2017/06/06 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.8 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 6 月に入り、日本では衣替えだ、梅雨だ、という話になるのですが、スペインでは「夏だ!」となります。9 月に新学期が始まるスペインでは、6 月 23 日辺りで年度が終わり、子供達の待ちに待った夏休みに突入となるのです。毎日の時間割は、通っている学校や学年によって変わってきますが、通常土日・祝日はお休み、休日に学校行事があると、次の週以降に代休があったり、というのは日本の学校と似ています。ただ、飛び石連休はほとんど連休となるのはスペインらしいですよね。日本の「カレンダー通り」という登校はほぼあり得ません。 夏だ、お休みだ!万国共通、夏は花火だ良いのか、悪いのか、は別にしてですが。朝 8 時から授業が始まり 14 時まで帰宅しない集中型の学校もあれば、12 時半に 一度帰宅し、自宅で昼食後、14 時に再び学校に戻って、午後の授業、という学校もあります。公立か私立か、というのも関係しています。ただ、全部の子供達にとって同じなのが、夏休みの開始時期です。 夏の夜のお祭り、サン・フアン(サン・ジョアン)日本では夏至の時期になりますが、スペインではやはり夏至「solsticio de verano」と呼び、夜が一番短いのが、6 月 21〜22 日頃ですね。キリスト教では、6 月 24 日が聖人フアンの日で、お祭りはその前夜に行われます。毎回お祭りのことを書くと、「スペインってお祭り好きなのかな?」と思われますが、日本だって、いつもどこかでお祭りがあるので、やっぱり人類はお祭りが大好きなのでしょう。今月は、本格的な夏が始まる、6 月 23 日、サン・フアン前夜祭について少しお話しします。先月は聖人ジョルディについてでしたが、今月は聖人フアン(カタルーニャ語ではジョアン)。日本の暦には六曜があったり、各日に意味があったりしますが、キリスト教の暦にはそれぞれの日に聖人の名前が付けられています。祝日前夜の 23 日は、町の中の交差点の真ん中などでは古い家具などが山積みにされ、火が放たれます。日本でいう左義長のような感じで、道路は一部通行止にされ、あたり一面煙が充満します。もちろん市の許可をもらった上での焚き火です。 夜通し花火で遊ぶ日。夜更かしは親も公認また、6 月に入ると、町には花火販売の仮店舗や、小屋が店開きし、爆竹と花火が販売されます。この花火や爆竹が夜通し鳴り響くのが 23 日から 24 日にかけてで、夜通しお祭り騒ぎが続くのです。爆竹ではなく、ダイナマイトのような音も鳴り響きます。ですので、この夜、飼い犬には薬を処方し、このあまりにも大きな爆竹の音でストレスを生じさせないようにする飼い主もいるぐらいです。もちろん、人間も耳栓をして寝る、という対策が行われたりします。筆者は行ったことはないのですが(実は、爆竹の音が苦手)、海岸では持ち寄りでパーティーが開かれ、花火や爆竹、焚き火をして夜通し遊ぶ、という人が多々現れるのもこの夜で、警察の巡回も強化されます。ワインやビール、ジンやトニックの瓶が持ち込まれ、夜通しの飲み会。老いも若きも砂浜で遊ぶのです。24 日が祝日なため、早朝までどんちゃん騒ぎが続きます。 さて、この海岸での集い。これにはきちんと時間が決められていて、朝 6 時には警察が介入し、人々を海岸から出るように指示します。2016 年のデータでは、52000 人の人々が深夜の海岸で花火を楽しんだそうですが、その前年は 55000 人、2014 年は 60000 人だったとのことで、年々海岸でのパーティーのブームは下火になっているとのことです。人々が去った後には、清掃部隊が入り、海岸を綺麗にし、9 時には海水浴の人々が入れる状態になったそうです。去年は 308 人の清掃員と 15 台の清掃車が出動、ゴミの量は 16 トンだったとの記録を見つけました。もちろん救急隊、消防隊の出動回数も普通の日より多く、爆竹や花火で火傷をしたり、花火の日の引火で火事が起こったり、は想定内で、次の日の新聞を賑わせます。 テーブルや椅子を広場に出し、持ち寄りパーティーの始まり始まり〜海岸に行く人ばかりではありません。出掛けずに家のテラスなどでパーティーをする人々が多数派です。23 日午後には、Coca de Sant Joan(カタルーニャ語ですが、コカ・デ・サン・ジョアン、サン・ファンのパン)を求め、パン屋には行列が出来ます。