スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

ある日のスペイン語の授業で、なんの話からか忘れたのですが、ポケットティッシュの話になりました。

日本では一時期、街角で宣伝入りのポケットティッシュがたくさん配られたり、今でも銀行や商店にて、粗品としていただくことがありますよね。そんなポケットティッシュですが、スペインのものとはかなり様相が違います。

身近なものこそ、かなり違う~

百聞は一見にしかず。お土産に持って帰って来ました。

紙製品の会社は世の中に数々あるのですが、スペインでは登録商標である「クリネックス」という言葉を使い、「¿Tienes un kleenex?(ティエネス・ウン・クリネックス)」というと、「ティッシュ持っている?」という意味となり、バッグをゴソゴソ探してくれる、という図になります。日本でも「ティッシュ持ってる?」というと、バッグから「はい」と出してくれますよね。行為自体は万国共通です。

クマちゃんは 「¡AAAAACHÍS!(ハックション)」のプレートを持つ

写真をご覧ください。これが、私の選んだお土産です。

スペインの百貨店ブランドのもので、単に、柄に使われているクマちゃんが可愛らしかったため、それだけの理由で選びました。さて、仕様ですが、日本のものは、パックの表面にある開閉部分の点線の両端を、指で外側に開くことでティッシュが取り出せるのですが、スペインのものは縦に手で持った場合、上部には幅広のテープが貼り付けてあり、それを剥がすとその下には半月の形で点線が見えます。その点線に沿って切ると、それが蓋になり、蓋についている最初に剥がしたテープで再びティッシュケースは閉まります。

ティッシュ裏面の開け口。 再度フタを閉められるよう、テープがついている

日本のポケットティッシュからは、ボックスティッシュと大変よく似たティッシュが出て来ますが、スペインのものは少し違います。半月型の蓋を開き、一枚を取り出すと、縦に三つ、それを横に四つに折り曲げられた紙が出て来ます。ケースには「三枚重ね」とあります。開いてみると、綺麗な正方形をしています。日本のティッシュに比べると、しっかりした手触りです。四隅と、端から 1 センチあたりにはエンボス加工がしてあり、多分これで三枚の紙が容易に剥がれないための加工かな、と思われます(あくまでも筆者の感想)。表面はつるつるとして、鼻をかんでも痛くはないようです。汗を拭き取る、指先を拭う、また、食事の時の紙ナプキンとしても十分使えます。

一枚取り出してみる。かなりしっかりした紙質だ

しっかり畳まれているティッシュを開いてみる。綺麗な正方形

ティッシュ周囲のエンボス加工

さて、このシンプルなパッケージには、最低限の情報しか書かれていません。

日本のティッシュのように、「水に流せます」や、「水に流さないでください」という情報もありません。よって、トイレには使用しないのでしょうか?  いえいえ、スペインのトイレ事情は年々良くなっているとはいえ、日本のような至れり尽くせりではありません。もちろん、トイレのペーパーが切れている時もあるでしょう。ただ、日本ほどの水溶性の紙が少ないとか、水流が弱いトイレがあったりすると、紙が詰まる場合があります。そういうトイレには、大きめの屑かごが用意されていて、使用後のペーパーはくずかごに、という表示もあるのです。その習慣からか、ティッシュには特に明記がないのかもしれません。日本の観光地のトイレなどに「使用済みの紙はトイレに流してください」という表示とは、反対ですよね。日本ほど下水道が発達した国は、あまりないのではないでしょうか?

さて、このスペインのティッシュペーパーには「Pañuelo(パニュエロ)」という言葉が書いてあります。これが、「ハンカチ」を表すのですが、ティッシュの場合、「紙の」と付けることにより、それ以外の手を拭くハンカチ、首に巻くネッカチーフ、頭にかぶる頭巾のような布、などと区別するのです。日本では、ハンカチと鼻紙は、小学校の持ち物検査の対象となっていました(少なくとも昭和の時代には持ち物検査がありました)が、昔、この紙のティッシュがなかった頃は、ハンカチがすべての役割を果たしていたのでしょう。その名残で、布のハンカチも、紙のティッシュも、「Pañuelo」と呼ぶのでしょう。確かに、ややこしいのですが。

その布製のハンカチですが、日本での学生時代、ハンカチのコレクションをしているかのごとく、たくさんのハンカチが引き出しにあり、生活には必需品でしたが、その後スペインに渡り、ハンドドライヤーがとても発達していたため、ハンカチで手を拭く、ということ自体、少なくなりました。帰国して、ハンカチの 4 分の 1 ほどのサイズのタオルハンカチがたくさんあるのに大満足。バッグには二、三枚入れておくと便利、便利。30 年の時が流れると、身の回りの品も、バージョンアップして行くのを目の当たりにしています。

今月は、ティッシュの写真しか載せていないので、もう少しスペインの様子をお知らせしますね。内容は全然違いますが、日本にはあまり見かけない、移動型マーケットの様子を画像でご紹介します。

どれが売り物で、どれが買い物客の持ち物か、わからなくなる。「山積み」という言葉がぴったりだ

毎週水曜日にバルセロナ市に隣接する Espulgas de Llobregat(エスプルガス・デ・ジョブレガット)で毎週水曜日に開かれる、青空移動マーケット。8 月はバカンス時期ということもあり、オープンするお店は普段より少ないのですが、それでも散歩がてらのお客さんが見受けられます。日本のこの猛暑ではかなり危険ですが、日陰に入るとカラッと涼しい気候のバルセロナでは、抜けるような青空が気持ちのいいものです。

¡Qué sea leve el calor!

(ケ・セア・レベ・エル・カロール=暑さがひどくなりませんように)

写真協力:
Salvador Barrau Viñas