2022/05/11 業界コラム 堀田 智哉 軸受の選定 ( 1 ) 関東学院大学 理工学部 准教授 堀田 智哉 2017/3 博士(工学) 東京理科大学...もっと見る 2017/3 博士(工学) 東京理科大学 2017/4‐2020/3 関東学院大学理工学部助教 2020/4-2023/3 関東学院大学理工学部講師 2023/4 関東学院大学理工学部准教授 [専門分野] 転がり軸受工学、機械要素・機械設計、トライボロジー、材料工学 転がり軸受(ベアリング:Bearing)は、さまざまな機械に使用される重要な機械要素です。しかし、実際に機械を設計する際には、さまざまな形状や大きさの転がり軸受がありますので、どれを選べばよいのか迷ってしまうことがあります。また、選定はできても、取付け面はどのような点に注意して設計すればよいのか、わからない方もいるかと思います。そこで、本連載では、軸受の選定と取付け面の設計について解説していきます。 第1回目となる今回は、軸受の選び方について解説します。 選定手順 機械の設計において転がり軸受の選定を最初におこなうことは稀です。機械にはそれぞれ目的(機能)がありますから、それを果たすためのトルクや荷重を決めます。これらによって、回転軸の太さや回転軸に加わる荷重の大きさおよび方向などが先に決まりますから、必要な軸径と荷重をもとに転がり軸受を選定していきます。さらに、実際には価格や納期などの問題もありますので、これらを念頭に入れておかなければなりません。 また、軸受は規格化されてはいますが、カタログに掲載されている形式のすべてがいつでも入手できるわけではありません。転がり軸受は受注生産を基本としていますので、そのときの生産体制や流通量によって納期や価格が変化します。したがって、軸受を選定する際には、供給や価格も含めた総合的な検討をおこなう必要があります。 基本的に軸受は、以下の順番で決めていきます。ただし、あくまで基本であって、実際に軸受を選ぶ際には、過去の実績や事例を参考にすることも重要です。 転がり軸受の形式 転がり軸受の寸法・寿命 転がり軸受の許容回転速度、回転精度 転がり軸受の内部すきま、予圧 転がり軸受の潤滑方式 周辺構造 転がり軸受の形式 軸受の形式は、荷重方向とその大きさによって決めることになります。最も一般的な軸受は「深溝玉軸受」です。この軸受はラジアル軸受に分類されますが、軽いアキシアル荷重であれば受け持つことも可能です。また、軸の傾きもある程度であれば許容できますので、最も使い勝手の良い軸受といえます。 この深溝玉軸受を基準にして、より大きなアキシアル荷重を受けなければならない場合には、アンギュラ玉軸受やスラスト軸受に変更します。荷重が大きく玉軸受では負荷容量が不足する場合には、ころ軸受に変更します。 転がり軸受の寸法 転がり軸受のカタログには、主要寸法が掲載されており、どのメーカーでも基本的に内径(軸径)順に並んでいます。主要寸法は内径寸法以外にも、外径寸法と幅(スラスト軸受の場合は高さ)寸法などが寸法系列ごとに記載されています。寸法系列とは幅系列と直径系列を示します。直径系列は内径寸法に対して段階的な外径寸法になっています(図1)。ただし、一部のベアリング形式(深溝玉軸受など)では省略されています。7/8/9/0/1/2/3/4の順に軸受の外径や幅が大きくなりますので、荷重や必要な剛性あるいは組付けるスペースに応じて、適したベアリングを選びます。 直径系列は0を基準にして、それよりも負荷容量や合成が必要な場合には、1→2→3と上げていきます。また、取付けスペースが制限される場合や、より高速化したい場合には、直径系列9や8のベアリングを選びます。ただしこの場合には、負荷容量が減少しますので、それを補う必要があります。たとえば、軸方向のスペースに余裕があるのであれば、複列に配列を増やすか、幅系列を大きくします。余裕がなければ、軸受形式を見直す必要があります。過去の実績や事例が参考にできない場合では、複数の形式を同時に検討し、総合的に判断することが必要となります。 転がり軸受の寿命と負荷容量 転がり軸受のカタログを見ると、「基本動定格荷重」と「基本静定格荷重」の2つの荷重が掲載されています。基本動定格荷重は、軸受の疲労寿命を算出する際に使用する値です。軸受にこの荷重を負荷した場合、(10%の軸受が)100万回転で疲労寿命にいたります。したがって、寿命がこれよりも短くなっても良いのであれば、この基本動定格以上の荷重を負荷しても構いません。一方で、基本静定格荷重とは、軸受の負荷限界を示す値です。この荷重が軸受に負荷された場合、転動体と軌道輪の永久変形量が合わせて転動体直径の0.0001倍となるとされています。(計算上では、転動体と軌道との接触部中央における接触応力が、玉軸受の場合で4200MPa、ころ軸受の場合で4000MPa、自動調心玉軸受で4600MPaとなるときの荷重です。)この変形が生じると、なめらかな回転ができなくなるといわれています。したがって、この基本静定格以上の荷重を軸受に負荷してはいけません。 次回は、転がり軸受の配列について解説します。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする 関東学院大学 理工学部 准教授 堀田 智哉さんのその他の記事 2025/02/13 業界コラム 軸受の摩擦・潤滑 ( 3 ) 2024/12/10 業界コラム 軸受の摩擦・潤滑 ( 2 ) 2024/10/08 業界コラム 軸受の摩擦・潤滑 (1) 2024/01/10 業界コラム 軸受の振動 ( 5 ) 2023/11/14 業界コラム 軸受の振動 ( 4 ) 2023/09/12 業界コラム 軸受の振動 ( 3 ) 2023/07/11 業界コラム 軸受の振動 ( 2 ) 2023/05/09 業界コラム 軸受の振動 ( 1 ) 2023/01/11 業界コラム 軸受の選定 ( 5 ) 2022/11/08 業界コラム 軸受の選定 ( 4 ) 2022/09/13 業界コラム 軸受の選定 ( 3 ) 2022/07/12 業界コラム 軸受の選定 ( 2 ) 2022/05/11 業界コラム 軸受の選定 ( 1 ) 2021/12/14 業界コラム 軸受の取扱い ( 5 ) 2021/10/12 業界コラム 軸受の取扱い ( 4 ) 2021/08/17 業界コラム 軸受の取扱い ( 3 ) 2021/06/04 業界コラム 軸受の取扱い ( 2 ) 2021/04/12 業界コラム 軸受の取扱い ( 1 ) 2020/08/04 業界コラム 軸受の基本(5) 2020/07/07 業界コラム 軸受の基本(4) 2020/06/02 業界コラム 軸受の基本(3) 2020/05/12 業界コラム 軸受の基本(2) 2020/04/07 業界コラム 軸受の基本(1) 2019/10/01 業界コラム 軸受の寿命と振動(2) 2019/09/03 業界コラム 軸受の寿命と振動(1) 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月