2022/06/14 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No. 57 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 6月 ! 夏がやって来ました ! というふうに考えるのは、バルセロナという地中海気候の穏やかな町で過ごして来た時間が長いからでしょうか ? 今月は、昔のアーカイブから引っ張り出してきた、日本では一足早いのですが、夏の休暇風景をご覧いただきます。さて、こんなに楽しくて大丈夫 ? と言うお話をしましょう。 五月病って、日本だけ ?もうかれこれ五年前になりますが、スペイン人たちの夏の過ごし方を紹介しました。新型コロナウィルス感染症対策が大幅に緩和されたスペインでは、今年の夏も同じようなバカシオネス(vacaciones=休暇)が過ごされることでしょう。短い人で3週間、長いと4週間の連続した夏の休暇は、年に3回ある休暇のうちでも、最も開放的で、リラックスできる時間を過ごすことができるのです。子供達に至っては、ほぼ3ヶ月の暑い夏を、海や山で過ごすのですから、もう羨ましい限りですよね。 七月終わりの湿度と気温。カラッとしているセカンドハウスの窓からは、海が見えるそんな中、スペイン人たちの休暇後はどんなものか、も気になりますよね。日本にも、日数だけを数えると、スペインと大して変わらない有給休暇があると聞いたことがあります。唯一の違いは、日本では職場自体が休暇閉鎖をしない限り、10日間の長期休暇は取りにくい、という習慣があることでしょうか。毎年、ゴールデンウィークに海外へ旅行するカップルや家族たちがインタビューに答えているシーンをテレビで見ますが、まだまだ日本では長期休暇が取りづらいのも事実ですよね。 以前にも紹介したかもしれ ない、El Port de la Selvaの村の海岸。砂では ないので、日光浴の後も楽さて、シンドロメ・ポスバカシオナル(Síndrome postvacacional=休暇後シンドローム)なるものがちゃんと存在します ! なんと、これが日本語で言うところの五月病、に当たります。日本の五月病というのは、四月からの新年度を慣れない業務や習慣に従って働いたり就学した人が、ゴールデンウィークという長い休暇が終わった後に、体調不良や精神的・神経的な不調を表す、ということで、「五月」病なのですが、やはりスペイン語に直訳するわけにはいきませんよね。なにしろ、スペインの新年度は四月ではないからです。 スペインの学校は九月後半または十月に始まるのが普通ですので、この休暇後シンドロームは、この学期開始とは関係なさそうです。職場においては、四月入社、という年度始めの入社というシステムも一般的ではなく、人員を補充するときが、新入社員の入社となり、それと年度とは関係ありません。そうすると、もちろん入社式なんてものも存在しないのです。 ボートから見た村と、ボートでじゃないと行けない小さな洞窟ですので、スペインの「五月病」は、楽しい長期休暇から戻り、現実世界に戻った時のギャップによって起こるのが一般的なのです。また、夏休みは職種にもよりますが、六月から九月までの好きな時期にまとめてとるので、日本のようにゴールデンウィーク後、とは決まっていないのが、この五月病を直訳できない理由でもありますね。筆者が会社員だったときには、出版していた映画雑誌、文芸誌、歴史雑誌の八月号は極端にページ数が減り、九月号や十月号は前倒しで記事を用意し、六月から九月までに社員がきちんと長期休暇を取れるようになっていました。ただ、月に一回印刷所への入稿作業があるため、3週間以上の連続休暇は遠慮してほしい、という暗黙の了解があり、2週間とって、1週間の締め切り週に出勤、その後1週間の休暇を取り直す人もいたり、ローテーションで休暇を取っていました。 親友のPさんは、今でこそ勤務している学校の責任者をしていて、学校が終わった六月、七月も実務的な仕事があるのですが、それでも八月はしっかり一ヶ月の休みを取ります。海や山にセカンドハウスを持っている家族も多く、週末はもちろんのこと、長期休暇もそこで過ごすというのも一般的で、毎日海や山でリラックスします。朝起きて新聞を買いに行き、それをカフェのテラスでコーヒーとクロワッサンを食べながらゆっくり読み、ビーチへ降りて日光浴や昼寝、読み残しの新聞を読んだり。15時ごろにセカンドハウスに戻り、お昼ご飯。夏は21時過ぎても明るいので、昼寝をしたり、近所に散歩に出たり、ちょっと遠出したり。ああ、それが一ヶ月 ! なにしろ羨ましい限りですね。 Sant Pere de Rodes(サン・ペラ・ダ・ローダス)の修道院も、巡礼の旅の通過点の一つ。「フランスの道」のように有名ではないが、なにしろどこからでも歩いて、サンティアゴ・デ・コンポステーラに向かえる海水浴に飽きたら、ちょっと遠出。Port Lligat(ポルト・リガット)のダリの生家美術館への途中、アリの動きとサボテン、ついレンズを向けたさて、今年の夏ですが、五月にスペイン人の友達から、「夏に日本に行きたいから ! また金沢を案内してね !」という話がちらほら届くのですが、その後、通信が途絶えています…。どうしたのかな、来ないのかな、と思っていたら、ニュースが飛び込んできました。もうかれこれ三年になりますが、今年の夏の新型コロナ感染症対策は、外国からの日本入国はパッケージツアー客のみ、ということになっているのだそうです。ヨーロッパではすでに4回のワクチン接種が普通となり、その証明に加え、出国、入国時にそれぞれ陰性証明書を取り、というのが五月までの感染対策だったのが成田や羽田、関空だったのですが、それが緩和されたものの、三年前までのように自分でチケットを取って、金沢に10日滞在する、なんていう自由な旅行はできないようなのです。 ダリの生家美術館は、フィゲラスのダリ美術館とは一味違い、屋外の作品も景色に馴染んでいるああ、いつになったらバルセロナに里帰りができるのか…。今年も我慢の一年となりそうです。 では、過去に夏の友達のセカンドハウスに滞在したときの画像をお届けしますね。こんな非日常を過ごして、都会の喧騒に戻ると、やっぱり休暇後シンドロームに陥ってしまうのは、十分理解できます。そんな中、色々調べてみると、このシンドロームにかからないようなアドバイスが載っていました。 この休暇後シンドロームは、楽しい休暇での体験と、その後の現実の生活とのギャップにおいて、元の生活に戻るための対応に何らかの問題が起き、気分が沈んだり、気力が低下するのが一般的である。ほとんどの場合、45歳までの若者に謙虚に現れ、その症状は疲労、無気力、睡眠不足、筋肉痛、食欲不振、焦燥感、悲観的・ナーバスになる、など多岐にわたる。子供が学校に戻る時期にも起こることがあるが、学校好きの子供にはあまり見られない症状である。 この症状の専門家は、元の生活に戻る2日前には休暇先から戻り、日常への生活リズムを戻すための十分な時間を取ることが望ましいと言う。食事時間や就寝時間、起床時間なども、少しずつ元に戻していくこと。また、日常生活の中に、仕事の支障とならない程度のレジャーの時間を取り入れ、休暇前のルーティンを徐々に取り戻すことが重要。楽観的でポジティブな行動も、この症状を早く取り去るのに有益である 生家は小さな湾にある。開放的、独創的、かつ、触れることのできる作品もあるはい、了解です ! あとは、3週間の休暇さえ取れれば、バッチリ、この休暇後シンドロームに打ち勝つことができます ! …あああ、そんな休暇、どこから降って湧いてくるのだろう ! 今月のフレーズは Anda, ¡relájate!. (アンダ、レラハテ) 「さあ、リラックスして !」 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年5月2025年4月2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月