株式会社新興技術研究所 熊谷会長様のご好意による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」の 16 回目です。前号に引き続き「W・T・MACS の他の要素群」から「センサによる代替特性検出」(その1)を紹介します。
2 巧妙性実現の手段群(13)
2-3 W・T・MACS の他の要素群
[ S ]センサによる代替特性検出(その 1)
最後にセンサを考えてみましょう。
図 1-17(a)ではセンサの入力を「物理現象」と置いてあります。

重さが軽いことを検出する重量センサ、色が赤いことを計測する色彩センサ、ワークが存在することを検出する光電センサ、風が吹いたことを計測する風力センサ、などいろいろなセンサがあり、ほとんどすべての物理現象はセンサで検出できます。
ただしその検出内容にオンオフ型と計測型の2種類があります。
オンオフ型
リミットスイッチ、磁気スイッチ、リードスイッチ、光電スイッチなど、対象物を検出した時オン、(またはオフ)の信号を出力するもの
計測型
ロータリエンコーダ、ポテンショメータ、タコジェネレータ、マグネスケールなど、対象物の状態によって計量値を出力するもの
この 2 種類の基本的な違いは、対象物の位置を検出する場合の例で言えば、対象物がセンサから「遠いか・近いか」が、わかるか、わからないか、ということです。
オンオフ型センサでは、対象物がすぐそばにいても、ずっと遠くにいてもセンサは全くわかりません。例えばリミットスイッチの場合、ドグが操作ボタンを押した瞬間に「来た!」とわかるだけなのです。したがって、来た瞬間に止めるために瞬時停止できるような低速で駆動しなければならないこともあります。
それに対して計測型センサでは、例えば距離を測っていますから、「まだ遠い」「だいぶ近づいた」「来た」というように値が変化します。したがって「まだ遠いから速度を上げよう」とか「近づいたからスローダウンしよう」ということができるのです。
以下いくつかのセンサについて簡単に解説することにします。
オンオフ型センサ
( 1 )リミットスイッチ:部材の駆動による接触通電動作 を入力とするセンサ

図からわかるように通常は接点金属が上側の接片に接触しているので電流は左の C 端子から右の NC 端子に通じているが、操作ボタンを押すと導電材バネがパチンと逆反りして接点金属を下側の接片に押しつけるので、電流は中央の NO 端子に通じて、NC 端子は OFF となる。その時パチンとスナップアクションすることで、接触不良やチャタリングを防いでいる。
( 2 )リードスイッチ / 磁気スイッチ:磁性体の移動による磁力線の変化 を入力とするセンサ

シリンダのピストン位置の検出や装置の可動部の位置検出用磁気スイッチに用いる。 リードと呼ばれる金属片を磁気で接触させる構造で、対象物を非接触で検出できる。


( 3 )光電スイッチ
[ A ] 透過型光電スイッチ:対象物による光線の遮断を入力とするセンサ

透過型光電スイッチは、対象物が投光器・受光器の間に来ると光電スイッチが検出する。
対象物が光を遮り暗くなって受光器がオンする「Dark ON」と対象物が除かれて明るくなって受光器がオンする「Light ON」と設定変更できる。
また「どれだけ光が減ればオン(オフ)する」かを感度調節で設定できる。
[ B ] 反射型光電スイッチ:対象物による反射光を入力とするセンサ

反射型光電スイッチは、投光器・受光器が一体となっていて対象物が来るとその反射光を検出する。
対象物の反射光で明るくなって受光器がオンする
「Light ON」と
対象物が除かれて反射光がなく暗くなって受光器がオンする「Dark ON」と設定変更できる。
また感度調節で対象物が「どれだけ近づけばオン(オフ)するか」を設定できる。

下図のように投受光を光ファイバで細くして至近距離の小型対象物検出用にしたファイバ型光電センサもある。
ちょっと注意を:
ここで注意することは、A 透過型と B 反射型とで、「Dark On」と「Light On」とが逆になることです。 ごく簡単な例としてべルトコンベア上のワークが光電センサの位置まで来たらコンベアを止めることを考えてみます。

Y10 をベルトコンベアのモータ駆動信号とすると、いずれの場合もスタート信号でベルトコンベアが走り始め、ワークがセンサまで来ると光電スイッチが働いて Y10 の出力がオフになり、ベルトコンベアは停止します。他のユニットによってワークが取り去られると再び Y10 がオンしてモータが駆動されるわけです。

この場合、図 2-36(AA,BB)に示すように、回路図中の接点を AA の場合 NO に、BB の場合 NC に、と使い分ける必要があるので注意が必要です。
計測型センサ
( 4 )ロータリエンコーダ:軸の回転による光線のオン・オフ を入力とするセンサ

2 組の投受光セットがあり、回転軸に取付けた円盤の外周に開けた穴(或いは透明円板に印刷したバーコードのような印刷パターン)を通して、それぞれ a 相 b 相として受光素子がパルス信号を出力する。発生パルスの数を数えて現在位置を取得する。
穴間隔に対して投受光セットの設置間隔をずらすことで回転方向の判定もできる。(ゼロ相は基準位置)
円周から何層かの 2 進法の印刷パターンを作って常に原位置からの角度の絶対値を出力するアブソリュートエンコーダもある。
( 5 )ポテンショメータ:軸の回転による電気抵抗値の変化 を入力とするセンサ

図 A
一種の可変抵抗器で、A-B 端子間に例えば 10V の電圧を掛けておいて入力軸を回転するとスライダの位置によって C 端子の電圧が変わるので回転角が検出できる。
図のものは入力軸にゴムローラを付けてあり、これを他の稼働中の機構に接触して移動量を検出する。

図 B
スライダは連続回転できるので、360° 以上回転すると下図(b)の様に 10V から一瞬で 0V に移るため、長距離の移動量計測は鋸歯状のデータとなる。
また、ポテンショメータの出力はアナログの電圧値なので、コンピュータに取り込むには A/D 変換ボードを経由する必要がある。
ポテンショメータと光電センサを組み合わせた計測装置の例

図 2-39 の装置では光電センサのオンオフ出力とポテンショメータのアナログ出力とがディジタルデータとしてコンピュータに取り込まれます。
ベルトコンベアは常時駆動されていて、対象物が光電センサ(反射型)の下を通過することで光電センサがオンするので、オンした瞬間とオフした瞬間とのポテンショメータのデータを記録すればその時間だけのベルトの走行量がわかるので、対象物の長さが計測できるのです。
もちろんポテンショメータの代わりにロータリエンコーダを用いても同様のことができます。
次回は、代替特性検出による信頼性向上について説明します。
株式会社新興技術研究所 熊谷 卓 による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」は、クリエイティブ・コモンズ
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