スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

7月 ! 夏がやって来ました ! 夏といえばBBQ !
そんなわけで、今日は、異業種・異年齢総勢11名の集まりのお話をしますね。スペインと何の関係があるって ? それは、お楽しみ。読んでみてくださいね。

デイサービスとフリースクール ?

バルセロナにいた頃は、庭はもちろんのこと、テラスもないアパート暮らしでした。三階で日当たりのいいピソ(Piso=アパートに相当)は、建物全体が親友家族の持ち物だったので、安全であり、孤独も感じず、とても快適だったのですが、なにしろ「土」が無い、という生活でした。地下鉄まで徒歩1分、買い物も、町の中心に出るのにも便利なサンツと言う地区に住んでいました。若かったので、エレベーター無しの三階住まいも苦にはならなかったのです。本当に良い住まいでした。

泣く泣くバルセロナを離れる決心をして、日本へ帰国となり、なんと金沢暮らしも7年を超えました。その7年の間には、当然のごとくたくさんの人生の変化があり、今に至っています。まあ、この7年はここでは語れないので、いつかお話しすることにして…。今回は「現在」のお話をします。

田んぼが続く風景に、突如ビニールシートが

両親は母20歳、父24歳で結婚し、金婚式を迎えずに熟年離婚をしました。その間に私たちが生まれて、育って、巣立って、と言うことで、結果両親の思い描いていた家庭は空っぽとなり、その結果の別れだったのかな、と想像してみます。

「子はかすがい」なんて言葉がぴったりだったのでしょうかね。そんな両親も、ここ2年で次々と他界。「孝行したい時に、親はなし状態」な筆者は、またまた迷宮に入り、人生を重〜く考えてしまったりすることもあります。

田んぼの時期以外、車が通らない農道で、荷物を搬出入。もちろん草刈りで恩返し

そんな両親の共通点は、同じお寺にお墓がある、と言うことです。これ、残された子孫にとって、とってもありがたいこと、と言うのは、このお盆の時期につくづく感じることなのではないでしょうか ?

母の家系は昔からこのお寺の檀家で、父は母と結婚してからこのお寺の先先代の住職を崇拝し、宗旨替えしたため、母の家系のお墓があるこのお寺の墓地に、自らお墓を建ててこの世を去ったのです。

BBQとなんの繋がりが、とお思いの方、もう少し頑張って読んでみてくださいね〜。

もいでは焼き、焼いては食べ。畑直送、味付けはお塩だけ !

地域密着、お寺密着だった父のマブダチ、KYさんが今年の初めに他界し、その方の畑の行方が気になりました。金沢の北部、山の中の田んぼと田んぼの間に、その畑があります。「ねえ、あの畑は誰が後を継ぐの?」とKYさんの奥さんHSさんに聞くと、「あれはMDさんの土地を使わせてもらっているのよ」と言うではないですか。「あ、いつもお会いするMDさんね。じゃあMDさんに聞いてみるね」と訪ねてみると、「あそこはうちからちょっと遠くてね。それに、私は道の反対側で畑しているから、そこまで手が回らんのやぁ。なに、美保子さん、畑したいがか?」とおっしゃる。「うん。実家の庭でも野菜育てているんだけれど、もうちょっとやってみたいんだ」と言うと快く、「ほんなら、やるまっし(それなら、やりなさい)」と言ってくださったのです。そうです。この畑を使わせていただくにあたり、両親の眠るお寺の檀家さんたちが大集合することとなったのです。

その土地を農業資材込みで使わせていただき、今日のコラムとなります。前置き長くてすみません。

常設の休憩所を拡大し、奉行さんたちも日陰で快適に。怪しい雲行きもなんのその

「ねえねえ、畑をお借りしたんだけれど、1人では面白くないし、一緒にやってくれないかな?」と声をかけたのがABさん。父のもう一人のマブダチSTさんの元同僚というご縁で、ABさんと知り合ったのですが、なんとスペイン語に興味を持っている方だったのです ! 

その上、20年来農業を営み、ノウハウがある。美保子どんなにラッキーなの ! と言う感じでした。そして去年お友達になったREさんも「私も畑したい!」と言うので、「じゃ、みんなでファームをしよう〜」という運びになったわけです。

近所の畑にシシトウを取りに行ってくれたYKさん、帰りに5分間の雨。傘を持ってお出迎え

「そうやねぇ。収穫祭をしようや、夏には。BBQやな、鮎も解禁になるし」と言ったのがABさん。季節の頃はGW前。HSさんのご好意で、耕運機やら、クワやら、何から何まで貸していただき、早速耕し、植え付けし…。

「鮎解禁になったし、釣りに行ってくるわ。七月初めにBBQ、日時押さえておいて、美保子さん」と言うことで、七月四日、月曜日に決定。自由業の休日は、土日ではありません。

「ダメやわ。暑すぎて、鮎おらんかったわ」と七匹釣ったABさんからの連絡を受けていながら、BBQを決行する私も、かなり自由人です。「鮎がダメなら、羊だ !」

羊 ? そうなんです。これは次回以降お話ししますが、友達になったモンゴル人アンちゃんとの物語なんです。

三年前に鈴木大拙記念館のオーディオガイドのスペイン語訳を頼まれたのですが、その時にアンちゃんと知り合っていたのです(その経緯は、いつかコラムで)。アンちゃんは翻訳事務所を経営する、モンゴル出身の日本大好きな人。それ以外にもお店を経営したりと、お互い忙しくて、今年になってやっと再会の運びとなりました。いきなり畑見学、畑BBQです。気が合うと、親しくなるのはとても早いものです。

