2022/07/12 業界コラム 杉田 美保子 スペインには無い日本の魅力 No.6 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 7月 ! 夏がやって来ました ! 夏といえばBBQ ! そんなわけで、今日は、異業種・異年齢総勢11名の集まりのお話をしますね。スペインと何の関係があるって ? それは、お楽しみ。読んでみてくださいね。 デイサービスとフリースクール ?バルセロナにいた頃は、庭はもちろんのこと、テラスもないアパート暮らしでした。三階で日当たりのいいピソ(Piso=アパートに相当)は、建物全体が親友家族の持ち物だったので、安全であり、孤独も感じず、とても快適だったのですが、なにしろ「土」が無い、という生活でした。地下鉄まで徒歩1分、買い物も、町の中心に出るのにも便利なサンツと言う地区に住んでいました。若かったので、エレベーター無しの三階住まいも苦にはならなかったのです。本当に良い住まいでした。 泣く泣くバルセロナを離れる決心をして、日本へ帰国となり、なんと金沢暮らしも7年を超えました。その7年の間には、当然のごとくたくさんの人生の変化があり、今に至っています。まあ、この7年はここでは語れないので、いつかお話しすることにして…。今回は「現在」のお話をします。 田んぼが続く風景に、突如ビニールシートが両親は母20歳、父24歳で結婚し、金婚式を迎えずに熟年離婚をしました。その間に私たちが生まれて、育って、巣立って、と言うことで、結果両親の思い描いていた家庭は空っぽとなり、その結果の別れだったのかな、と想像してみます。 「子はかすがい」なんて言葉がぴったりだったのでしょうかね。そんな両親も、ここ2年で次々と他界。「孝行したい時に、親はなし状態」な筆者は、またまた迷宮に入り、人生を重〜く考えてしまったりすることもあります。 田んぼの時期以外、車が通らない農道で、荷物を搬出入。もちろん草刈りで恩返しそんな両親の共通点は、同じお寺にお墓がある、と言うことです。これ、残された子孫にとって、とってもありがたいこと、と言うのは、このお盆の時期につくづく感じることなのではないでしょうか ? 母の家系は昔からこのお寺の檀家で、父は母と結婚してからこのお寺の先先代の住職を崇拝し、宗旨替えしたため、母の家系のお墓があるこのお寺の墓地に、自らお墓を建ててこの世を去ったのです。 BBQとなんの繋がりが、とお思いの方、もう少し頑張って読んでみてくださいね〜。 もいでは焼き、焼いては食べ。畑直送、味付けはお塩だけ !地域密着、お寺密着だった父のマブダチ、KYさんが今年の初めに他界し、その方の畑の行方が気になりました。金沢の北部、山の中の田んぼと田んぼの間に、その畑があります。「ねえ、あの畑は誰が後を継ぐの?」とKYさんの奥さんHSさんに聞くと、「あれはMDさんの土地を使わせてもらっているのよ」と言うではないですか。「あ、いつもお会いするMDさんね。じゃあMDさんに聞いてみるね」と訪ねてみると、「あそこはうちからちょっと遠くてね。それに、私は道の反対側で畑しているから、そこまで手が回らんのやぁ。なに、美保子さん、畑したいがか?」とおっしゃる。「うん。実家の庭でも野菜育てているんだけれど、もうちょっとやってみたいんだ」と言うと快く、「ほんなら、やるまっし(それなら、やりなさい)」と言ってくださったのです。そうです。この畑を使わせていただくにあたり、両親の眠るお寺の檀家さんたちが大集合することとなったのです。 その土地を農業資材込みで使わせていただき、今日のコラムとなります。前置き長くてすみません。 常設の休憩所を拡大し、奉行さんたちも日陰で快適に。怪しい雲行きもなんのその「ねえねえ、畑をお借りしたんだけれど、1人では面白くないし、一緒にやってくれないかな?」と声をかけたのがABさん。父のもう一人のマブダチSTさんの元同僚というご縁で、ABさんと知り合ったのですが、なんとスペイン語に興味を持っている方だったのです ! その上、20年来農業を営み、ノウハウがある。美保子どんなにラッキーなの ! と言う感じでした。そして去年お友達になったREさんも「私も畑したい!」と言うので、「じゃ、みんなでファームをしよう〜」という運びになったわけです。 近所の畑にシシトウを取りに行ってくれたYKさん、帰りに5分間の雨。傘を持ってお出迎え「そうやねぇ。収穫祭をしようや、夏には。BBQやな、鮎も解禁になるし」と言ったのがABさん。季節の頃はGW前。HSさんのご好意で、耕運機やら、クワやら、何から何まで貸していただき、早速耕し、植え付けし…。 「鮎解禁になったし、釣りに行ってくるわ。七月初めにBBQ、日時押さえておいて、美保子さん」と言うことで、七月四日、月曜日に決定。自由業の休日は、土日ではありません。 「ダメやわ。暑すぎて、鮎おらんかったわ」と七匹釣ったABさんからの連絡を受けていながら、BBQを決行する私も、かなり自由人です。「鮎がダメなら、羊だ !」 羊 ? そうなんです。これは次回以降お話ししますが、友達になったモンゴル人アンちゃんとの物語なんです。 三年前に鈴木大拙記念館のオーディオガイドのスペイン語訳を頼まれたのですが、その時にアンちゃんと知り合っていたのです(その経緯は、いつかコラムで)。アンちゃんは翻訳事務所を経営する、モンゴル出身の日本大好きな人。