2016/03/08 業界コラム 熊谷 卓 2 巧妙性実現の手段群(12) 株式会社 新興技術研究所 取締役会長 熊谷 卓 1955年03月 東京大学工学部精密工学科卒業...もっと見る 1955年03月 東京大学工学部精密工学科卒業 1955年04月 マミヤ光機株式会社入社 1962年11月 技術士国家試験合格・機械部門技術士登録 1963年03月 株式会社 新興技術研究所設立 代表取締役就任、現在 同社取締役会長(業務内容:自動組立機をはじめ各種自動化設備機器等の開発・製作・技術指導) 【歴任】 米国・欧州自動化技術視察団コーディネータ 8 回 自動化推進協会 理事・副会長 精密工学会 自動組立専門委員会 常任幹事 日本技術士会 理事・機械部会長 中小企業大学校講師 日本産業用ロボット工業会 各種委員 神奈川大学講師 自動化推進協会理事 高度職業能力開発促進センター講師 等を歴任 【業績】 著書 自動化機構300選(日刊工業新聞社)、メカトロニクス技術認定試験教本(工業調査会)ほか多数 講演 アジア生産性機構講演で自動化システムを W・T・MACS で表示・解析を提示(世界初)ほか多数 論文 自動化システムのデバッギング理論「チェック機構と最適稼働率」が欧州年間論文大賞にノミネイトほか多数 発明 メカトロニクス技術実習モジュールの発明、地震予知システム「逆ラジオ」の発明ほか多数 株式会社新興技術研究所 熊谷会長様のご好意による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」の 15 回目です。前号に引き続き「W・T・MACS の他の要素群」から「制御回路の構成・1 類、2 類、3 類」(その2)を紹介します。 2-3 W・T・MACS の他の要素群 制御回路の構成・1類、2類、3類(その2)制御回路2類:単純1往復(スタート信号で前進 → 前進端センサ信号で後退、原点で停止)制御回路2類には2A類「単純往復動作」と、2B類「一回転停止動作」との2種類があります。 PLCラダー図でわかるとおり、いずれも自己保持回路を3組使っています。 例えば2A類では、 スタート信号が入ったことを記憶する自己保持と、 前進端まで進んだことを記憶する自己保持と、 原点に戻ったことを記憶する自己保持 とが使われていて、 「前進端まで進んだ後、原点に戻ったことで1サイクル終了した」と考え、上から順にリセットされるようになっています。 図 2-30A 制御回路 2A 類また2B類では、スタート信号の自己保持後、原点センサが一旦オフになった後にもう一度原点センサがオンしたことで、「一回転して戻ってきたので、1サイクル終了した」と考え、上から順にリセットされるようになっています。 図2-30B 制御回路2B類制御回路3類:前進 → 信号待ち → 後退(スタート信号で前進 → 前進端センサ信号で中間停止 → 中間スタート信号で後退、原点で停止)制御回路3類にも 3A 類「前進→信号待ち → 後退(スタート信号で前進 → 前進端センサ信号で中間停止 → 中間スタート信号で後退、原点で停止)」と、 3B 類「正転 → 信号待ち → 更に正転(スタート信号で正転→前進端センサ信号で中間停止 → 中間スタート信号で更に正転して、原点で停止)」 の2種類があります。これらも前記と同様に自己保持回路をうまく活用していることがわかります。 図2-31A 制御回路3A類図2-31B 制御回路3B類応用例:これら1~3類の組合せで極めて多くの自動化システムが駆動されます。 ロータリテーブルの1ピッチ駆動 2B類 ベルトコンベアのピッチ送り 2B類 ワークのクランプとドリリング 3A類と2A類の組合せ (ワーククランプ3A類、ドリリングユニットの1往復2A類) 自動供給ユニット 3A類3個の組合せ (チャック開閉3A類、チャック上下3A類、チャック前後3A類) その他、いろいろな自動化装置の例について考えてみることをお勧めします。 制御回路のエラー処理上記1、2、3類は、ごく基本的な制御回路の構成ですが、一般の自動化機械の制御にはいくつか問題があります。 その一つが、装置の動作のエラーに関するものです。 これについて詳しく述べるとそれだけで一冊の本になりますが、ここではごく簡単に考え方を述べることにします。 たとえば2A類の制御ではスタート信号で単純に装置が前進し始めるはずですが、進路に何か異物が挟まっていて進めなかったらどうなるか考えて見ます。 アクチュエータが空気圧シリンダだった場合は、ストロークの途中で止まったままになっているので、まだいいのですが、モータの場合はそのまま強制的に停止させられていると当然過熱して煙が出てきます。 「じゃあ装置に煙センサをつけておきましょうか?」ということではいささか困ります。 タイマーの利用一般に制御ソフト開発の手段の中にはタイマーがあるのでこれを利用することにします。 つまり、スタートと同時にタイマーを走らせ、スタート後一定時間経っても目的地に来なかったら何かトラブルがあったと考えてエラー信号を発するのです。 この考え方を入れた2類・3類のフローチャートを図2-32、33に示します。 お分かりのとおりフローチャートに「タイムアップ」という項目が入って、タイムアップしてしまったらエラー信号を出し、アクチュエータを止めるようにしてあります。 図 2-32 エラー処理フローチャート2A類・3A類 図2-33 エラー処理フローチャート2B類・3B類 たぶんモータから煙が出る前にエラー信号でアクチュエータ駆動命令を取り消すので多くの場合あまり重大なトラブルにはならないかと思われます。 一見これでよさそうな気がしますが、実はまだいろいろ問題があります。それは 問題点(1)所定の時間内に目的点まで行けなかった原因が不明 問題点(2)停止した時のアクチュエータ/メカニズム等の状況とその復帰方法が不明 であることで、要するにとりあえず止めたけど、何がどうなっているかまったくわからない、ということです。 まず{問題点(1)所定の時間内に目的点まで行けなかった原因が不明}については (A)スタート信号でも動き出さなかった場合は、配線の切断・配管の詰まり・メカニズムの緩み・破損など (B)ある程度進んでいた場合は、異物の侵入・摩擦の変動・ワークの転倒など (C)前進端直前まで進んでいた場合は、異種ワークの混入・異物の挿入・メカニズムの緩み・破損など のように原因がある程度想像できるかもしれませんが、タイマーだけでは(A)(B)(C)のいずれであるかもわかりません。 {問題点(2)停止した時のアクチュエータ/メカニズム等の状況とその復帰方法が不明}については たとえば、 (A)アクチュエータがモータの場合異物を強力に締め付けていてモータ逆転は不能の場合もあり (B)空気圧シリンダの場合、使われているソレノイドバルブが、シングルコイルなら原位置に戻るが、 (C)ダブルコイルでは、そのまま押し続けているはずで、 (D)3ポジションでは、プレッシャーセンター・エキゾーストセンター・クローズドセンターなど、種類ごとに状況が異なります。 したがって、これらのそれぞれの状況に応じてその復帰方法も異なることは当然です。 つまりタイマーによるエラー信号出力は制御システムとして最低限の保護手法に過ぎない、ということになりますが、放っておくとモータが焼けるような重大事故になるのを、とりあえず緊急停止で軽事故で済むようにする効果は大きいと言えます。 この「重大事故の軽事故への転換」は後日解説予定の「自動化システムのデバッグ理論と最適稼働率」 の章で大変重要なポイントなのです。 次回は、W・T・MACS 要素群のなかの【S】センサによる代替特性検出について説明します。 株式会社新興技術研究所 熊谷 卓 による「生産性向上とメカトロニクス技術講座」は、クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 2.1 ライセンスの下に提供されています。 Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 2.1 Japan License この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 株式会社 新興技術研究所 取締役会長 熊谷 卓さんのその他の記事 2018/06/05 業界コラム 5 これから面白くなる自動化の考え方・第 4 世代のシステムへ(6) 2018/05/09 業界コラム フィードバックシステムの巧妙性実現からその先へ(その1) 2018/04/03 業界コラム 文学的表現から工学的表現にしてシステムを構築 2018/03/06 業界コラム 真の巧妙性を駆使するベテラン作業員の説明 2018/02/06 業界コラム 第 4 世代のシステムの実例 2018/01/10 業界コラム ベテラン作業員の頭の中はカム曲線の集合か? 2017/12/05 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(7) 2017/11/07 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(6) 2017/10/03 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(5) 2017/09/05 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(4) 2017/08/01 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(3) 2017/07/04 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(2) 2017/06/06 業界コラム 4 フレキシビリティが面白いインフォメーションカム(1) 2017/05/10 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(5) 2017/04/04 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(4) 2017/03/07 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(3) 2017/02/07 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(2) 2017/01/11 業界コラム 3 生産性向上の 4 手法(1) 2016/12/06 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(21) 2016/11/08 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(20) 2016/10/04 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(19) 2016/09/06 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(18) 2016/08/02 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(17) 2016/07/05 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(16) 2016/06/07 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(15) 2016/05/11 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(14) 2016/04/05 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(13) 2016/03/08 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(12) 2016/02/09 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(11) 2016/01/13 業界コラム 2 巧妙性実現の手段群(10) 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月