2017/03/07 業界コラム 熊谷 卓 3 生産性向上の 4 手法(3) 株式会社 新興技術研究所 取締役会長 熊谷 卓 1955年03月 東京大学工学部精密工学科卒業...もっと見る 1955年03月 東京大学工学部精密工学科卒業 1955年04月 マミヤ光機株式会社入社 1962年11月 技術士国家試験合格・機械部門技術士登録 1963年03月 株式会社 新興技術研究所設立 代表取締役就任、現在 同社取締役会長(業務内容:自動組立機をはじめ各種自動化設備機器等の開発・製作・技術指導) 【歴任】 米国・欧州自動化技術視察団コーディネータ 8 回 自動化推進協会 理事・副会長 精密工学会 自動組立専門委員会 常任幹事 日本技術士会 理事・機械部会長 中小企業大学校講師 日本産業用ロボット工業会 各種委員 神奈川大学講師 自動化推進協会理事 高度職業能力開発促進センター講師 等を歴任 【業績】 著書 自動化機構300選(日刊工業新聞社)、メカトロニクス技術認定試験教本(工業調査会)ほか多数 講演 アジア生産性機構講演で自動化システムを W・T・MACS で表示・解析を提示(世界初)ほか多数 論文 自動化システムのデバッギング理論「チェック機構と最適稼働率」が欧州年間論文大賞にノミネイトほか多数 発明 メカトロニクス技術実習モジュールの発明、地震予知システム「逆ラジオ」の発明ほか多数 株式会社新興技術研究所 熊谷会長様のご好意による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」の 27 回目です。「生産性向上の 4 手法」、「高速化と併行作業化」の工程分割検討を紹介します。 工程分割検討 1さて、半自動化から全自動化までの 4 段階のシステムを考えましたが、これらのうちどれが有効なのかを検討します。以前もドリリングで試みたように、手作業との作業速度の比較をしてみましょう。 まず上述の手作業について、各工程の時間を想定します。 もちろんここで想定する時間は正確な作業計測によるものではなく、システムの効率を検討するためのごく大雑把な数値です。 ① A 部品の向きを整えてワークホルダ(冶具)に取り付ける作業をごく簡単に平均的に 2 秒とします。 ② これに B 部品を挿入する工程も 2 秒。 ③ 両手起動のスタートボタンでハンマーツールを落下させてカシメる作業を 1 秒。 ④ ハンマーヘッドが上昇端に戻ったらカシメられた A+B を取出して製品箱に入れるのも 2 秒とします。 つまり合計でサイクルタイム 7 秒の作業です。 これから図の 4 種類の機械を使ってみることにします 図 3-6(1)2 ステーション型図 3-6 (1)2 ステーション型の場合① 手前のワークホルダにあるカシメられた A+B の製品を取出し製品箱に入れる:2 秒 ② 空になったワークホルダに A 部品を供給する:2 秒 ③ その上に B 部品を挿入する:2 秒 ④ テーブル回転レバーを手で駆動して180 度回転させるトランスファ動作:1 秒 ⑤ 上記 ①、②、③ の作業が行われている間に、カシメステーションではもう一つのワークホルダ上のワークにカシメ作業が自動で行われる。これは 1 秒で完了し、手作業時間には影響がないので括弧( )でくくる:(1 秒) となります。 図 3-6(2)4 ステーション型図 3-6 (2)4 ステーション型の場合作業者は空のワークホルダに A、B 部品を供給するだけでよく、その間にカシメステーションではカシメ作業、取出しステーションでは取出し作業が自動で行われます。 ① 手作業でワークホルダに A 部品供給:2 秒 ② 手作業で A 部品に B 部品を挿入:2 秒 ③ ①、②、の作業時間中にカシメ作業を自動で行う:(1 秒) ④ トランスファは少し速度を上げられる:0.7 秒 ⑤ A+B の取出し作業は ①、②、の作業時間中に自動で行われる:(1.5 秒) 図 3-6(3)6 ステーション型図 3-6 (3)6 ステーション型の場合① 手作業でワークホルダに A 部品供給:2 秒 ② B 部品の自動供給装置で A 部品に B 部品を挿入:(1.5 秒) ③ 自動カシメ作業:(1 秒) ④ トランスファは更に速度を上げて:0.5 秒 ⑤ A+B の自動取出し:(1.5 秒) このような自動化システムの場合、制御系のメインコントローラは図 3-8 のように、トランスファが終わると同時に、その終了信号によって全作業ユニットにスタート信号を一斉に送り、全作業ユニットが同時にスタートします。 作業ユニットはそれぞれ作業を完了次第、終了信号をメインコントローラに返します。作業員も同時に作業を開始し、作業完了すると作業終了信号スイッチを押します。 メインコントローラは作業員を含むすべての終了信号が出揃うまで待って、出揃ったらトランスファのスタート命令を出すのです。 図 3-8 メインコントローラの役割従ってこの 6 ステーション型システムでは、B 部品供給、カシメ、A+B 取出しも全部スタートから 1.5 秒以内で終了信号が出て、A 部品供給の手作業、2 秒の終了信号が出ればすべての終了信号が出揃うので、直ちにトランスファを開始し、0.5 秒で次のサイクルに移ります。したがってこのシステムのサイクルタイムは 2.5 秒となり、手作業の 7.0 秒より大分速くなっています(生産速度 2.8 倍)。 (このほかにチェックユニットもありますが、これも 1.5 秒以内に作業は終了すると思われるのでサイクルタイムに影響はありません。) このようにして想定した各システムのサイクルタイムを表 3-1 に示します。 図 3-6(4)のシステムでは作業員の時間はありませんが、A 部品の供給を含めてすべて自動化されたユニットなので 1.5 秒以内に終了信号が出揃うと想定して、これにトランスファ 0.5 秒を足してサイクルタイム 2.0 秒となります(生産速度 3.5 倍)。 