2022/09/12 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.59 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 お盆も終わり、そろそろ秋野菜を作るため、畑の準備をする時期に来ましたが、まるで梅雨が戻って来たかのように連日雨です。大きくなったトマトは、雨と風で倒れかかり、水が多すぎて割れてきたり、と、ちょっと悲しい晩夏です。それでも、スイカやウリ、メロンなどが遅れて収穫でき、嬉しい晩夏でもあります。今日は、筆者とメロンの関係をお話ししますね。 まんじゅう怖い、ならぬ、「メロン、怖い !」スペインをはじめとして、イタリアやフランスでは、Melón con jamón (メロン・コン・ハモン=生ハムメロン)という一品が食されます。夏のコース料理や定食の前菜として人気があり、食欲が減退する夏の暑さの中でも”つるり”といただける、最強の一品。メロンの甘みと、生ハムの塩が絶妙にマッチします。お家でも簡単に用意でき、見た目も素敵なのですが、筆者はほぼ、家で作ることはありません。「メロンを切る」「生ハムを乗っける」というツーステップの一品なのに、です。え~、そこまで料理オンチなの ? という声が聞こえてきます。いえいえ、お料理、好きです。バルセロナでは、日本食のワークショップをしていたし、裏巻きの巻き寿司だってできます〜。でも、Melón con jamónは、だ・め・な・ん・で・す。 Melón con jamónは、イタリア発祥、スペインへ渡り、その後フランスに、と言う記事があった。プロヴァンスのとある町特産のメロンに、生ハムを。ハムの部位によって、味も食感も違う。もちろん、スペインではメロンをデザートとしても食べます。朝食にフルーツを食べる人は、朝でも食べます。冷蔵庫に丸ごと一個のメロンを冷やし、食べるときに弓形に切っていく、というのがスタンダードのようです。「さ、今日のデザートにはメロンがあるわよ」と大皿に乗ったメロンがテーブルに届き、長い包丁で弓形に切り分けてくれ、目の前に置かれます。 「うへぇ~」 メロン、トマト、モッツァレラにミント、野菜か果物か、カテゴリー化は難しい。サラダで。京都にある「バルセロナ文化センター」のセンター長、ロサリア氏とは、私がバルセロナに住み始めた1988年に知り合ったというお話は、以前させていただきました。そしてそれ以来、彼女のご実家にも遊びに行くようになったのです。その後、私はバルセロナに住み続け、ロサリア氏は京都に住むことになったわけです。 ロゼワインで乾杯。数年に一度、筆者の両親(もしくは母)がバルセロナを訪れた際には、ロサリア氏の実家に遊びに行くのが慣習となっていました。昼食をご馳走になり、歓談の続くテーブルで、デザートを見た筆者の一言…。 Melón con jamónの場合は、ちゃんと種を取り除くが、皮はついたまま。ナイフとフォークでいただく。「うへぇ~」 デザートを切り分けてくれていたのはお父さん。「お、美保子、どうした ?」 「あのね、このメロンの種のツブツブ、イヤなんだ〜」と目を背けて答えると、「おお、そうかい〜」、と持っていた包丁で、メロン中心部の種を自分のデザート皿に綺麗に取り除いてくれて、私のお皿にメロンを乗せ直し、「はい、これ美保子の分」と渡してくれました。それを一部始終見ていた母は、目をまん丸にし、大驚きです。 『あんたぁ、うちの娘って、ほんととんでもなくってね。バルセロナのお友達のお父さんがデザート切り分けてくださっててね。そのメロンの種、娘がイヤだっていうもんだから、はいはい、って丁寧に種を取ってくれるのよ~。それも自分のお皿に種をよけて、娘のお皿には種一つ残っていないの。もう、びっくりしたわぁ』 これが、母のバルセロナの思い出話のようで、会う人会う人に語っていました。 生ハムは、スーパーでももちろん購入 できるが、Charcutería (チャルクテリーア / シャルクトリー = フランス語由来で、加工した豚肉 専門店の意) の方が種類が豊富だ。