評価者それぞれの力量要件が記載されており、その中でISO機械状態監視診断技術者(振動)の資格認証者に関して下記の通り記述されています。 測定者の力量要件 ISO機械状態監視診断技術者(振動)カテゴリーⅠ以上又は機械保全技能士(設備診断作業)二級以上の資格を保有する者は、適切な力量要件を満たしているものとみなしてよい。 評価者の力量要件 ISO機械状態監視診断技術者(振動)カテゴリーⅡ以上又は機械保全技能士(設備診断作業)一級以上の資格を保有する者は、適切な力量要件を満たしているものとみなしてよい。 この電気技術指針の例は、振動診断技術者が業務に携わるための力量・資格要件を明文化したものの第一歩に相当するものかもしれませんが、このような業務にあたって振動診断技術者に資格保有者であることを求める傾向は原子力発電所以外にも広がっていくものと考えられます。自動車を運転するためには自動車運転免許証が必要なように、将来はISO機械状態監視診断技術者(振動)の認証カードが、振動計測や振動解析・診断を行うための免許証としての役割を持つようになるかもしれません。 4.海外の認証機関との相互承認前項でも触れた通り、この資格認証制度は国際規格であるISO 18436-2規格に基づいて運営されているため、国際的に通用する資格認証であると同時に、海外の資格認証機関、認定訓練機関においても同等レベルの訓練の実施と、同等レベルの能力を有する技術者に資格認証が与えられるものであるといえます。したがって、国内に限らず海外においてもこの訓練制度に基づいて日本機械学会が発行する資格認証カードを提示することで、各カテゴリー相当の能力を有する振動診断技術者であることを示すものとなります。これをより強固なものとしてグローバル化を推し進めるため、日本機械学会では米国のVI(Vibration Institute)、カナダのCMVA(Canadian Machinery Vibration Association)、韓国のKSNVE(Korean Society for Noise and Vibration Engineering)など海外の認証機関との相互認証契約を締結しています。 前回のコラムでも紹介しましたが、今年度2回目の資格認証試験が2010年11月20日(土)に行なわれます。カテゴリーⅣのセミナー受講申し込みはすでに締め切られていますが、カテゴリーⅠ~Ⅲのセミナー申し込みは9月17日まで受け付けていますので、コラムを読んで興味を持たれた方は今すぐ「第14回 振動診断技術セミナーのご案内」のページにアクセスしていただくか、新川センサテクノロジの教育訓練事業グループにお問合せください。 なお、初めての方が、カテゴリーⅠから受講すべきか、カテゴリーⅡから受講すべきか迷われた場合には、表4の受講判断基準を一つの目安としてみてください。 ※ 本コラムの内容は社団法人日本機械学会のホームページおよびD&D2006基調講演(「機械の状態監視と診断に関するISO規格関係の話題」ISO / TC108 / SC5国内検討委員会主査 株式会社東芝 榊田氏)の内容、および該当する規格、技術指針を参考にしています。 表4. 受講判断基準 No. 質問 回答欄 (該当するものに○印をご記入下さい。) 1 機器のメンテナンス業務を行なったことがありますか? (a) 全く経験がない。 (b) 付帯的な業務として経験がある。 (c) 本来の業務として経験がある。 2 機器のメンテナンス業務に於ける振動監視の重要性についてご存じですか? (a) 知らない。 (b) 聞いたことはある。 (c) 重要性を認識している。 3 機器の振動について学習したことがありますか? (a) 学んだことがない。 (b) 振動の概念は学んだことがある。 (c) 数学的な取り扱いまで学んだことがある。 4 振動を測定する計測器をご存じですか? (a) 全く知らない。 (b) ある程度知っている。 (c) どのような種類があるかまで知っている。 5 機器の振動測定を行なったことがありますか? (a) 全く経験がない。 (b) データの読み取りをしたことがある。 (c) 振動測定機器を取り扱ったことがある。 6 機器の振動解析を行なったことがありますか? (a) 全く経験がない。 (b) 振動解析結果を見たことはある。 (c) 振動解析機器を取り扱ったことがある。 7 機器の振動異常現象についてご存じですか? (a) 知らない。 (b) 聞いたことはある。 (c) 振動異常現象について知識がある。 8 機器の振動対策についてご存じですか? (a) 知らない。 (b) 聞いたことはある。 (c) 振動対策を行なったことがある。 9 機器の振動設計についてご存じですか? (a) 知らない。 (b) 振動設計の概要は聞いたことがある。 (c) 振動設計を行なったことがある。 10 振動監視を中心としたメンテナンス業務についてどう思われますか? (a) 良く分からない。 (b) やってみたい。 (c) 経験がある。 11 振動監視を中心としたメンテナンス業務を監督する立場についてどう思われますか? (a) 良く分からない。 (b) やってみたい。 (c) 経験がある。 12 振動監視を中心としたメンテナンス業務を計画すると共に対策処理を実施する業務についてどう思われますか? (a) 良く分からない。 (b) やってみたい。 (c) 経験がある。 【配点 a:0点、b:1点、c:2点】 【判定】 総合計 振動診断技術セミナー受講の目安 3点以下 セミナー受講に対して事前の準備が必要と思われます。 