スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

2023年のカレンダー、後半に突入ですね。よく、心理テストでは『お水が半分入ったグラスがあります。「まだ半分残っている」「もう半分しか残っていない」、さてあなたはどちら ? 』というものがあるのですが、まさにそんな心境です。なぜだか時間は刻々と過ぎていくものです。まあ、特に2023年の1年間と決めた目標があるわけではないので、特別な焦りはないものの、なぜか「あら、早いわね、もうお盆よ (金沢は7月がお盆のところと、8月がお盆のところが混在です) 」という会話に、「そうだねぇ。早いねぇ」と言ってしまう自分に笑ってしまいます。

東京着、1日東京ぶらぶらの後、北陸新幹線で金沢へ ! トランクがゲートにつかえて、あたふたする美々ちゃん

バルセロナに里帰りするきっかけがつかめないまま、バルセロナからは友人たちが来日してくれるので、今月もまた、外国人が日本の何を魅力と感じるか、見ていくことにしましょう。

お茶とお菓子は、やっぱり最高 !

美々ちゃんとの出会いはかれこれ5年前、彼女が金沢大学に留学してきてからになります。バルセロナの友人から「美々ちゃんっていう子が金沢に行くんだけど、美保子さん金沢在住だったよね。どうぞ宜しく」というメッセージが入り、即コンタクトを取り合い、一昔前だと大変だった連絡も、Whatsappやメッセンジャー、LINEといったアプリで格段の時短になっています。彼女の1年間の金沢大学留学中は、何度ショッピングやランチに行ったことか。

五箇山へ行く途中に立ち寄ったお蕎麦屋さんで。時期的に山菜が豊富で、からりとあがった山菜天ぷらに舌鼓を打つ2人。日本人のソウルフードとも言えるこのお蕎麦、さっぱりしすぎで苦手な外国人もいたりする

「2020年の4月には、また3ヶ月ほど金沢大学に行こうと思っているの」「あ、私は里帰りチケットがあるから、行き違いになるけど、バルセロナに行くんだよ」と話していた2019年のお盆過ぎ。結局2人とも国外には出られず、新型コロナ感染症対策という名の下に、世界的に鎖国となってしまったわけです。私はチケットを払い戻し、その後スペインに行くきっかけは無いのですが、美々ちゃんは違います。なんと、「Semana Santa (セマナ・サンタ。聖週間=イースター) に前後して休暇が取れた ! 」というではないですか。それも、「今回は北陸で10日間ゆっくりするの。金沢に行くね ! 」4年ぶりに我が家がスペインの友達の拠点になる、ということで、冬の間に大掃除がすんでいてよかった、と思ったものでした。

桜が咲いているが、まだ山には雪が。五箇山相倉合掌造りの集落は、金沢に友達が来たら、必ず訪れるお気に入りのスポット

Miriam (ミリアム) という名前の「み」から好きな漢字を選び、「美々」と名乗ることにした、ということで、「偶然にも美保子の美、だね」というのもご縁があるのでしょう。5年前には彼女のダーリンともすっかり友達になっていたので、2019年6月のバルセロナ里帰りでは、一緒に行った私の友人共々、バルセロナ近郊の観光にも連れて行ってくれました。彼の名は「イサーク」。日本名では「伊作」さんとなるわけです。

「金沢大学に留学中、田植えに来たことがあるわ ! そうよ、この村よ ! ほら、美保子に長靴借りたの覚えてる?」どうも、この村の田んぼを訪れて、手植えをして、その後村を散策することなく帰ってしまったらしく、「え〜 ? こんなに素敵なところだったのね ! あ、セミナーハウスがここね ! 一度来たかったわ〜」楽しかった留学時代を思い出しながらの散策

「美保子、私、高山って行ったことないんだけれど。金沢から遠い ? 行ける ? 」ということで、金沢からの小旅行定番の富山県五箇山に寄って、飛騨高山までドライブすることになりました。「温泉が良い ! 一泊二日、楽しみ〜」とバルセロナからのメッセージ。最近では外国から日本の宿泊施設に簡単に予約できるため、旅館選びは美々ちゃん任せ。でも、バカシオネス (Vacaciones=バカンス) 前の仕事の引き継ぎなどが忙しく、結局なんの予約もせず来日。多分こういうところが気の合う要因と思われます。私も「行き当たりばったり」な旅行が好きで、風の向くまま気の向くまま。とはいえ、気楽なようで、時には短所ともなる性質なのですが。

俳優としても活動するイサーク。見るものすべてに興味を持ち、2人の様子を写そうとスマホを向けるとちゃんとポーズをとってくれる。あいにくの小雨の中の散策も、彼のユーモアあるコメントで、笑いが絶えない

美々ちゃんの日本への興味は、日本のマンガがスペインでもブームとなった幼少期に始まり、その後、居合道、茶道、着物へと発展。金沢大学留学中には、お茶を習い、ぜひバルセロナの自宅にも茶室を作りたい、ということで茶道具集めもこの旅行の目的の1つ。高山で見つけたお茶のお店に飾ってあった釜を見て、「あああ、これ、これ。これなのよ、欲しいのは」ゆうに10キロはあると思われる釜。
「そしてこれね、オフロ」目を点にするのは、日本人でありながら、日本のことをあまり知らない筆者。「オフロ ? お風呂 ? えええ ? 」と。なんのことはない、「風炉」でした。それもゆうに10キロはありそう。もし掘り出し物が見つかれば、スーツケースに入れて持って帰るとのこと。ここまでの茶道愛、参りました。