それ以外にもお店を経営したりと、お互い忙しくて、今年になってやっと再会の運びとなりました。いきなり畑見学、畑BBQです。気が合うと、親しくなるのはとても早いものです。 最初はへっぴり腰の若者たち、すっかり収穫を終えてくれた。キタアカリ畑BBQは、ABさんと設営。炎天下での太陽光を遮る日除けや、地面に防草シートを貼りながら、「じゃ、わしゃ、パエリア(Paella=スペインのお米料理)を作るわ」とはABさん。 様々な角度から撮影された出来上がりのパエリア。しかし、火起こしからアサリでスープを取る過程、蒸らしまで、ABさんが風呂椅子に座って続けてくれた実は、筆者、「奉行」は不得意なのです。たくましく行きて来ましたが、学生時代からBBQも、鍋も、「お姫様」で育ってきたので、仕切れないんです ! せめて設営と準備だけでもさせていただきます、というスタンスで…。 どんどん焼く、どんどん食べるあゆって丸ごと全部食べるんだ? 知らなかったー」と大感動のアンちゃんに撮られた一枚そうこうしていたら、ABさんのお友達、やっぱりスペイン語大好きなDEさんも登場です。おしゃれで、若々しい ! そんな彼女、BBQ大好きとのこと、「奉行」を買って出てくれました。その上、スープを作って差し入れまでしてくれて。 REさんですが、彼女も自営で、今回は13歳の「学校行けない子」をこの集まりに紹介してくれました。「ねえ、今度のBBQに、学校行けない子を連れて行っていい ?」 「もちろん、もちろん ! 大歓迎 !」 さて、当日は、と言うと、最少年齢13歳。最高年齢83歳、と言う異業種・異年齢BBQとなりました。接点は何か? 気になります? なんのことはない、異業種・異年齢、です ! 参加の皆さん、それぞれお子さん、お孫さん、おじいさん、おばあさん、お母さん、お父さん、いらっしゃるのですがぁ、血が繋がっていると、イライラしちゃうんですよね、お互い。 でも、この畑BBQって、異業種・異年齢なんですよ。11人が血の繋がりがないけれど、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、お兄さん、お姉さん、弟、妹、子供、孫、という年恰好 ! よって、好き放題、言いたい放題でも、温かい目で見守ることができるのです ! 口うるさい親の文句なんか言おうもんなら、「こんなに子供のこと考えて言っているのに」との反撃。実の親子なら、喧嘩になっちゃいますよね。 「あらぁ、いつも茹でて食べてた。焼いても食べれるのね」とは、地元のお母さんたち当日朝8時に初めて会った13歳、HLちゃん、、緊張で無口(当たり前です)。REさんのお嬢さんも参加、二十歳。人見知り。無口だけどユーモアは最高。彼女がいるだけで、場が明るくなるって感じの、華のあるFMちゃん ! MDさん最年長で83歳 ! HSさんその次。近隣に住むYKさんは73歳。DEさんも73、アンちゃんは49 ! REちゃんは44。あ、仕事の後に駆けつけたHLちゃんのママも、40代。 おっと、ABさん、白一点のナイスガイ、75歳 ! なんと、全員の年齢を足して、11で割ってみたところ、私の年齢がほぼほぼ平均値でした ! 「ああ、本当にありがとう。今日はとっても楽しかったわ〜。久々におしゃべりして、笑ったわ〜。デイサービスって行ったことないけれど、こんな感じなんかね ? 本当にありがとうね」とはHSさん(82)。 「あら、デイサービスには行っていないの ? じゃあ、私たちがちょくちょく呼びに来ます ! これからも色々教えてね ! 」 アンちゃんが調達してくれた羊のリブ。丸ごと焼いて、骨に沿って切ってくれ。残念ながらモンゴルからはお肉は入ってこないとのこと。アイスランドのお肉首にはタオル、帽子に日除け。熱中症予防のお茶とお水は必須「さ、HLちゃん、今日、何学んだ ?」には、「『ジャガイモをどうやって掘るか』とかぁ『炭からどうやって火を起こすか』などなどです !」と満面の笑顔。 ナイス ! 「学校」では学べないことを、この畑スクールから学べばいいんです ! 「また声かけるからね〜。漬物とか、野菜の育て方とか教えてね〜」と、HSさんの度重なるお礼には、そう答えました。 「先生は、あなたの周りにいくらでもいるからねぇ、毎日が学習よ ! で、誰も点数つけないから ! リラックスして !」と、HLちゃんには声をかけました。 畑デイサービスに畑フリースクール、案外身近に作れそうじゃないですか ? それも、今回は一石二鳥 ! スペイン料理パエリアに、チョリソ・ソーセージ(chorizo=腸詰のソーセージ)を焼き、日本ではあまり食べる機会のない羊肉 ! スープはちょっぴり東欧風。ヨーグルトをトッピングでした。日本にいながら、外国ムード満載です。 「ありゃァ、生まれて初めて食べたわ、こんなハイカラなもん。あれやねぇ、確か寿命が100日伸びるんやったかい ?」というMDさんに、「アッラァ〜、75日やわいね〜」とはYKさん。スペインでももちろんこういう集まりは多々あるのですが、地元に戻って来たからこそ実現できた、地域密着型の楽しい一日でした。みなさんも、夏を満喫してくださいね ! 今月のフレーズは ¡Qué día tan agradable hace!(ケ・ディア・タン・アグラダブレ・アセ) 「なんて良い日なの!」 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月