最初はへっぴり腰の若者たち、すっかり収穫を終えてくれた。キタアカリ

畑BBQは、ABさんと設営。炎天下での太陽光を遮る日除けや、地面に防草シートを貼りながら、「じゃ、わしゃ、パエリア(Paella=スペインのお米料理)を作るわ」とはABさん。

様々な角度から撮影された出来上がりのパエリア。しかし、火起こしからアサリでスープを取る過程、蒸らしまで、ABさんが風呂椅子に座って続けてくれた

実は、筆者、「奉行」は不得意なのです。たくましく行きて来ましたが、学生時代からBBQも、鍋も、「お姫様」で育ってきたので、仕切れないんです ! せめて設営と準備だけでもさせていただきます、というスタンスで…。

どんどん焼く、どんどん食べる
あゆって丸ごと全部食べるんだ? 知らなかったー」と大感動のアンちゃんに撮られた一枚

そうこうしていたら、ABさんのお友達、やっぱりスペイン語大好きなDEさんも登場です。おしゃれで、若々しい ! そんな彼女、BBQ大好きとのこと、「奉行」を買って出てくれました。その上、スープを作って差し入れまでしてくれて。

REさんですが、彼女も自営で、今回は13歳の「学校行けない子」をこの集まりに紹介してくれました。「ねえ、今度のBBQに、学校行けない子を連れて行っていい ?」 「もちろん、もちろん ! 大歓迎 !」

さて、当日は、と言うと、最少年齢13歳。最高年齢83歳、と言う異業種・異年齢BBQとなりました。接点は何か? 気になります? なんのことはない、異業種・異年齢、です !

参加の皆さん、それぞれお子さん、お孫さん、おじいさん、おばあさん、お母さん、お父さん、いらっしゃるのですがぁ、血が繋がっていると、イライラしちゃうんですよね、お互い。

でも、この畑BBQって、異業種・異年齢なんですよ。11人が血の繋がりがないけれど、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、お兄さん、お姉さん、弟、妹、子供、孫、という年恰好 ! よって、好き放題、言いたい放題でも、温かい目で見守ることができるのです ! 口うるさい親の文句なんか言おうもんなら、「こんなに子供のこと考えて言っているのに」との反撃。実の親子なら、喧嘩になっちゃいますよね。

「あらぁ、いつも茹でて食べてた。焼いても食べれるのね」とは、地元のお母さんたち

当日朝8時に初めて会った13歳、HLちゃん、、緊張で無口(当たり前です)。REさんのお嬢さんも参加、二十歳。人見知り。無口だけどユーモアは最高。彼女がいるだけで、場が明るくなるって感じの、華のあるFMちゃん ! MDさん最年長で83歳 ! HSさんその次。近隣に住むYKさんは73歳。DEさんも73、アンちゃんは49 ! REちゃんは44。あ、仕事の後に駆けつけたHLちゃんのママも、40代。 おっと、ABさん、白一点のナイスガイ、75歳 ! なんと、全員の年齢を足して、11で割ってみたところ、私の年齢がほぼほぼ平均値でした !

「ああ、本当にありがとう。今日はとっても楽しかったわ〜。久々におしゃべりして、笑ったわ〜。デイサービスって行ったことないけれど、こんな感じなんかね ? 本当にありがとうね」とはHSさん(82)。

「あら、デイサービスには行っていないの ? じゃあ、私たちがちょくちょく呼びに来ます ! これからも色々教えてね ! 」

アンちゃんが調達してくれた羊のリブ。丸ごと焼いて、骨に沿って切ってくれ。残念ながらモンゴルからはお肉は入ってこないとのこと。アイスランドのお肉
首にはタオル、帽子に日除け。熱中症予防のお茶とお水は必須

「さ、HLちゃん、今日、何学んだ ?」には、「『ジャガイモをどうやって掘るか』とかぁ『炭からどうやって火を起こすか』などなどです !」と満面の笑顔。

ナイス ! 「学校」では学べないことを、この畑スクールから学べばいいんです !

「また声かけるからね〜。漬物とか、野菜の育て方とか教えてね〜」と、HSさんの度重なるお礼には、そう答えました。

「先生は、あなたの周りにいくらでもいるからねぇ、毎日が学習よ ! で、誰も点数つけないから ! リラックスして !」と、HLちゃんには声をかけました。

畑デイサービスに畑フリースクール、案外身近に作れそうじゃないですか ? それも、今回は一石二鳥 ! スペイン料理パエリアに、チョリソ・ソーセージ(chorizo=腸詰のソーセージ)を焼き、日本ではあまり食べる機会のない羊肉 ! スープはちょっぴり東欧風。ヨーグルトをトッピングでした。日本にいながら、外国ムード満載です。

「ありゃァ、生まれて初めて食べたわ、こんなハイカラなもん。あれやねぇ、確か寿命が100日伸びるんやったかい ?」というMDさんに、「アッラァ〜、75日やわいね〜」とはYKさん。スペインでももちろんこういう集まりは多々あるのですが、地元に戻って来たからこそ実現できた、地域密着型の楽しい一日でした。みなさんも、夏を満喫してくださいね !

今月のフレーズは
¡Qué día tan agradable hace!(ケ・ディア・タン・アグラダブレ・アセ)
「なんて良い日なの!」