スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

2023年もあとわずか。なんだかあっという間に一年が過ぎていくような気がして、そわそわしますね。やれ氷河期に突入だ、やれ気候変動だ、エル・ニーニョ現象だ、ラ・ニーニャ現象だ、と取りざたされている昨今ですが、一年365日はあっという間。来年は366日の年でしたね。さて、今日は先月に続き、友人オリオール一行の珍道中をお届けします。

「ああ ! こんなところに僕の作ったボードゲーム ! 」

先月、友人オリオール・コマスのことを少しご紹介しました。ボードゲームデザイナーで、数々のゲームを考案したり、書籍の出版、ゲーマーたちの集いイベントの監修、主催などを行なって来ました。今回、無事に東京、京都の滞在を終え、金沢に5泊で遊びに来ました。1日目は11月号でご紹介しましたね。レンタカー手配できないハプニング。今日はちょっと飛び越えて、一番ハードな3日目です。なぜなら、彼のボードゲーム愛によって、とても楽しい日になったからです。

パッケージツアーに入ると、計画された場所に的確に連れて行ってもらえます。時間は正確、乗り物の手配の心配もなく、スムーズに旅行ができます。それはスペインでも同じこと。ただ、私が金沢にいるからなのか、それとも私の友達はみんなチャレンジャーなのか、今まで1人としてパッケージツアーで来日した友人がいない、というのも面白いものです。それほど、日本は治安も良く、交通網も発達している国だから、なんでしょうね。

ただ、4人での旅行、となると、少々違ってくるのかな、というのも感想です。2カップルとはいえ、それぞれ好みも趣味も違う、職業も違う、となると、行きたい場所も見たいものも、食べたいものも違うからです。そんな中、金沢で5泊してもらえると、かなりゆったりと、それぞれが見たいもの、食べたいものを発見することができるわけです。

毎年恒例の畑バーベキュー。酷暑の今年は9月末の開催。地元のお母さまがたは、美保子がどんなお客さまをお連れしても、まったく驚くことなく、せっせと鮎のお世話

そのうちの1つが、オリオールの「絶対、ここ行く ! 」の一言。「ゲームスペース金沢っていうんだけれど、場所はここ ! 」と、スマホを見せるではありませんか ! 実は、1日目に能登から金沢に戻った19時半に、駅で「バスでいけるはず ! 」と言い出したのです。
最近の金沢は、夜遅くまでバスが運行しているものの、目的地は中心部ではなく、帰りのバスはどうしよう、ということが頭をよぎり、「ううううん、別の日にしよう。車じゃないと不便だから」といえば、アンナも「ちょっと疲れたわ、今日は。網焼きでお腹もいっぱい、夕食もいらないし、旅館まで帰って休みましょう」と助け船。19時半はスペインではまだ活動時間。増してゲームスペースの開店は平日19時。

3日目は、友達夫婦の旦那さんジャウマが職場とのリモート会議をすることになっていて、それが日本時間の午後。大学で文学の先生をしている彼は、「本屋さんに行きたいんだな~。その日はみんなと別れて、旅館に残り、午前中は本屋さんをぶらぶらするよ」という申し出。じゃあ、決まった。3人なら軽自動車でも大丈夫だから、この日は申し訳ないけれど、別行動で ! 」

さて、先ほど「一番ハードな3日目」と書きましたが、9月末で唯一雨が降らなかったその日、スケジーュールはそれはそれは分刻みで、重役並みでした。

時系列 場所 行動 リクエスト
10:30 森本駅集合 3人をピックアップ
11:00 地元の方との畑バーベキュー 美保子
15:00 茶道教室興風園 能登の体験だけでは満足いかず、お茶会体験 アンナ
17:00 旅館 現地集合で15時のお茶会には参加したが、
単独リモート会議参加
ジャウマ
17:30 にし茶屋街 3人をピックアップ
18:00 海岸 地平線に落ちる夕日鑑賞 ブルナ
19:00 ゲームスペース金沢 ボードゲームデザイナーの血が騒ぐ オリオール

この9月29日、4人全員プラス私のイベントも開催することができ、めでたしめでたし、だったわけです。

興風園でのお茶体験。お茶会での言葉が説明されているプリントを見ながら、ローマ字で日本語を読み上げる。お茶碗の向きなど、今まで考えていなかった作法に、神妙な面持ちの4人

さて、今日は文字数の関係上、ゲームスペース金沢のことをメインに書きますね。

まだ蚊の多い時期、気温も高く、海岸から戻ってくるブルナたちを待っている間に数カ所蚊に刺された筆者。だんだん夕暮れも早まり、ナビを頼りに目的地に向かいます。スマホを持ちながら、あまりスマホを使いこなしていない筆者、ゲームスペース金沢の場所がわかりません。
そこで「目的地」とナビが示す先のコンビニに入り、飲み物とおやつを調達、レジの方に「すみません、この辺りにゲームスペース金沢、というところがあるんですが~」と聞くと、「ああ、聞いたことありますけれど、多分この通り沿いだとは思いますが…」と言われ、行き過ぎてしまったことに気づきました。それでもまだ、19時には15分ほどあり、近所のドラッグストアに移動。住宅街にある商店はあまり行くことがないだろう、と4人で見学。「あ、このお茶を買おう」とか、「あ、このお茶入れる空のパック、便利なのよ、スペインではあまり見かけないから、買って行くわ」とそれなりにショッピング。

