2023/06/13 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.63 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 日差しがすっかり夏になってきました。夏至までどんどん日が長くなり、自ずと1日の活動が長くなる今日この頃、スペインではそろそろ「Sant Joan サン・ジョアン (スペイン語ではSan Juan サン・ファン) 」のお祭りが計画されている頃でしょう。今、バラの花の季節でもあるので、今月は4月に行われた「バルセロナ文化センター (京都) 」、3回目のセンター開館記念日の一部をご紹介しましょう。全部を一度にご紹介するには内容が濃すぎ、紙面が足りないので、後日続編を発信しますね。 さあ、みんなで祝おう ! ( 1 )4月23日、カタルーニャ地方の祭日であるサン・ジョルディの日が「バルセロナ文化センター (CCB) 」の開館記念日というお話は、以前2022年5月号でご紹介しました。去年は新型コロナ感染防止の観点から、来場者はマスク着用、できるだけ会話がないように講演形式で行われました。でも、バルセロナをはじめ、スペインの文化を伝える、という役割を担う施設にとって、今年のお祝いのためのアイディアはまだまだ尽きません。 入り口にはバラの花。センター内のサロンでは、トレンカディスのワークショップ準備が進められて行くデザイナーちだちよさんによるフライヤー。素敵なプログラムに仕上がりましたそんな中、今年は新型コロナ感染症対策が徐々に緩和され、「マスク着用は個人の判断が基本となります」というお達しが届いたため、徐々に参加型のイベントが可能になってきました。2月からセンター長のRosalia Avila氏よりいくつかのアイディアが届き始めました。スタッフの一員である筆者は、普段はリモートでの参加なのですが、縁の下でアイディアを詰めて行くこの行程、案外好きな分野かもしれません。ほぼ2ヶ月に渡り、内容を詰めたり、意見を交換したり。その間にもデザイナーちだちよさんによるフライヤー作りも進み、素敵なプログラムに仕上がりました。 サン・ジョルディと言えば、「バラ」と「本」。もちろんバラの花は来場者へのプレゼントとして大量に用意されるのですが、やっぱり自分でもバラを作りたいわ、というセンター長のアイディア、大盛況になったのです。今年は、大阪にある「陶芸tocoton」さんによるワークショップが行われました。年に一度の京都詣での筆者が参加せぬはずがない ! ガウディの建築物には必ず使われる、タイルを貼り付けた技法「Trencadís (トレンカディス) 」は、様々な色の小さく割れたタイルを使用するのですが、ガウディの時代には「失敗したり、割れたりした陶器のかけら」が使われました。でも昨今では、わざわざ1枚のタイルを細かく割って材料にします。講師の方たちの下準備、大変なものだったでしょうね。 センター長の挨拶に続き、陶芸Tocotonのアナさんより説明を受ける参加者。『あんなきれいにできるかしら?』の不安もちらほら頭をよぎる…細かく割られたタイルを使う。「好みの形がない場合は、割りますからね」とのアドバイス。いやいや、これは修行なのだ〜。あるもので頑張る !まず、約10センチ角の土台に好きな色のタイルのピースを並べ、バラの花をイメージして下絵とします。ありがたいことに、同じ色でも、多少トーンの違ったタイルもたくさんあり、想像力は高まります。セメントを使うので手袋、細かい作業のためにヘラ、ワークショップに必要なものが用意されているので、さあ、開始 ! どんな花でもそうですが、普段見て楽しんではいるものの、そして「バラの花って、きれいよね」と言ってはいるものの、いざ何もないキャンバスにバラを描きましょう、と言われると、なかなか難しいもの。それも、2つとして同じもののないタイルの小片を前に。自ずと3分ほどの沈黙が…。 沈黙していてもバラの花ができるわけではなく、時間だけが過ぎて行くのですが、「さあ、そろそろデザインできたかしら ? 乾燥させる時間も必要だから、2時間はあっという間ですよ」とのアドバイスが飛びます。ますます寡黙となる参加者。その沈黙に耐えられず、プププ、と笑ってみる筆者。 ボンドが配られ、それぞれ筆で土台に貼り付けて行く。寡黙に作業に没頭する参加者。先生の指導も受けられるバラの色、背景の色、茎の太さ、それ以外の飾り、それぞれの参加者が「バラ」を題材に取り組むワークショップ。出来上がったら誰にプレゼントしようかなぁ。出来上がったらどこに飾ろうかな。などなど、沈黙の中から参加者の声が聞こえてきそうなワクワクした雰囲気です。 「ガウディもこうやってトレンカディスを作り上げて行ったのかしら ? 」 「バルセロナのどんなアトリエで作成していたんだろう ? 」 「あんな大きな作品を現地で作るなんて、どれだけの時間がかかったのかしら ? 」 「周りからはどんな音が聞こえてきていたんだろう ? 遠くで誰かが歌っている声 ? クラシックギターなんかが聞こえていたんだろうか ? 」 「おしゃべりはもちろんカタルーニャ語だったのかな ? 」 頭の中では、すっかりバルセロナの生活を想像し、楽しくなってきます。 はみ出したセメントは、半乾き状態でウエスで拭き取ると、輝きが出てくる子供心が湧き出る作業。きれいなバラを想像して自由な想像力で、それぞれがバラの花を作っていく1時間半の時間はあっという間に終わり、あとは乾くのを待つのみです。出来上がってお隣さんの作品を見ると、「あああ、あなたの作品ステキ ! 」「うううん、次はこうやって作ろう~」などなどのコメントが飛び交います。日本語での質問にも、スペイン語での質問にも淀みなく答えてくれるRyoさんとAnnaさん。心強いものです。出来上がった作品がこちら。ワークショップのご指導をいただいた先生2人は、バラを持ってニッコリ帰っていきました。 出来上がった作品と、にこやかな講師。バラ、バラ、バラの1日こうやって、バルセロナ文化センターでは、バルセロナの文化を広めるために様々なイベントを開催しています。文化は語学だけではありません。語学は文化をもっと深く学ぶためのツールなのです。バルセロナをはじめ、スペインの各地に行ってみたいな、という方は、ぜひここを訪れて、直接スタッフとお話ししていただければ、もっともっと旅の内容が濃くなること、間違いありません。海外旅行が身近になってきた昨今です。スペイン旅行はいかがですか ? ちょっと海外は…という方は、京都でバルセロナを体感してくださいね。 過去のバルセロナのサン・ジョルディの模様はこちら (2017年5月号) 。 ガウディのトレンカディスについては、過去の記事もどうぞ (2016年11月号) 。 バルセロナ文化センター Twitter Instagram では、今月のフレーズもお楽しみください。今月は、スペイン語とカタルーニャ語の2つにしてみました。 - スペイン語 - ¡Qué maravilla! (ケ・マラビージャ) 「なんて素晴らしいの ! 」 - カタルーニャ語 - Bona Diada de Sant Jordi! (ボナ・ディアーダ・ダ・サン・ジョルディ) 「良いサン・ジョルディの祭日を過ごしてね ! 」 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2025/01/15 業界コラム スペインの知られざる文化 No.73 (最終回) 2024/12/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.72 2024/11/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.71 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2025年3月2025年2月2025年1月2024年12月2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月