関東学院大学 理工学部 准教授

堀田 智哉

2017/3     博士(工学) 東京理科大学
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2017/3     博士(工学) 東京理科大学
2017/4‐2020/3  関東学院大学理工学部助教
2020/4-2023/3  関東学院大学理工学部講師
2023/4     関東学院大学理工学部准教授
[専門分野] 転がり軸受工学、機械要素・機械設計、トライボロジー、材料工学

第5回目となる今回は、転がり軸受の許容回転速度について解説します。

許容回転速度とはなにか

 メーカーの発行している転がり軸受の寸法表には通常、許容回転数が記載されています。軸受の回転速度が速くなると、軸受内部の摩擦熱の増大によって運転温度が上昇し、焼付きが発生してしまいます。許容速度は焼付きにいたるような発熱を生じさせないで、継続運転できる経験的な回転速度の許容値を指します。したがって、この許容値は軸受の形式・寸法・公差、潤滑方式、潤滑剤の質および量、保持器の形状や材料、荷重条件、冷却状況などの様々な要因によって変化します。寸法表などに記載されている値は、標準設計の軸受を普通荷重条件(\(C/P\)≧ 12,\(F_{a}/F_{r}\)≦ 0.2程度)のもとで、グリース潤滑もしくは油潤滑で運転する場合の許容される回転速度が示されています。なお、油潤滑の場合は、油浴方式を基準にしています。グリース潤滑では冷却効果が期待できないため、油潤滑よりも許容回転速度が20%程度低くなっています。

高速回転

 潤滑剤の種類によっては、高速回転に適さないものもあります。寸法表に記載されている許容回転速度の70%以上の回転数で使用する場合には、高速性能に優れたグリースや潤滑油を選定する必要があります。
 また前述のとおり、油潤滑の基準は油浴方式になっていますので、より冷却能力の高い潤滑方式を用いることによって、寸法表に記載されている許容回転速度以上の高速回転でも継続運転が可能となります。ただし、保持器の形状安定性または強度、保持器案内面の潤滑状態、転動体に作用する遠心力の大きさなどによっても回転速度の上限値が決まりますので、冷却さえされていれば、どんなに高速回転でも継続運転が可能というわけではありません。一般的に、冠型樹脂保持器(図1)などは形状安定性が悪いため、高速回転に適していません。また、セラミック転動体は軽量で遠心力が小さいため、高速回転に適しています。

図1 冠型樹脂保持器

低速回転

 許容回転数の上限値は寸法表などに記載がありますが、下限値の記載がありません。しかしながら、回転速度が極端に低い場合、油膜の形成が困難になります。そのため、油膜切れによる転送面や転動体の早期損傷が生じることがあります。このような低速回転の場合には極圧添加剤が混合されたグリースを使用するのが良いでしょう。

揺動運動

 装置によっては、1回転する前に方向が切り替わる場所で使用されることがあります。このような揺動運動では、回転方向が逆転する瞬間に、回転速度がゼロとなるため、その瞬間だけ油膜がなくなります。そのため、転走面に転動体ピッチの摩耗による“くぼみ”が発生します。これをフレッティングと呼びますが、このような揺動運動の場合には耐フレッティング性能の高いウレアグリースなどを使用すると良いでしょう。

おわりに

 今回は全5回にわたり、転がり軸受の基本について解説をおこないました。随分と割愛した内容となっておりますが、本コラムで転がり軸受に少しでも興味を持っていただき、お役に立つ点があれば幸いです。