スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

5年ぶりの里帰り、バルセロナを中心としたカタルーニャ地方は、どんなふうに変わっているかしら ? そんなワクワクの中、小松、羽田、ドーハ、バルセロナと飛行機を3つ乗換えて、途中それぞれ4時間ほどの乗り換え時間のため、たっぷり24時間を越えての旅、フラフラで到着したバルセロナの空港。

5年ぶりの里帰り ! さて、バルセロナはどう変わってる ?

さて、去年の今頃、金沢大学に留学していた美々ちゃんが、久々にダーリン、イサーク (伊作) さんと日本を訪問した時のお話をしました (2023年7月号) 。金沢の我が家を起点にし、高山に行ったり、郡上八幡に行ったり、というのんびりとした旅行を楽しみましたが、今回は、逆に彼らのお家に滞在することになったのです。到着したばかりなのですが、あまりに楽しく、早速みなさんにご紹介することにしました。あと1ヶ月ある長期休暇、しばらくまたスペインの魅力をお届けできることと思いますので、お楽しみに !

お茶を習っている美々ちゃん、前回の日本滞在では骨董屋さんで風炉と釜を探していたのですが、見つからず、その後、筆者の知り合いの納戸の大掃除で見つかったものをいただくことになりました。

納戸の整理を手伝ったら、探し物発見。ミニチュアお琴は、次回のお土産に

さて、風炉が10キロ、釜が4キロ、その他付属品を入れて約15キロ。こんなものを郵便で送る、となると大変なことで、ずっと我が家に預かっていました。が、今回の旅行で持って行くことに。「当座、釜があれば、練習するのに気合が入るのよ」と。当初4キロほどの釜だけを持って行くつもりが、じゃあ風炉も持って行ってあげよう、という決断に…。

「えー、そんな重いもの持って行ってあげるの ? 」と言われたりもしましたし、実際「えー、重すぎるし、他に何も持って行けないじゃん」と、自分で決断したくせに、後悔を感じたりもしましたが、そこは筆者の性格なのかも知れません。でも、いつもお互いにでき得ることをして差し上げる私たちの友達関係、やっぱり友達が喜ぶ顔は見たいではありませんか !

ドーハの空港は、何しろ広く、緑の空間も充実。長い乗り換え時間があっという間に過ぎていった。そしてお待ちかねのバルセロナの空港 !

空港に迎えにきてくれた2人、そこには9ヶ月の息子ちゃんも一緒にお出迎え ! なんと、前回は、身重での日本滞在だったのです。以前は、お迎えといえば、空港の駐車場に車を入れて、出口まできてくれる、というものだったのですが、今回は違います。

空港の無料Wi-Fiに繋げて、ワッツアップで通話をすると、「美保子、入国審査を終えて出てきたら、上階の出口まできてくれる ? 乗降専用の駐車場システムができてね。15分以内なら、そこにお見送りやお迎えの車が停車できるのよ。駐車場に停めちゃうと、お金かかるからねー」と。恐るべし物価高 ? 30分や1時間でお金を払うなんて、ということ ? でも確かに、荷物をカートに乗せて移動させれば、苦にはなりません。ただ、カートのブレーキシステムが効きすぎて、エスカレーターで周囲の人を巻き込んでのストップ事故 ( ? ) が起き、迷惑をかけてしまったのですが…。調べると、バルセロナのプラット空港の駐車料金は1分間0.06€、つまり10分で0.60€ (現時点で100円越え) 。そうなると、やっぱり考えちゃうのでしょう。たかだか荷物を載せるだけだから、と。あくまでも合理的です。勝手を知っている人だからできることですが、いきなり「空港の外に出てね」というのは、初めてバルセロナを訪れる人にとっては、ちょっとハードルが高いかもしれませんね。

スーパーまでお買い物。ベビーカーに乗るのがイヤ、とごねた赤ちゃんを抱っこ。郊外の環境は、至る所に緑があり、癒される

赤ちゃんの登場で、すっかり生活のペースが変わってしまった2人なのですが、お家に着くとなんというのんびりとした環境なのでしょう、と感じました。バルセロナの北西約20キロにあるお家は、イサークさんのご両親の実家で、3階は家族3人、2階は彼のお母さんのお住まい。お母さんは夏の間は別のお家に行くので、自由に使って構わないから、というご招待です。

まずはお庭。いちじく、レモン、キンカン、くるみ、さくらんぼ、枇杷(びわ)、季節ごとに様々なお花と果物が楽しめるとのこと、早速食いしん坊の筆者は、キンカンと枇杷をいただきました。「ここにプールがあったんだけど、水漏れするし、お隣の叔父さんのお家にもプールがあるから、取り払ったの。で、ここに茶室をつくるのよ ! 」という壮大な計画。金沢でもその計画を聞いていて、でもまだ見ぬお家のお庭の茶室計画、今一つ想像できなかったのですが、実際にお庭を見ると「なるほど」と頷けます。「そしてここは小さな菜園にするの」という区画もあり、私の滞在中になんとか形にしてあげられたら、と考えながら、まずは時差ボケの体調を元に戻すことに専念です。

タイヤ付き買い物カゴは、そのままゴロゴロ引っ張って移動できる。ちっちゃい空気式プールがあれば、夏は快適かも、と物色中

「ね、美々ちゃん、今日の夕食はPica pica (ピカピカ=つまみをつまむ) で良いよね ? 久しぶりに食べたいものがたくさんあるの。スーパーに連れて行ってくれない ? 」という提案に、「そうなのよ、私たちも昨日実家から戻ってきて、冷蔵庫が空っぽなのよね。ダーリンは夜、日本料理の講座に行くって言ってて、帰りが遅いし、私たちだけなの。赤ちゃんが寝てから、Brindiz (ブリンディス=祝杯・乾杯) ね ! 」