ほとんどの家庭がこのフルーツをちりばめたり、松の実をちりばめたりしたコカ(パン)を予約し、夜が一番短いサン・フアン前夜の夕食で食べるのが習慣です。 サン・ファンに欠かせないコカスペインの食事時間が他のヨーロッパの国々とは異なっている、という話はしたでしょうか? 夕食は大体 9 時から、というのが一般的ですが、この日の日の入りが 9 時 28 分なので、まだ明るい時間です。食前酒を飲み始め、夕食はだいたい 10 時から、ということになります。耳栓をしないと爆竹がうるさくて眠れない、ということになるので、この夕食も深夜までおしゃべり会となって続きます。筆者は夜更かしが苦手なので、だいたい2時がお開き。次の日は休日なので、ちょっぴり寝坊ができるのです。また、日本の日の出、4 時 36 分、とは違い、バルセロナのこの日の日の出は 6 時 19 分なので、この辺りから食事時間のズレが生じてくるのでしょうね。 そして、この日が終わると、子供達は長い長い夏期休暇となるのです。 子供達にとっては楽しい夏休み。約 3 ヶ月。ここで問題となるのは、大体の夫婦が共稼ぎなので、その夏休みの間、誰が子供の面倒をみるのか、です。学校が無くなるということは、生活時間のズレが生じ、子供の夜更かし、朝寝坊が定着してしまいますが、親の日常はそう変わるものではありません。そこで、登場するのが、おじいちゃん、おばあちゃんです。これは、日本でも言えることでしょうね。祖父母が遠くに住んでいたり、すでにいなかったりする家庭もありますよね。子守が好きな人もいれば、嫌いな人もいるわけで…。 夏の朝。すでにサン・アントニ・デ・カロンジャの海岸は人で賑わう私の住んでいたアパートの大家のお母さんであるマリアさんには孫が 3 人いて、みんなが同じ建物にあるアパートに住んでいるので、おばあちゃんの家にはみんなが集まります。実を言う筆者も、バルセロナに行くと泊めてもらう家、マリアさんは私のバルセロナの母でもあるわけです。3 人の孫がまだ小さい時には学校の送り迎え、大きくなって自分で学校に行くようになると、今度は昼食の準備をし、それぞれの孫の時間に合わせて食事を出す、というのが日課となっています。こんなおばあちゃんが近くにいてくれたら、大助かりなのですが。 そんな、三ヶ月近い夏を楽しむのがスペインの子供達。 そういう筆者の子供の頃の夏休みですが、通常の 40 日という休暇から見て、1 週間ほど短いのが常でした。幼少時代に新潟の豪雪地帯に住んでいたので、冬の小正月の休みのために、夏休みが 1 週間ほど削られていたのです。子供の時にも、金沢の従姉妹たちの休みと比べて、新潟は少ないな、と思ったものです。その分、冬にお休みをもらっていたのですが、夏のお休みの方が魅力的ですよね。 子供の遊びも万国共通。カニかな? ヤドカリかな?スペインに住んでいる時には、夏は最低 3 週間の連続した夏期休暇を取る、というのが法律で決められていたため、休みには事欠きませんでした。そして今、日本で仕事をする上で、この休暇を取る、という行為がいかに難しいか、ということも学びました。 「僕たちの自転車も、ちゃんと自転車置き場に置こうね」日本では、休暇を「取ってやる」という人、休暇を「取らなきゃな」と思う人、何日休暇が「残っているかな」と自問する人、などなど、様々ですが、いずれにしても、スペイン人の視点でみると、日本人は休みが少ないです。 「まだ、本物の自転車には乗れないんだけれどね」思い切って、休暇取ってみませんか? 筆者は、12 月にもスペインに里帰りします。有給か無給かって? 査定ですって? その時に考えます。まだ半年先の話なので、人生、何が起こるかわからないもの。ストレスを軽減するための日課のジム通いは基本形。でも、好きなことをするための丸一日、丸 1 週間、って、重要ではないですか? 「成るように成る」です。 Sobre la marcha(ソブレ・ラ・マルチャ)。 直訳すると「行き当たりばったり」 かな。急がば回れ回れ。良い仕事をするためには、上質な休暇が必要なのです。だから、6 月から夏期休暇の話をしてみました。コラムをお読みのみなさんも、早速スペインを真似して、夏休みの予定を立ててくださいね! さて、来月は何について話しましょうかね〜。 続きます。 ¡Os deseo mucha suerte! (あなたがたに大きな幸運がありますように! の意味) 長い休暇が取れると、ちょっと遠出もできる。道無き道を突っ走るのも醍醐味だ この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月