コラム執筆にあたって
転がり軸受(ベアリング:Bearing)は、さまざまな機械に使用される重要な機械要素ですので、機械系の技術者であれば、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。しかしながら、転がり軸受については大学などで教えることは、ほとんどありません。本連載では、そんな転がり軸受の基本について解説していきます。
第2回目となる今回は、転がり軸受の呼び番号について解説します。
呼び番号
転がり軸受は、形式や各部の寸法が国際的に標準化されています。そのため、軸受に与えられている固有番号さえ合っていれば、少なくとも軸受の形式と外部形状寸法は同じですので、特殊なものを除いて他のメーカーのものであっても互換性があります。この固有番号は呼び番号と呼ばれ、基本番号と補助記号から構成されています。この呼び番号から軸受の形式・主要寸法・回転精度・内部すきまなどが識別できます。図1に一例を示します。この呼び番号は、パッケージに記載されています。また、軸受本体にも基本番号と密封装置記号程度であれば刻印がされています。

基本番号
基本番号は軸受形式記号・直系系列記号・内径番号・接触角記号の三つで構成されています。一部例外もありますが、基本的に軸受形式記号は次のように軸受形式を示しています。
軸受形式記号
0:複列アンギュラ玉軸受
1:自動調心玉軸受
2:自動調心ころ軸受(球面ころ軸受)
3:円すいころ軸受
4:複列深溝玉軸受
5:スラスト玉軸受
6:単列深溝玉軸受
7:単列アンギュラ玉軸受
8:スラスト円筒ころ軸受
N:円筒ころ軸受
NA:ニードルころ軸受
QJ:4点接触玉軸受
寸法系列記号は軸受の外径や幅を示します。7/8/9/0/1/2/3/4の順に軸受の外径や幅が大きくなります。つまり、軸受の許容荷重や剛性が大きくなります(許容回転数は下がります)。
内径番号は軸受の内径を示します。これは少し複雑で、数字の前に“/(スラッシュ)”がついていれば、その後ろの数字がそのまま内径になります。また、1~9の場合もそのままです。00~03は表1にしたがっています。04以降は数字を5倍してください。
内径番号 | 内径 |
00 | 10 |
01 | 12 |
02 | 15 |
03 | 17 |
たとえば・・・
69/22 内径22 mm
695 内径5 mm
6901 内径12 mm
6906 内径30 mm
となります。
さらに、アンギュラ玉軸受や円すいころ軸受などの場合は、接触角記号がつきます。接触角記号は、表2に示すとおり、軸受の形式によって意味が異なりますので、軸受形式番号を見て判断してください。なお、円すいころ軸受の接触角Bやアンギュラ玉軸受の接触角Aの場合は、基本的に接触角記号が省略されます。基本的に、接触角を大きくするほど許容できるアキシアル荷重は大きくなりますが、高速回転には不利になります。
表2 接触角記号の意味
接触角記号 | 接触角 |
(B) | 接触角10°を超え17°以下 |
C | 接触角17°を超え24°以下 |
D | 接触角24°を超え32°以下 |
接触角記号 | 接触角 |
(A) | 30° |
B | 40° |
C | 15° |
補助記号
補助記号は、基本番号の前につく接頭補助記号と、後ろにつく接尾補助記号よりなります。接頭補助記号は特殊な用途・材料・熱処理などの場合につけられます。また、接尾補助記号は密封装置(シール・シールド)や内部の仕様、さらに封入されているグリース種類や量を示しています。これらの補助記号はメーカーが個々に定めていますので、メーカーの軸受寸法表などを参考にするか、販売代理店などに問い合わせるとよいでしょう。
次回は、転がり軸受の材料について解説します。
関東学院大学 理工学部 准教授 堀田 智哉さんのその他の記事
- 足立 正二
- 安藤 真
- 安藤 繁
- 青木 徹
- 藤嶋 正彦
- 古川 怜
- 後藤 一宏
- 濱﨑 利彦
- 早川 美由紀
- 堀田 智哉
- 生田 幸士
- 大西 公平
- 䕃山 晶久
- 神吉 博
- 金子 成彦
- 川﨑 和寛
- 北原 美麗
- 小林 正生
- 久保田 信
- 熊谷 卓
- 牧 昌次郎
- 万代 栄一郎
- 増本 健
- 松下 修己
- 松浦 謙一郎
- 光藤 昭男
- 水野 勉
- 森本 吉春
- 長井 昭二
- 中村 昌允
- 西田 麻美
- 西村 昌浩
- 小畑 きいち
- 小川 貴弘
- 岡田 圭一
- 岡本 浩和
- 大西 徹弥
- 大佐古 伊知郎
- 斉藤 好晴
- 坂井 孝博
- 櫻井 栄男
- 島本 治
- 白井 泰史
- 園井 健二
- 宋 欣光
- Steven D. Glaser
- 杉田 美保子
- 田畑 和文
- タック 川本
- 竹内 三保子
- 瀧本 孝治
- 田中 正人
- 内海 政春
- 上島 敬人
- 山田 明
- 山田 一
- 米山 猛
- 吉田 健司
- 結城 宏信
- 2025年6月
- 2025年5月
- 2025年4月
- 2025年3月
- 2025年2月
- 2025年1月
- 2024年12月
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年9月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2012年2月
- 2012年1月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年5月
- 2011年4月
- 2011年3月
- 2011年2月
- 2011年1月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年10月
- 2010年9月
- 2010年8月
- 2010年7月
- 2010年6月
- 2010年5月
- 2010年4月
- 2010年3月
- 2010年2月
- 2010年1月
- 2009年12月