新型コロナパンデミック騒動中にできた、という近所のスーパーにお散歩がてら買い物です。「ロックダウン中は、スーパーに買い物へは行けたけれど、車で出かけなきゃならず、大変だったのよ。そのおかげとでも言えるのかしら、近所にスーパーが出来てね。便利になったわ」と。日本の「外出を控える」どころではなく、かなり厳しい罰則が行われたヨーロッパですが、それぞれの国の憲法や法律の違いなど、日本はまだまだ国民の権利が尊重されているので、助かります。こちらでは、「じゃあ買い物のふりして、家にある買い置きしたものを持って散歩すれば良いんじゃない ? 」と考えた人もいたようですが、警官に止められたら、レシートを見せなければならない、なんてこともあったようで、日本とは全然違う厳しさだったようです。

そんなことを話しながらスーパーに到着。「わー。美味しそうなチーズ ! 腸詰も色々買っていきましょう ! Brindizにはやっぱりワインよね ! 」と、感動が止まらない筆者。目移りしながらの注文、美味しければ値段はどうでも良い、というかなり危険な買い物です。「あ、そのチョリソー (chorizo (スペイン語) 、xoriço (カタラン語) =香辛料が使われた豚肉の腸詰) 、辛いやつよね ? 100グラム ! 」「あ、そっちのはジョンガニーサ (llonganiza (カタラン語) 、ロンガニーサ longaniza (スペイン語) ) ね。それも100グラム ! 」。機械のカッターで薄く切ってもらいます。売り子さんは「もうこれでいいの ? 」と言い、4種類を袋に入れ、プライスシールを貼って、「はいどうぞ」。それを買い物かごに。「また明日、違うのを買いに来るから大丈夫 ! 」「それにしても、スペイン語上手よねー」というコメントに、「ありがとう。なんせ昔、27年バルセロナに住んでいたからねー、今回5年ぶりに来たんだけど、やっぱり腸詰を見ると、ワクワクするわ ! また明日来るね ! 」と会話も尽きません。

チーズはすでにパック詰めされたものを購入。腸詰を入れてくれた柔らかい袋は、オーガニック素材なので、生ゴミと一緒に廃棄可能。エコブームは、食材のみならず、包装にも及び、環境保全があちこちで見受けられる

ミニトマトのパッケージに注目 ! ワビサビって ! 日本語がこんなところにも !

ワインといえば、もっぱら赤が好まれるのですが、最近赤ワインが重く感じるのは、透明な日本酒に慣れたせいかな、などと思い、「美々ちゃん、白でいい ? どれが美味しいかな ? 」と品定め。上を見ても、下を見てもキリがないので、7ユーロほどのボトルを一本。「明日の分は明日買いに来ようっと。お家に置いておいたら、つい手が出てしまって飲みすぎちゃうからね」

さて、買い物終了、支払いです。レジで観察すると、ほとんどの人がキャッシュレス決済。スマホをかざす人、クレジットカードを出す人、スーパーの課金式カードで払う人、老若男女問わず、です。「現金なんて、ほとんど使わないわよ、今は」と言われていたのでドキドキしながら現金での支払いです。でも、ちゃんと50ユーロ札を受け取ってもらい、お釣りも現金で ! 物価上昇は万国共通。あっという間に50€近くのお買い物に…。現時点での1€が170円近い超円安。あ、だめだ、円に換算なんてしちゃったら、何にも買えなくなるぞ、美保子、と勇気を奮い立たせながらのショッピングです。

幸い、5年前の滞在の時の値段が頭に残っていたのと、その時に余ったユーロを使っているので、「まあ、せっかくはるばる時間をかけて故郷に戻って来たんだから、美味しいものを食べて飲まなきゃ意味ないよね」と自分を納得させます。

お皿に乗せると、いい感じ。赤ちゃんがいるとなかなか外食もままならず、でもちょっとした工夫でおうちごはんもこんなに彩りを増す

盆と正月が一緒に来たようなご馳走夕食と、友とのおしゃべりは、何よりのご褒美です。「実は、明日もダーリンは帰りが遅くなるのよねー。赤ちゃんのお世話は私の係になっちゃうわ。ワンオペだと、やっぱり大変よー。でも、私の仕事は在宅だから、ゆるゆるやっていくわ ! 」と、これもまたゆとりが感じられます。

こんな感じで、無事故郷のバルセロナに到着です ! 普段なら、バルセロナ市内の友人宅にお邪魔するのですが、今回は郊外の美々ちゃん宅に潜入 ! これから1ヶ月、どんなことが起こるのか、また逐一ご報告しますね ! 日本とは一味違うスペインのゆとり、お楽しみに !

枇杷、キンカンなどが植っている、ダーリンのお父さんから受け継いだお家。様々なリフォームがされてきたので、住みやすくなっている。そしてこれからもますます楽しいものに変わっていくようだ

今月のフレーズ

Chorizo [スペイン語] / Xoriço [カタラン語] (チョリソー)
「香辛料入り辛めの豚の腸詰」

Longaniza [スペイン語] / Llonganiza [カタラン語] (ロンガニーサ・ジョンガニーサ)
「それほど辛くない、サラミに少し似ている腸詰」

Pica pica (ピカ・ピカ)
「動詞Picar (つまむ) から派生した、おつまみをつまむ感覚の食事形態」