その場でナイフで切ってくれたり、すでに真空パックになっ ている場合もある。さて、今になっては、「何に」びっくりしたのかを知るすべはありませんが、ちょっと考察してみました。 豊富な腸詰がたくさんあるが、メロンと組み合わせるのは生ハム。 デザートのメロンを切り分けているのが、「お父さん」であったこと デザートのメロンに、種がついてきて、各自種を避けて食べること よそのお家で、なんの遠慮もなく、わがままに「種がイヤ」と言い放つ娘 娘のわがままに、まるで自分の娘のように答え、種を丁寧に一つ残らず取り除いてくれた優しいお父さん みなさんは、どう思われますか ? メロンに赤ワインを入れて、デザートとしていただくのも乙なもの。先日、「メロンたくさん取れたんだけれど、食べてください。主人が趣味で作っているんだけれど」と、アールスメロン (マスクメロンなのかしら ? 表面にあみあみな模様のあるメロン) を一ついただきました。「趣味でこんなにすごいメロンができるんダァ」が感想。その二週間ほど前に、「畑でできたよ、美保子さん」と、3つ取れたプリンスメロンを1つどうぞ、と言われたのですが、「いやぁ、メロンは今ひとつ苦手なので、みんなで分けて食べて」と丁重にお断りしました。それでも「キナウリ (マクワウリというらしい) 取れたので、玄関に置いておいたよ」とかで、家にウリ類が集まってきました。「まんじゅう怖い」ならぬ「メロン怖い」筆者にとって、頭の痛い案件です。 おしゃれなレストランでいただいたお料理にも、苦手なものが…。そのツブツブ、そのあわあわ、ダメ。写真をパチリ、の後は、即フォークでまぜまぜ。「そっか、縦に切らずに、頭部分を切り取って、中をスプーンで掻き出せば、種を見なくてもいいんだ」と、キナウリの方は一つ食べましたが、問題はアールスメロンです…。大きい。中をくり抜くには、顔をそむけながら処理できない大きさ。それに、1人では食べきれない。でも、メロンは食べたい。…ということで、お盆でお寺に行くことになっていたので、お寺に持っていき、お供えして、お参りして、そしていざ、奥さんに言ってみたのです。 「あのね、メロン食べたいんだけれど、中の種の処理ができないんだけれど、切っていただけませんか ? みんなで食べましょう」と。 帰りに、綺麗に種がなくなったメロンを半分持たせてくれて、これで一つ問題解決~。 その話を友達にしたら、「それはトライポフォビア、っていうんだよ」と教えてくれました。そうなんだ、私のような人がまだ世の中にいるんだなぁ、と感動してしまいました。 筆者のフォビア(恐怖症)には高所だったり、閉所だったりがありましたが、年齢を重ねるごとに克服し、今では屋根に乗ってグラインダーで研磨、錆止めを塗る、ペンキを塗る、なんてこともできるようになり、MRIだって平気で受けられるようになりました。でも、このトライポフォビア(集合体恐怖症)は、現時点で克服されていません。ですが、特に身体に変化が現れるわけではなく、母が言ったように、ただの「わがまま」なのかもしれません。 もちろん、筆者ではない。数十年前のドライブ中に見かけた、「Puenting=プエンティング (Puente (橋) を英語風に活用させた造語。今でいうバンジージャンプ) 」の写真。ぞわっとする。では、人体実験を始めますか。家にある、種のある野菜、果物を片っ端から切っていこうではないですか ! それでどうなるか…。 私のような恐怖症の方が読者の中にいらっしゃらないことを願いつつ、写真を撮って、掲載してみます。自分との対決、un desafío (ウン・デサフィオ = 対決、対峙の意味) 、です ! このマガジン発表時にその写真がなかったら…、美保子は負けた、と思ってくださいね。何事も、チャレンジあるのみ ! 今月のフレーズは ¡Qué miedo! (ケ・ミエド) 「なんて怖い!」 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月