スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

秋も深くなりましたが、「やっと秋が来た」という感覚です。夏が厳しく長すぎたため、10月まで半袖、素足でサンダル、という、まるでバルセロナにいるときの季節感を思い出してしまいました。スペインの夏季休暇期間は6月から9月、人々はこの3ヶ月の間に旅行の計画をするのですが、チケット購入はもっと早いわけです。

2022年12月22日、「美保子、金沢に行くから会おう ! 」

鬼が笑う、とも言える時期に、2001年から友達のオリオルからメッセージ第一便が届きました。スペインの三大休暇は「クリスマス」「イースター」「夏のバカンス」だということを度々話してきましたが、まさに去年のクリスマス時期に、オリオルの夏のバカンス計画が始まったようです。

オリオルはボードゲームデザイナーで、今まで数々のゲームを考案したり、世界のボードゲームを紹介する書籍を出版してきました。2001年に知り合ったのも、彼の作ったボードゲームに日本語訳を付けたいということだったからです。

東茶屋街の町並みを楽しむ。金箔のお店が多いのに驚いていた

オリオルの作ったガウディのタイルゲーム。グラシア通りの歩道のタイルから発想を得た

当時の筆者、現在とあまり変わらず、定職は半日契約、それ以外の時間は自分の世界に浸り、ひょんなことから特技となったDTP (Desk Top Publishing) 、つまり印刷物をパソコン上で作成し、作成した印刷データを出力するまでの工程の習得に夢中になっていた時期でもありました。最近ではAdobe社のInDesignに押されてしまったのですが、当時、書籍印刷部門ではQuarkXpresというソフトが主流で、これを極めてやる〜、という野望のもと、様々な人々と「日本語翻訳」を通して知り合ってきました。その時代に、バルセロナのデザイン会社を通じ、友達になったのがオリオルです。その後、「Jugar X Jugar」というイベントに参加させてもらったり (スペインの知られざる文化No.46)、数年に一度、奥さんのアンナさんと訪れていた日本で落ち合ったり、かれこれ22年のお付き合いになります。

帰りの電車の時刻を調べておかないと、一時間待つ羽目になる

さて、半年以上前から連絡をもらっていた金沢来訪ですが、まさか5泊6日になるなんて ! 嬉しいニュース。「僕らと友達夫婦と4人で行くからね。金沢では旅館に泊まりたいんだ」というリクエストには「じゃあ近江町市場近くはどう ? 」とリンクを送り、着々と彼らの来沢は決まっていきます。
「友達夫婦は日本が初めてで、やっぱり旅館の大浴場には抵抗があるらしいんだよね。部屋にシャワーついていたり、個室のシャワー室なんてないよね ? 」と。「ううううん、温泉地の旅館なら部屋に露天風呂があったりするけれど、町からは離れているし、5泊となるととんでもない価格になると思うよ~」と返信。結局、「大浴場で納得してもらった」ということ。これで金沢観光も楽にできるぞ、と安心してしまった筆者なのですが、この後「行き当たりばったり」な性格がことごとく裏目に出てくることになるなんて…。

「美保子、9月26日の昼過ぎの電車で金沢到着、旅館のチェックインは15時だよ。夕方18時ごろに旅館で落ち合う、っていうのはどう ? 」というメッセージに、「お、始まったよ、スペイン時間 ! 」と心の中で1人で突っ込む私。

あんなに晴れていたのに、9月の終わりは雨続き。七尾湾は曇り空

そうなんです。バルセロナでの午後の活動は16~17時から始まるのです。でも、この時期の金沢で、18時に落ち合ったら、即夕食になっちゃうじゃん~、と焦った筆者は、「いやいや、16時過ぎには迎えに行くよ」と納得してもらい、久々の再会となるわけです。

秋分が過ぎ、日の入りもだんだん早くなる日本は、観光地の閉店時間も1時間早まったり、ということで、まずは近江町市場から徒歩圏の東山の茶屋街に向かいました。茶屋街自体は京都での滞在でも散策しているので珍しくはなかったのですが、金沢の茶屋街は京都に比べるとこじんまりとし、旅館を出て主計町に向かう裏通りを歩き、中の橋を渡り、東茶屋街に歩くルートは、夕暮れ時と重なり、散歩にはうってつけでした。

「金沢の郷土料理も食べたいなぁ」ということで、28日の夜に東山で夕食をしよう、と一度連れて行ってもらったところに顔を出し、外国人メニューではなく日本人向けのお料理に、金沢の治部煮を入れてもらうことにし、予約完了にホッとしました。そうなのです。金沢に住んでいる私は、夜に外食ということをまずしない、それも家の近所では。なかなかの大役を仰せつかり、みんなの予算も聞かず、です。なんというオーガナイザー。この「行き当たりばったり」の負の部分が早くも顔を出したわけです。