4点~9点 カテゴリーⅠを受けて頂くのが適切と思われます。 10点~19点 カテゴリーⅡを受けて頂くのが適切と思われます。 20点以上 カテゴリーⅢ以上を受けて頂くのが適切と思われます。※ ※カテゴリーⅢならびにカテゴリⅣについては、下位カテゴリーの有資格者でなければ受講できません。 セミナーに関するお問い合わせ 【 認定訓練機関 】 新川センサテクノロジ株式会社 教育訓練事業グループ TEL:082-429-1142 (直通) FAX:082-429-0804 E-mail:seminar@sst.shinkawa.co.jp この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 新川電機株式会社 瀧本 孝治さんのその他の記事 2024/07/09 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 4 ) 2024/07/02 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 3 ) 2024/06/25 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 2 ) 2024/06/17 業界コラム 回転機械の振動と状態監視 ( その 1 ) 2024/02/14 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2023/11/07 業界コラム 渦電流式変位センサの原理と特徴 2014/09/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(13)バランス調整 / 不釣合い修正 2014/08/05 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(12)ハイスポットとヘビースポットの位相角 2014/07/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(11)振動ベクトルとポーラ線図 2014/05/13 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(10)同期サンプリングにおける設定 2014/04/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(9)非同期サンプリングにおける設定 2014/03/11 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(8)同期サンプリングと非同期サンプリング 2014/02/12 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(7)データ収集間隔 / データ保存間隔 2014/01/14 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(6)サンプリング周波数 2013/12/10 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(5)位相基準信号(フェーズマーカ) 2013/10/08 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること 2013/09/03 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(3)軸振動センサのX-Y取付け 2013/08/06 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(2)ターゲット、システムケーブル長 2013/07/09 業界コラム 分かりにくい用語とその意味(1)非接触変位センサの精度に関する用語の意味 2013/06/11 業界コラム 振動解析と診断 vol.11 ~ ポータブル振動解析システムKenjin ~ 2013/05/14 業界コラム 振動解析と診断 vol.10 ~ 振動解析診断システムの紹介(5) ~ 2013/04/09 業界コラム 振動解析と診断 vol.9 ~ 振動解析診断システムの紹介(4) ~ 2013/03/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.8 ~ 振動解析診断システムの紹介(3) ~ 2013/02/13 業界コラム 振動解析と診断 vol.7 ~ 振動解析診断システムの紹介(2) ~ 2013/01/16 業界コラム 振動解析と診断 vol.6 ~ 振動解析診断システムの紹介(1) ~ 2012/09/04 業界コラム 振動解析と診断 vol.5~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(2)~ 2012/08/07 業界コラム 振動解析と診断 vol.4 ~ ロータキットによる異常発生時の解析事例(1)~ 2012/07/10 業界コラム 振動解析と診断 vol.3 ~ オービットとポーラ線図 ~ 2012/06/12 業界コラム 振動解析と診断 vol.2 ~ 解析グラフ ~ 2012/05/15 業界コラム 振動解析と診断 vol.1 ~ 振動解析の概要 ~ 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月