関東学院大学 理工学部 講師

堀田 智哉

2017/3     博士(工学) 東京理科大学
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2017/3     博士(工学) 東京理科大学
2017/4‐2020/3  関東学院大学理工学部助教
2020/4     関東学院大学理工学部講師
[専門分野] 転がり軸受工学、機械要素・機械設計、トライボロジー、材料工学

第3回目となる今回は、転がり軸受の点検について解説します。

軸受の保全

 軸受の早期損傷や、それによって発生する事故を未然に防止するためには、軸受の保全が必要です。一般的に保全は大きく予防保全と事後保全に分類されます(図1)。予防保全は、使用中での故障を未然に防ぐことを目的におこなう方式です。一方、事後保全は故障が発生した際に、故障原因を調査・解析して処置をおこなう方式です。

図1 保全

 時間計画保全は、あらかじめ定めたスケジュールにしたがって実施する予防保全です。そのうち、暦年の経過時間で計画されるものが定期保全、累積動作時間で計画されるものが経時保全となります。定期検査としておこなわれるものが、これら時間計画保全にあたり、軸受を取外して損傷の状態を検査します。この周期は、故障などの統計や類似の機械の実績から推定して定めることになります。軸受だけを取出して検査することは非常に不経済ですので、他の機械部品とともに機械を分解し、まとめて検査をおこないます。とくに、グリースなどは、軸受よりも寿命が短くなることが多いですから、解体しなければグリースの給脂・交換ができない機械では、グリースの交換周期が定期検査の周期となります。
 時間計画保全は、故障率の時間的変化がバスタブ曲線に従うことを前提に計画されています。しかし、故障は必ずしもバスタブ曲線に従うものではありませんし、突発的に故障が発生することもあります。そこで、状態監視保全が必要となります。
 状態監視保全は、運転中の状態をセンサなどで監視し、その状態に基づいて保全の計画を立てる方式です。すべての機械の状態を監視するのは困難ですので、状態監視保全と時間計画保全を組み合わせた保全が一般的です。
 運転中の軸受の点検では、軸受の回転音・振動や温度を調べます。転がり軸受はわずかな圧痕やはく離でも、異常音や不規則音が発生しますので、聴音器などを用いて運転中の軸受の状態を判定することが可能です。また近年では、専用の測定器を用いることで、熟練者でなくとも、異常の有無だけでなく、その原因まで判定ができるようになっています。また、軸受の温度は、ハウジングに触れたり、潤滑油の温度を測定することで、異常を確認します。グリースや潤滑油のその汚れや異物などを調べることも、軸受の運転状況を判断するのに有効な手段です。点検の結果、軸受の異常や損傷が発見された場合には、すぐに運転を停止させ、その原因を検討し、軸受損傷の再発防止の対策をおこないます。
 原因を特定するためには、異常のあった軸受だけでなく、軸受の使用機械、使用箇所、使用条件、軸受周辺の構造、潤滑の条件、取扱いや運転経歴などを総合的に判断する必要があります。

軸受の点検

 取り外した軸受の再使用が可能かどうかを判定するために、軸受をよく洗浄した後、検査します。軌道面、転動面、はめあい面の状況、保持器の摩耗状態、軸受内部すきまの増加、寸法精度の低下などについて損傷・異常の有無を注意深く点検します。非分離形の小形の玉軸受などでは、内輪を片手で水平に支持し、外輪を回してひっかかりの有無などを確かめます。また、円すいころ軸受などの分離形軸受では、転動体や外輪の軌道面を別個に調べることができます。大形の軸受は、手で回すことはできませんので、転動体、軌道面、保持器、つばのあたり面など外観を注意して調べます。軸受の重要度が高くなるほど、より慎重に検査しなければなりません。再使用が可能かどうかの判定は、軸受の損傷程度や機械の性能、重要度、運転条件、次回の点検までの期間などを考慮して決めることになります。軸受に次のような欠陥があれば、軸受の再使用はできませんので、新しい軸受と取替えてください。

  • 内輪、外輪、転動体、保持器のいずれかに割れや欠けがある
  • 軌道輪、転動体のいずれかにフレーキングがある
  • 軌道面、つば、転動体に著しいかじりがある
  • 保持器の摩耗が著しいか、リベットゆるみが甚だしい
  • 軌道面、転動体にサビあるいはキズがある
  • 軌道面、転動体に甚だしい圧痕や打痕がある
  • 内輪内径面または外輪外径面に著しいクリープがある
  • 熱による変色が甚だしい
  • グリース封入軸受でシール板やシールド板の破損が著しい

走行跡と荷重のかかり方

 運転後の軸受の軌道面には、走行跡と呼ばれるくすんだ面となります。走行跡自体は異常ではありませんが、図2に示すように、走行跡の状態によって、軸受の取付け不良や異常荷重がわかりますので、損傷原因の追究に役立つことがあります。

図2 深溝玉軸受への走行跡の付き方と荷重の状態

次回は、転がり軸受の取付け・取外しについて解説します。