散歩中には石川県の地酒をショットで飲み比べることのできるお店で日本酒を飲み、旅館近くの近江町市場に戻り、夕食をし、オリオルとアンナとは積もる話を、初めて会う友人カップルとは自己紹介などを兼ねて親交を深め、徒歩で帰宅。そうなんです。自家用車は軽自動車のため、4人を乗せることができない初日の午後は、自宅から徒歩圏での散策としたのもこのためです。「明日は金沢駅集合で、レンタカーにしましょう」と旅館に送り届け、ミッションクンプリート ! 五箇山に行くか、白山比め神社に行くか、夕日の沈む海が見たい、というリクエストもあるので、能登の方まで足を延ばすか ? さて、どういうルートにするかなぁ、など20分の帰宅徒歩中に思いを馳せる筆者。

抹茶は石臼でひく、という発想はなかったため、また1つ知識が増えた。1時間半前に予約をしたが、5人分の抹茶を用意して待っていてくれた

集合時間を9時半過ぎに設定。そうです。私のように5時半に起床、6時に朝食、なんていうのは地元民がすることで、休暇旅行中の友達たちは朝ものんびりです。金沢駅には早めに着き、観光案内所で情報入手。おいおい、美保子、君は地元民だろう、というツッコミをされるかもしれませんが、地元で生活していると、レンタカーなんてのは借りないのです。近辺のレンタカー屋さんの電話番号をもらい、手配開始です。「申し訳ございません、本日は全車出払っていまして…」え ? 

10社以上の電話に次々とかけるも、いずれの会社も全車出払っている。え ? え ? え ? 何 ? どうしたの ?

行き当たりばったり「負編」、その2となります。

「ごめん。レンタカー、どこかけても借りれないんだ。どうしよう ? 」

茶筅でシャカシャカとお茶を点てるのだが、いつまでたっても飲み頃にならない

「No et preocupis (ノー・エッ・プレオクーピス=カタロニア語で「心配しないで」)、美保子、僕たちは29日まで使えるJRパスを持っているから、電車でどこかに行こうよ ! 」と、嫌な顔もせず言ってくれる友達たち。優しい ! ただ、五箇山も白山比め神社も、乗り換えが多く、電車も少ないし、JR以外の線もある…。行けないわけではないけれど、時間と労力が大きすぎる…。そして、なんとオリオルは大の「タクシー嫌い」。なんでもデザイナー現役時代を含め、タクシーに乗りすぎて、「もうこれからは乗りたくない ! 」と言うのです…。しょうがない、能登に行こう ! 「しょうがない」は能登に失礼ですが、やっぱり車生活の私には、かなり苦渋の決断だったわけです。

金沢駅からは、IRいしかわ鉄道という第三セクターが途中に入っているのですが、七尾駅はJRなので、パスが使えるとのこと。「じゃあ、七尾に行って、網焼き食べよう ! どう ? 」。なんとメインが昼食になっているではないですか。そりゃ、七尾がどういう町であるか知らない彼らには、もちろん選択肢はありません。「ああ、ガイドには向いていないな、私は」と実感した瞬間でした。

スペインの魚介も素晴らしいが、能登だって負けていない

交通系カードを携えた私と外国人が使えるJRパス (10月発券分から価格がかなり上がったと聞いていますが、彼らはかなり格安で電車旅行できました) を持った彼ら。七尾に向かってゴー。無事七尾の食祭市場内の網焼きコーナーで魚介を焼いて食べ、海を眺め、デザートにアイスクリームを食べ、という昼食。オリオルは駅でもらった七尾観光のパンフレットを手に、「ねえねえ、ここ、抹茶の体験ができるみたいだよ」と情報をくれます。
「抹茶をひいて、自分で茶筅でお茶をたてて飲んで見ませんか ? 」というワークショップです。 (お茶の北島屋※現在は700円になっています。)

金沢駅の鼓門は大きすぎて全容が入らない。仲睦まじいオリオルとアンナ

「お茶会って、体験できるの ? 」と到着日に聞かれていたのですが、何しろ日本文化を知らなすぎる筆者、回答に困っていたのも事実。そこにオリオルが手を差し伸べてくれることになったのです。こんな感じで始まった石川観光。「行き当たりばったり」が初めて輝き始めた2日目。まだまだ続きます。お楽しみに !

今月のフレーズ

- カタルーニャ語 -
No et preocupis! (ノー・エッ・プレオクーピス ! )
「心配しないで ! 」

- スペイン語 -
¡No te preocupes! (ノー・テ・プレオクーペス ! )
「心配しないで ! 」