2016/02/09 業界コラム 熊谷 卓 2 巧妙性実現の手段群(11) 株式会社 新興技術研究所 取締役会長 熊谷 卓 1955年03月 東京大学工学部精密工学科卒業...もっと見る 1955年03月 東京大学工学部精密工学科卒業 1955年04月 マミヤ光機株式会社入社 1962年11月 技術士国家試験合格・機械部門技術士登録 1963年03月 株式会社 新興技術研究所設立 代表取締役就任、現在 同社取締役会長(業務内容:自動組立機をはじめ各種自動化設備機器等の開発・製作・技術指導) 【歴任】 米国・欧州自動化技術視察団コーディネータ 8 回 自動化推進協会 理事・副会長 精密工学会 自動組立専門委員会 常任幹事 日本技術士会 理事・機械部会長 中小企業大学校講師 日本産業用ロボット工業会 各種委員 神奈川大学講師 自動化推進協会理事 高度職業能力開発促進センター講師 等を歴任 【業績】 著書 自動化機構300選(日刊工業新聞社)、メカトロニクス技術認定試験教本(工業調査会)ほか多数 講演 アジア生産性機構講演で自動化システムを W・T・MACS で表示・解析を提示(世界初)ほか多数 論文 自動化システムのデバッギング理論「チェック機構と最適稼働率」が欧州年間論文大賞にノミネイトほか多数 発明 メカトロニクス技術実習モジュールの発明、地震予知システム「逆ラジオ」の発明ほか多数 株式会社新興技術研究所 熊谷会長様のご好意による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」の14回目です。前号に引き続き「W・T・MACSの他の要素群」から「制御回路の構成・1類、2類、3類」を紹介します。 2-3 W・T・MACS の他の要素群 制御回路の構成・1 類、2 類、3 類(その 1)さてもう一度、図1-14自動化の要素の「Cコントローラ」の箱の中身を見てください。 ここにある、いろいろな種類のコントローラはすべてコントローラのハードウエアつまり機材です。 したがってそれぞれの機材には、必要なソフトウエア(或いはプログラム)が組み込まれていなければなりません。例えばプログラマブルシーケンサ、いわゆるPLCを買ってきても、これにプログラムを打込まなければ、ただの箱にすぎません。同様にリレーを買ってきても、複数のリレーを配線で接続してプログラムを構成しなければ何の働きもしません。 逆に言うと、いろいろなハードウエアであっても、組み込むプログラムによって、全く同じ制御動作をさせることができると考えてよいのです。 当然のことながらコントローラの目的は、アクチュエータとメカニズムを介してツール(T)を目的どおりの動作特性で動かすことにあります。 そこでツールの動作から考えてみると、複合化した自動化システムの動作でも、全体の80%近くが3種類の基本動作の組み合わせであることに気が付きます。 以下、簡単にその内容を紹介しておきます。 3種類の基本動作とは、 制御回路1類: 単純走行(スタートスイッチ・オンで走行開始→オフで停止) 制御回路2類: 単純1往復(スタート信号で前進→前進端センサ信号で後退、原点で停止) 制御回路3類: 前進→信号待ち→後退(スタート信号で前進→前進端センサ信号で中間停止→ 中間スタート信号で後退、原点で停止) です。 なお、これらの回路はコンピュータのプログラムでも、電子回路のロジックでも、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)でも、リレー回路でも、さらには完全防爆に有効な、全流体回路でも実現できて、どれを用いても全く同じ動作をさせることが出来るのです。 これら制御回路の詳細は「改訂新版自動化機構300選(日刊工業新聞社)」に掲載されていますが、その一部をここで解説することにします。 制御回路1類:単純走行(スタートスイッチ・オンで走行開始→オフで停止)まず一番簡単な制御は「スタート」と「ストップ」だけの「制御回路1類」です。 図2-27(a)の動作内容・フローチャートなどでわかるとおり、スタート信号が来たらアクチュエータが作動し、停止信号が来ると作動を停止する、最も単純な制御内容です。 図 2-27(a)制御回路 1 類図 2-27(b)油空圧回路の「出力」に接続するアクチュエータと速度調整弁の例デジタル回路図中「AC」とあるのはアクチュエータで、制御されるアクチュエータはモータなどの電気駆動型、シリンダなどの油空圧駆動型の場合もあります。「FF」とあるのはフリップフロップ回路で、一種の記憶素子です。「IO」は入出力インターフェイスを意味します。 油空圧回路では「出力」の先にシリンダなどのアクチュエータが接続されていると考えてください。(図 2-27(b)参照) 「制御回路 1 類」は基本的には「前進 → 停止」ですが、停止したときバネ復帰型のアクチュエータでは当然原点位置まで自動的に戻ることになります。 専用自動化システムなどによく用いられる「PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)」については PLC ラダー図しか表示されていませんが、これは図 2-27(c)のような、PLC 本体に取り付けた出力側インターフェイスでアクチュエータへの配線ができていること、入力側のスイッチやセンサが接続されていることを前提として組んだプログラムです。 