2017/01/11 業界コラム 金子 成彦 大学が変わるべきところ守るべきもの(冬休み小旅行編) 東京大学名誉教授・元早稲田大学教授 金子 成彦 1972年 山口県立山口高等学校理数科1期卒 ...もっと見る 1972年 山口県立山口高等学校理数科1期卒 1976年 東京大学工学部機械工学科卒 1978年 東京大学大学院工学系研究科舶用機械工学科修士課程修了 1981年 東京大学大学院工学系研究科舶用機械工学科博士課程修了(工学博士) 同年 東京大学工学部舶用機械工学科講師 1982年 東京大学工学部舶用機械工学科助教授 1985年-1986年 マギル大学機械工学科客員助教授 1990年 東京大学工学部附属総合試験所機械方面研究室助教授 1993年 東京大学工学部舶用機械工学科助教授 1995年 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻助教授 2003年 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻教授 2018年 早稲田大学理工学術院創造理工学部客員教授 2019年 早稲田大学理工学術院国際理工学センター教授 2019年 東京大学名誉教授 2019年 日本機械学会名誉員 2020年 自動車技術会名誉会員 明けましておめでとうございます。 今年の干支は「酉」、動物で表すと「鶏」です。 皆様の今年のご発展とご健勝をお祈りいたします。 冬休みの小旅行長門豊川稲荷神社の絵馬さて、昨年の新川タイムズでは、年始の過ごし方について書かせて頂きましたが、今回はその続編です。このところ、帰省の際に、これまでに訪れたことのない場所を訪問する小旅行を企画し実行していますが、今回は、山口県長門湯本温泉の大谷山荘を選びました。この旅館は、最近、日露首脳会談が開かれたことで有名になりましたが、予約した段階ではその開催を知りませんでした。今回の旅行では、親切なタクシー運転手にたまたま出会い、大谷山荘から元乃隅稲成神社、角島大橋まで足を延ばしました。その後、鉄道とバスを乗り継いで実家のある湯田温泉までたどり着きましたが、山口宇部空港を起点として長門湯本温泉、大寧寺、元乃隅稲成神社、角島大橋、萩を経由して湯田温泉までの道程は約 260 キロの行程となりました。 長門湯本温泉と大谷山荘大谷山荘のある長門湯本温泉は、室町時代に開かれた山口県内では最も歴史のある温泉で、町の中央を流れる音信川(おとづれがわ)のせせらぎが聞こえる川の両岸に古風なたたずまいの旅館が軒を並べています。昔懐かしい温泉街の風情があり、町のシンボルである「恩湯」、「礼湯」の 2 つの市営公衆浴場が昭和のレトロな空気を漂わせています。 恩湯大谷山荘看板大谷山荘は、2016 年 12 月 15 日、安倍首相とプーチン大統領による日露首脳会談がこの旅館で開かれたことで一躍有名になりました。立派な構えの旅館で、山荘と名付けられていることから分かるように、山と山に囲まれた谷あいに位置していて、館内にも渓流を模した小川が拵えてあり、館内でもせせらぎの音を聞くことができる癒しの空間となっています。 大谷山荘館内大寧寺と長門豊川稲荷神社大寧寺本堂長門湯本温泉街を抜けてしばらく行くと、山を背にした曹洞宗の名刹大寧寺が見えてきます。この寺は、陶隆房(後の晴賢)に追い詰められた大内義隆がこの地で自刃したことから、大内氏終焉の地として知られています。かつて西の高野山とも呼ばれた広い境内の入り口には、「兜掛けの岩」と「姿見の池」があります。義隆が境内に入る前に乱れた髪を整えようと参道わきの岩に兜を掛け、傍の池に顔を映そうとした時に、自分の顔が映らなかったということで、自刃の決断をしたとのことです。苔むした岩と池からは義隆の無念さが伝わってくるようです。大寧寺のすぐ傍には、豊川稲荷の分社の長門豊川稲荷神社があり、鶏の絵馬はこの神社の入口に飾ってあったものです。 兜掛けの岩 姿見の池 元乃隅稲成神社と龍宮の潮吹き防波堤 全国のお稲荷さんの中に、稲荷と書くものと稲成と書くものの 2 種類があることを最近知りました。前者は、京都の伏見稲荷大社を代表とするもの、後者は津和野にある津和野太鼓谷稲成神社とその分社である元乃隅稲成神社のみとのこと。小生の名前は、「成彦」と書きますが、小生は神社とは関係はないのですが、「成」の文字が使われている神社があると聞くとうれしくなります。 