お茶のお店で電気式の風炉も見せてもらったのですが、電気だと電圧が違うので (スペインは220V) 、それに変圧器も必要となります。ということで見せてもらうに留めました。「流派によってお道具も違うからね」とは美々ちゃん。一口に「茶道」と言っても、奥が深いようで…。興味がない、ということは、なんて罪なのだろうか。ものを知らない美保子、とは有名で、自分でも情けないのですが、知りたいことは知っているので、まあいいのかな、と。百科事典が入るほど、柔軟な脳ではないようです。

通訳をしていて常々思うことなのですが、「語学」はあくまでコミュニケーションツールであって、語学ができるから「すごい」ということにはならないのです。美々ちゃんはお茶のお店の人と日本語で会話ができるから、私の出番はありませんでした。でも、もし出番があったとしたら、多分かなり難航したものになったのではないかな、というのと、逆に多分かなり楽勝だったのかな、という2つの可能性が頭をよぎりました。というのも、今回日本人とスペイン人の共通テーマは「茶道」なので、「欲しい」「見せて」「いくら」などというベーシックな単語に、茶道のお道具の名前を言えば、誰にでもコミュニケーションができるからなのです。

高山に到着後、早速お茶を飲みに。「友達が高山に来た時に、ここが良かったって言ってて、教えてもらっていたのよ。ね、雰囲気抜群でしょ ? 」昭和の香りが漂う喫茶店。スマホの位置情報をオンにして、お気に入り登録していたこのお店を検索。地図もガイドブックも必要のなくなった外国旅行。なんと身軽になったのか…

高山の町の一角。フォトジェニックな2人、ポーズもサマになっている。全然違和感がないと感じるのは、私だけ ?

これから語学を学ぼう、と志すみなさん、「語学」自体は難しいものではないと思います。難しいのは、そのツールを使って「何を伝えたいか」ということなのです。とはいえスペイン語は動詞が主語とともに変化するので、その規則性を頭に叩き込むのは一筋縄ではいかないようですが、一度基礎を飲み込めば、あとは語彙を増やす、別の言い回しを覚える、場数を踏む、で上達していくはずです。つまり、「スペイン語を使う目的」さえ明確ならば、誰にだって使いこなすことができるのです。そうそう、小さい頃に言われた「勉強しなさい」というフレーズは忘れましょうね。「勉強」という漠然とした単語を理解できず、失敗したのは、この私なのですから〜。何しろ、今は言われなくても、日々いろいろなことを「勉強」しているのですから。

なんと、宿泊は、当日15時に高山市内の観光協会で駆け込みでお願いした。行き当たりばったりで、温泉地にはたどり着けなかったものの、おいしい夕食、おいしい朝食、お部屋も広く、大満足な3人。こだわるときには、もっと事前に調査、予約をしないと、という反省もあったが、そのあたりが「Sobre la marcha (ソブレ・ラ・マルチャ) = 行き当たりばったり」の醍醐味でもある

美々ちゃんのお茶好き、単にお茶が好きなだけではない、ということを理解したのは、我が家での団欒。特に「お茶が飲みたい」と言ってくるわけでもなく。つまり、お茶を飲む雰囲気が好き、なのです。日本人が家でも飲めるであろうコーヒーや紅茶を、わざわざ喫茶店に出向いて飲む、というあの感覚。まさにそんな感じです。わかります ? そしてそこでいただく和風スイーツ。湯呑みであったり、茶托であったり、お菓子の乗ってくるお皿であったり。そして重要なのが、お店の雰囲気。そのすべてが調和して初めて、「おいしいお茶が飲めたわ」と。

高山の古い町を散策するのが目的で、ぶらぶら。朝市を覗き、民芸品もお土産に。「郡上八幡も喜ぶと思うよ」という金沢の友人からのアドバイスが頭にあった筆者は、高山から下道で行くことになるのですが、到着したらあいにくの土砂降り。高速道路を使わないと、いろんなところで寄り道ができたのが、救いでした。

郡上八幡の水路の鯉たち

人生も旅のようなもの。急がず寄り道、その先々で出会う小さな感動を楽しむ小旅行、これからもっと行きたいと思います。

ドライブ中に目に入ったお庭。シバザクラが満開で、曇り空も気にならず

庄川ザクラに遭遇。雨と夕方ということもあり、ライトアップしていたというのにちょっと暗め。金沢では桜が散ってしまっていた4月後半に桜とは、なんとラッキーな

では、今月のフレーズを。今月も、スペイン語とカタルーニャ語の2つにしてみました。

- スペイン語 -
Me gusta mucho el té verde. (メ・グスタ・ムーチョ・エル・テ・ベルデ)
「緑茶が大好きです。」

- カタルーニャ語 -
M’agrada molt el te verd. (マグラダ・モル・アル・テ・ベール)
「緑茶が大好きです。」