海に太陽が沈む風景が素晴らしい、という口コミを読んだのか、ブルナは夕日が見たいと言った。大抵地平線の真上に雲がかかり、海に沈む瞬間の太陽は見れないのだが、この日は綺麗に見えた

駐車場に戻り、「さて、あと5分」などと話していると、近づいてくる親子連れさん。「あのお、ゲームスペース金沢を探していらっしゃいましたよね、コンビニで。」「え ? 聞いてらっしゃったのね」と。そりゃあ、中心部でない住宅地のコンビニで、異国の3人を引き連れて、目立たないわけがない~。お子さんが時折週末に行ったことがある、ということで場所をご存知だったお父さんは、丁寧に道を教えてくださいました。おかげで無事行くことができました。その節はありがとうございました。

筆者が普段行かない地域の住宅街の一角に、このゲームスペース金沢はあります。オリオールは滞在する町では、国を問わずゲーム関連の施設、ショップ、スペースを覗くと言います。彼がボードゲームデザイナーだから、当然のことでしょう。多分金沢にはここ以外にもあると思うのですが、「ここに行く ! 」だったわけです。入り口は住宅街、建物は鉄筋で、もしかすると昔、何かの会社か工場だったのかな、という玄関。用意されているスリッパの数がすごくて、それも全て一品もののキャラクターであったり、アニマルだったり。「お、アットホーム ! 」という雰囲気です。恐る恐る、人がいるであろう2階に着き、ガラスのドアから顔を覗かせると、優しそうな方が手招きしています。

「あのう…。スペインから友達が来ていて、どうしてもこちらにお邪魔したい、と言っていたので突然来ました」「ああ、どうぞどうぞ ! 」ゲーマーたちに解放されているこのスペース、特にマゴマゴする必要もなかったのでしょうが、さすがに初めての場所は緊張するんです…。

お互いの紹介もそっちのけ、オリオールはゲームスペースの数々のボードゲームやその雰囲気を見て、ニコニコです。女性陣3人は付き添いなので、やはりキョロキョロ。そして、「おおおおお ! 」という雄叫びに近い声が。

「No m’ho crec! (ノー・ムゥ・クレック ! ) Per què? (パル・ケ ? ) increïble! (インクレイーブラ ! ) = 信じられない ! なんで ? 信じられない ! 」と。なんと、2005年にオリオールの手がけた「Ágora Barcelona アゴラ・バルセロナ」というゲームが棚にあるではないですか ! ゲームスペース金沢の「おやじ」さんは、様々なゲームを新品、中古問わず購入するのですが、ドイツから取り寄せたゲームの中に、このバルセロナ発祥のゲームが入っていたというのです。

「ええええ ? あなたがデザインしたゲームですか ? 」「Yes!!! 信じられない ! 」ボードゲームプレイヤーと、ボードゲームデザイナーのであい、満面の笑み

「え ? まさか、このゲームを作ったデザイナーさんなんですか ? 」と「おやじ」さんもびっくり顔です。「え、なになに ? ええええ ? このゲームのデザイナーさん ? 」と「もんじろう」さんも驚いて寄って来ます。ほらほら、僕の名前 ! これ見て ! とパスポートを開き、おおおおおお、ご本人 ! すご~い ! これ、カタルーニャ語、英語、日本語、スペイン語が飛び交っての会話です。満面の笑みを浮かべるオリオールとゲームスペース金沢の面々。

「美保子、ガウディのタイルゲーム、今金沢に持っている ? 」「いや、バルセロナからの引越し荷物が大変で、ゲーム好きのお友達にプレゼントしちゃって、日本には持ってこなかったの」「よし、バルセロナに戻ったら、郵送するから、ゲームスペースに1つ届けてよ。美保子の分も1つ送るから ! 」

こんなことってあるんですね ? 世の中に一体いくつのボードゲームが世に出回っているのかは知りませんが、とにかくかなりレアな体験です。多分、私たち、オリオールのボードゲーム愛に引き寄せられたんでしょうね ? 金沢到着から「ゲームスペース金沢に行く ! 」と言っていたオリオール。そんな夜でした。

ごいたのルールを説明してもらい、早速挑戦。ボードゲームデザイナーの飲み込みの早さは並大抵ではない。早速検索

その後、能登発祥の「ごいた」というゲームを教えてもらい、ワンプレイ。「これはもう一組あるので、記念に差し上げます」というご厚意で、カード式になっている「ごいた」をプレゼントされたオリオール。帰りの車窓から見えた満月もひとしお。興奮冷め止まぬおしゃべりと笑いの中、無事旅館へ戻ってきました。ジャウマの会議は無事終了したかしら、と心配しながら…。

では、次回も珍道中は続きます。何しろ9月29日は内容の濃い1日だったので、書いても書いても書き足らない…。

それではみなさま、良いお年をお迎えください。そして、2024年もどうぞよろしくお願いいたします !

今月のフレーズ

- カタルーニャ語 -
No et preocupis! (ノー・エッ・プレオクーピス ! )
「心配しないで ! 」

- スペイン語 -
¡No te preocupes! (ノー・テ・プレオクーペス ! )
「心配しないで ! 」