元乃隅稲成神社の近くには「龍宮の潮吹き」という波が荒い時には潮が 30m 以上も吹き上がることで有名な場所があり、地元では、昭和 30 年に出来た元乃隅稲成神社よりも、磯釣りのポイントである「龍宮の潮吹き」の方がよく知られていたようです。潮が上がっている場所から視線を右に向けると、高波や津波から漁船や集落を守るためのコンクリート製の防波堤が視界に入ってきます。防波堤の人工物としての大きさだけではなく、人間が波高い海の中に巨大なコンクリートの塊を作ったという事実に圧倒されます。 アメリカの CNN は、鳥居の朱色と日本海のコバルトブルーのコントラストに魅せられて、日本の最も美しい場所 31 選に元乃隅稲成神社を選びましたが(*)、人工物である防波堤にも一見の価値があります。 (*)http://edition.cnn.com/2015/03/24/travel/gallery/most-beautiful-japan/ 元乃隅稲成神社角島と旧友との思い出親切なタクシードライバーのお勧めもあって、海に掛かる日本一美しい橋として評判の高い角島大橋まで足を延ばしました。角島は、響灘・日本海に浮かぶ美しいエメラルドグリーンの海に囲まれた島で、島の北部に突き出た 2 つの岬が、牛の角のように見えることから角島の名が付いたといわれています。大学の夏休みに高校のクラスメイトとともに角島にキャンプに出掛けて以来、久し振りに島に足を踏み入れました。当時は、島には船で渡る必要があり、船着場から目的地までもトコトコ歩くしかなく、店もほとんどないところでした。釣りをしてはその日のおかずを確保するというサバイバルキャンプで、フナ虫を餌にしては、ベラや草フグを釣ったことを記憶しています。浜辺を歩いていると急に昔の思い出がよみがえってきました。島に橋が架かり車で渡れるようになった今でも、海がその当時と変わりなくコバルトブルーのグラデーションに輝いていることに感激しました。また、きれいになった角島灯台周辺は、30 年前に訪問したアメリカ東海岸のケープコッドのように感じられました。 角島大橋 角島灯台 同窓会「がんばろう」の額旧友との思い出といえば、昨年は同窓会に縁のある年でした。研究室、大学、高校、中学校、小学校の同窓会が東京や山口で開催され、そのすべてに参加しました。記憶に深いのは、「チョコットだけ昔に戻りたい人集合」と題して招集された 50 年ぶりの小学校の同窓会でした。自分より背が高く怖そうに思っていた男子が面倒見のよい世話役になり、当時はおとなしくて引っ込み思案だった女子が仕切るタイプに替わっていたことや想定外のカミングアウトもあり驚きや発見の連続で、予定の時間が瞬く間に過ぎました。印象的だったことは、小学校時代 6 年間の長きにわたり毎日眺めていたクラス担任の高木東三先生が美しい字で書かれた「がんばろう」の額を再現復活してくれた幹事さんがいたことです。とても感謝しています。小生は、この言葉に何度支えられたか分かりません。今年も、つらい時には「がんばろう」を思い出して、乗り切ってゆきたいと思います。 さて、小生に影響を与えた額はもうひとつあります。その額には、「個性尊重天分発展」と書かれていました。 これは、小生が通っていた山口大学附属山口小学校の講堂に掲げられていたもので、日産コンツェルンの創始者の鮎川義介さんによるものです。偶然にも、小生は小学校(山大附小)から大学(東大機械)まで鮎川さんと同じ学校を卒業することになるのです。 小生が大学で研究指導できる時間も残り少なくなりましたが、長年、この言葉を意識しつつ学生指導を行ってきました。昨今、基礎研究に充てる予算が十分ではなくなり、産学連携や国家プロジェクトに関連した研究が中心となっていますが、大学における研究指導者のスタンスとして学生の個性を尊重し天分を発見するための支援をすることを忘れてはいけないと思います。この話に纏わるストーリーは、次回に続きます。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 東京大学名誉教授・元早稲田大学教授 金子 成彦さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム 人生の低山を歩く 2024/01/10 業界コラム あんたぁ先頭 ! 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Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月