スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

日差しがすっかり夏になってきました。夏至までどんどん日が長くなり、自ずと1日の活動が長くなる今日この頃、スペインではそろそろ「Sant Joan サン・ジョアン (スペイン語ではSan Juan サン・ファン) 」のお祭りが計画されている頃でしょう。今、バラの花の季節でもあるので、今月は4月に行われた「バルセロナ文化センター (京都) 」、3回目のセンター開館記念日の一部をご紹介しましょう。全部を一度にご紹介するには内容が濃すぎ、紙面が足りないので、後日続編を発信しますね。

さあ、みんなで祝おう ! ( 1 )

4月23日、カタルーニャ地方の祭日であるサン・ジョルディの日が「バルセロナ文化センター (CCB) 」の開館記念日というお話は、以前2022年5月号でご紹介しました。去年は新型コロナ感染防止の観点から、来場者はマスク着用、できるだけ会話がないように講演形式で行われました。でも、バルセロナをはじめ、スペインの文化を伝える、という役割を担う施設にとって、今年のお祝いのためのアイディアはまだまだ尽きません。

入り口にはバラの花。センター内のサロンでは、トレンカディスのワークショップ準備が進められて行く

デザイナーちだちよさんによるフライヤー。素敵なプログラムに仕上がりました

そんな中、今年は新型コロナ感染症対策が徐々に緩和され、「マスク着用は個人の判断が基本となります」というお達しが届いたため、徐々に参加型のイベントが可能になってきました。2月からセンター長のRosalia Avila氏よりいくつかのアイディアが届き始めました。スタッフの一員である筆者は、普段はリモートでの参加なのですが、縁の下でアイディアを詰めて行くこの行程、案外好きな分野かもしれません。ほぼ2ヶ月に渡り、内容を詰めたり、意見を交換したり。その間にもデザイナーちだちよさんによるフライヤー作りも進み、素敵なプログラムに仕上がりました。

サン・ジョルディと言えば、「バラ」と「本」。もちろんバラの花は来場者へのプレゼントとして大量に用意されるのですが、やっぱり自分でもバラを作りたいわ、というセンター長のアイディア、大盛況になったのです。今年は、大阪にある「陶芸tocoton」さんによるワークショップが行われました。年に一度の京都詣での筆者が参加せぬはずがない ! ガウディの建築物には必ず使われる、タイルを貼り付けた技法「Trencadís (トレンカディス) 」は、様々な色の小さく割れたタイルを使用するのですが、ガウディの時代には「失敗したり、割れたりした陶器のかけら」が使われました。でも昨今では、わざわざ1枚のタイルを細かく割って材料にします。講師の方たちの下準備、大変なものだったでしょうね。

センター長の挨拶に続き、陶芸Tocotonのアナさんより説明を受ける参加者。『あんなきれいにできるかしら?』の不安もちらほら頭をよぎる…

細かく割られたタイルを使う。「好みの形がない場合は、割りますからね」とのアドバイス。いやいや、これは修行なのだ〜。あるもので頑張る !

まず、約10センチ角の土台に好きな色のタイルのピースを並べ、バラの花をイメージして下絵とします。ありがたいことに、同じ色でも、多少トーンの違ったタイルもたくさんあり、想像力は高まります。セメントを使うので手袋、細かい作業のためにヘラ、ワークショップに必要なものが用意されているので、さあ、開始 !

どんな花でもそうですが、普段見て楽しんではいるものの、そして「バラの花って、きれいよね」と言ってはいるものの、いざ何もないキャンバスにバラを描きましょう、と言われると、なかなか難しいもの。それも、2つとして同じもののないタイルの小片を前に。自ずと3分ほどの沈黙が…。

沈黙していてもバラの花ができるわけではなく、時間だけが過ぎて行くのですが、「さあ、そろそろデザインできたかしら ? 乾燥させる時間も必要だから、2時間はあっという間ですよ」とのアドバイスが飛びます。ますます寡黙となる参加者。その沈黙に耐えられず、プププ、と笑ってみる筆者。

ボンドが配られ、それぞれ筆で土台に貼り付けて行く。寡黙に作業に没頭する参加者。先生の指導も受けられる

バラの色、背景の色、茎の太さ、それ以外の飾り、それぞれの参加者が「バラ」を題材に取り組むワークショップ。出来上がったら誰にプレゼントしようかなぁ。出来上がったらどこに飾ろうかな。などなど、沈黙の中から参加者の声が聞こえてきそうなワクワクした雰囲気です。

「ガウディもこうやってトレンカディスを作り上げて行ったのかしら ? 」
「バルセロナのどんなアトリエで作成していたんだろう ? 」
「あんな大きな作品を現地で作るなんて、どれだけの時間がかかったのかしら ? 」
「周りからはどんな音が聞こえてきていたんだろう ? 遠くで誰かが歌っている声 ? クラシックギターなんかが聞こえていたんだろうか ? 」
「おしゃべりはもちろんカタルーニャ語だったのかな ? 」

頭の中では、すっかりバルセロナの生活を想像し、楽しくなってきます。

はみ出したセメントは、半乾き状態でウエスで拭き取ると、輝きが出てくる

子供心が湧き出る作業。きれいなバラを想像して

自由な想像力で、それぞれがバラの花を作っていく1時間半の時間はあっという間に終わり、あとは乾くのを待つのみです。出来上がってお隣さんの作品を見ると、「あああ、あなたの作品ステキ ! 」「うううん、次はこうやって作ろう~」などなどのコメントが飛び交います。日本語での質問にも、スペイン語での質問にも淀みなく答えてくれるRyoさんとAnnaさん。心強いものです。出来上がった作品がこちら。ワークショップのご指導をいただいた先生2人は、バラを持ってニッコリ帰っていきました。

出来上がった作品と、にこやかな講師。バラ、バラ、バラの1日

こうやって、バルセロナ文化センターでは、バルセロナの文化を広めるために様々なイベントを開催しています。文化は語学だけではありません。語学は文化をもっと深く学ぶためのツールなのです。バルセロナをはじめ、スペインの各地に行ってみたいな、という方は、ぜひここを訪れて、直接スタッフとお話ししていただければ、もっともっと旅の内容が濃くなること、間違いありません。海外旅行が身近になってきた昨今です。スペイン旅行はいかがですか ? ちょっと海外は…という方は、京都でバルセロナを体感してくださいね。

過去のバルセロナのサン・ジョルディの模様はこちら (2017年5月号) 。
ガウディのトレンカディスについては、過去の記事もどうぞ (2016年11月号) 。

バルセロナ文化センター
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では、今月のフレーズもお楽しみください。今月は、スペイン語とカタルーニャ語の2つにしてみました。

- スペイン語 -
¡Qué maravilla! (ケ・マラビージャ)
「なんて素晴らしいの ! 」

- カタルーニャ語 -
Bona Diada de Sant Jordi! (ボナ・ディアーダ・ダ・サン・ジョルディ)
「良いサン・ジョルディの祭日を過ごしてね ! 」