図 2-27(c)PLC の入力端子 X 群に接続したセンサ・スイッチの例と 出力端子 Y 群に接続した出力側インターフェイスを経由したモータ駆動の例自己保持回路 制御回路の基本は「記憶」にある。PLC に限らず、シーケンス制御すなわち「順序を意識した制御」には、記憶機構が不可欠です。 最も簡単な例を挙げると、図 2-28 のように、駐車場の出入り口に 2 組の光電センサを置いた場合、最終的にはセンサ A、B ともに ON するので、その状態だけでは進行方向の判定は不能ですが、センサの動作記憶があれば、A が先に ON すれば入場、B が先に ON すれば出場との判定が出来ます。 図 2-28 先にオンしたセンサの記憶で進行方向は判定できる動作記憶を司る記憶機構とは「信号が入力されたら、ある素子が ON して、信号が途絶えてもそのままの状態を保ち、リセット信号でその素子が OFF になる」ものです。 このような素子は、電子回路のフリップフロップ、流体回路のダブルコイルソレノイドバルブなど、幾つかありますが、PLC でよく使われるのが「自己保持回路」です。 メカトロニクス技術認定試験(TTAM)でも、PLC の自己保持回路は「基本中の基本」として、必ず出題される絶対必要な手法です。 以下、最も簡単な自己保持回路について述べることにします。 まず図 2-27(c)の配線接続は、スタートスイッチ A を X0、リセットスイッチ B を X1 に接続してあります。 図 2-29(a) スイッチ A を押して X0 が オンしている間だけ Y10 でモータが回る「自己保持回路なし」の場合これを図 2-29(a)の簡単なプログラムで駆動すると、当然スタートスイッチ X0 を押している間だけ「Y10」に出力が出るので、アクチュエータ(Motor)が駆動されることになります。 「自己保持回路あり」の場合これに対して、図 2-29(b)のように出力リレー Y10 の「NO 接点(常時は導通しない)」をスタート信号 X0 と並列に入れることで、Y10 は、一旦オンしたら自分の出力接点が導通になるので自分自身に通電を続けることになり、スタート信号が切れてもオンし続けます。これが「自己保持」です。 これをオフするには、リセット信号の「NC 接点(常時導通している)」X1 をオンして、導通を遮断します。 つまり、スタートスイッチを一瞬押したら自己保持回路でそれを覚えていて、モータは駆動を開始し、リセットスイッチが押されるまで回転し続けるのです。 同じことを内部リレー M2 で行った例が図 2-29(c)です。動作は図 2-29(b)の場合と全く同じと考えてよいでしょう。 図 2-29(b)一瞬でもスイッチ A を押せば、Y10の接点が自分をオンし続けるので、これをリセットスイッチ B で切るまでモータは回り続ける 図 2-29(c)一瞬でもスイッチ A を押せば、M2 の接点が自分をオンし続けるので、M2 の接点で駆動される Y10 も出力を続ける。 M2 をリセットスイッチ B で切るまでモータは回り続ける 次回は、制御回路の構成・2 類、3 類について説明します。 フリップフロップ回路についてフリップフロップ回路は図の様になっていて、Set 入力を一瞬でも入れると正出力 Q がオン、反対側の出力がオフになりそのまま保ちます。 次に Reset 入力を一瞬でもオンすると、正出力 Q がオフとなり、反対側の出力がオンとなりそのまま保ちます。 つまり、記憶素子として働くのです。 株式会社新興技術研究所 熊谷 卓 による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」は、クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 2.1 ライセンスの下に提供されています。 Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 2.1 Japan License この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 新興技術研究所 取締役会長 熊谷 卓さんのその他の記事 2018/06/05 業界コラム 5 これから面白くなる自動化の考え方・第 4 世代のシステムへ(6) 2018/05/09 業界コラム フィードバックシステムの巧妙性実現からその先へ(その1) 2018/04/03 業界コラム 文学的表現から工学的表現にしてシステムを構築 2018/03/06 業界コラム 真の巧妙性を駆使するベテラン作業員の説明 2018/02/06 業界コラム 第 4 世代のシステムの実例 2018/01/10 業界コラム ベテラン作業員の頭の中はカム曲線の集合か? 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Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月