表 3-1 各システムのサイクルタイム 番号 工程内容 手作業 図 3-6 (1) (2) (3) (4) 1 A 部品供給 2 秒 2 秒 2 秒 2 秒 (1.5 秒) 2 B 部品供給 2 秒 2 秒 2 秒 (1.5 秒) (1.5 秒) 3 トランスファ – 1 秒 0.7 秒 0.5 秒 0.5 秒 4 カシメ作業 1 秒 (1 秒) (1 秒) (1 秒) (1 秒) 5 A+B 取出し 2 秒 2 秒 (1.5 秒) (1.5 秒) (1.5 秒) サイクル合計 7.0 秒 7.0 秒 4.7 秒 2.5 秒 2.0 秒 評価 – × △ ○ ○ この結果で見ると、図 3-6(1)のシステムは装置を導入してもサイクルタイムは少しも短くならず、投じた金額は無駄になりそうです。 表の一番下の「評価」欄で見ると、「わかった、2 部品の簡単な自動組立には(3)、(4)のようなシステムが有効なんだ!」となりそうですが、ちょっと待ってください。 今回の例はカシメ作業を一回のハンマー動作で完了としましたが、次回は条件の異なった例として B 部品が壊れやすいガラスやセラミックだった場合を考えてみることにします。 株式会社新興技術研究所 熊谷 卓 による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」は、クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 2.1 ライセンスの下に提供されています。 Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 2.1 Japan License この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 新興技術研究所 取締役会長 熊谷 卓さんのその他の記事 2018/06/05 業界コラム 5 これから面白くなる自動化の考え方・第 4 世代のシステムへ(6) 2018/05/09 業界コラム フィードバックシステムの巧妙性実現からその先へ(その1) 2018/04/03 業界コラム 文学的表現から工学的表現にしてシステムを構築 2018/03/06 業界コラム 真の巧妙性を駆使するベテラン作業員の説明 2018/02/06 業界コラム 第 4 世代のシステムの実例 2018/01/10 業界コラム ベテラン作業員の頭の中はカム曲線の集合か? 2017/12/05 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(7) 2017/11/07 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(6) 2017/10/03 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(5) 2017/09/05 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(4) 2017/08/01 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(3) 2017/07/04 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(2) 2017/06/06 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(1) 2017/05/10 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(5) 2017/04/04 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(4) 2017/03/07 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(3) 2017/02/07 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(2) 2017/01/11 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(1) 2016/12/06 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(21) 2016/11/08 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(20) 2016/10/04 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(19) 2016/09/06 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(18) 2016/08/02 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(17) 2016/07/05 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(16) 2016/06/07 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(15) 2016/05/11 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(14) 2016/04/05 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(13) 2016/03/08 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(12) 2016/02/09 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(11) 2016/01/13 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(10) 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月