2016/11/08 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.1 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 高所恐怖症である筆者が、唯一好きな高い場所は、サグラダ・ファミリア(聖家族教会)の塔のてっぺん近くにある通路です。異国で生活していた最初の頃は、嫌なこと、悲しいことがあると、必ず登ったものです。アントニ・ガウティの作品として世界遺産となり、また、6 年前にはローマ法王が訪れ、正式にバシリカとなったため、最近では予約をしないと入れない状態になっていますが、28 年前は並ばずに入ることができたものです。 ガウディとガウディ風ガウディ作グエイ公園からバルセロナの街を見る。手前右はモザイクを張り巡らされたベンチまだ工事中のサグラダ・ファミリア教会。 左右 2 本ずつの塔の間には、渡り廊下がある現在はエレベーターでしか塔に登れませんが、当時はカタツムリの殻のような螺旋階段を一歩一歩登っていくことができたのです。上がるに従って、風が強くなり、ティビダボの山と地中海がいっぺんに見渡せたのが、二つの塔をつなぐ渡り廊下の部分。嫌なことも、悲しいことも吹っ飛んでしまう迫力でした。 当時すでに 800 ペセタ(当時、500 ペセタも出せば、定食屋でお昼が食べられたものです)という入場料。週に何度も行けるわけではなく、また、そんなに嫌なことも悲しいことも多くはなかったのですが、それでも三ヶ月に一度は訪れたものです。 このガウディの芸術に欠かせないのが、Trencadís(カタラン語表記で、トゥレンカディスと読む)。 小さく割った、色とりどりの陶器のタイルのかけらをモザイクのように貼り、デザインを作っていくのです。 ガウディの作品のほとんどに使われている、二つと同じものがないデザイン。今日は、そんな美しいモザイクを現代でも手作りで楽しみましょう、と提唱しているアーティストをご紹介しますね。 Brots Creatius(https://www.facebook.com/brotscreatius/)というお店を構えたのが、バルセロナ在住のジュリアさん。お家で手軽にガウディ風モザイクを作り、飾ってもらおうと、2000 年から現在まで、様々なデザインのキットを考え出し、スペイン村や、バルセロナ市内のお店に委託販売していたのですが、この度、ご自分のお店を構えることになりました。それが、なんとガウディの名を知らしめることとなる、彼の初期の作品「Casa Vicens(ビセンス邸)」の向いなのです。 グエイ公園では、いたる所でモザイクが使われている。1 つ 1 つのディテールを追うのも楽しいジュリアさんに出会ったのは友人の紹介で、駅のモザイク修復工事で人手が足りないためのお手伝いでした。その後ジュリアさんのアトリエは様々なモザイク作品をカタルーニャ州の様々な町々で頼まれることとなり、その設置のため、筆者も同行し、ベビーシッターとしてお手伝いをしたこともあります。バニョラスという町で、「門をモザイクで飾ってほしい」という依頼だったのですが、あまりアーティストではない筆者は、当時 8 歳ぐらいだったジュリアの親戚のお嬢さんと遊ぶことになりました。バニョラスの町には湖があるのですが、水遊びをするには寒い季節で、あてもなく散歩をしていると、「乗馬できます」という看板を発見。「どう、馬に乗ってみる?」という問いかけに、「うん!」という返事。さすがに 8 歳の子供の乗る馬がいきなりギャロップしないのはわかっていたので、30 分のお散歩コースに申し込み、まずはブラッシングから。初めて触る馬に感激し、またインストラクターのお姉さんと一緒に馬に乗せられてのお散歩は、都会に住む彼女には新鮮だったのでしょう。今思うと、未成年の、それも友達の親戚の子供に乗馬をさせるなんて、とても大胆な発想だったと反省しているのですが。 その後、しばらく会うことのなかったジュリアとバルセロナの町でばったり再会し、郊外に引越しをしたこと、親戚の子供たちが大きくなったことを聞き、遊びに行くことになりました。当時8歳だったアナちゃんが 19 歳になったと聞き、時間の流れを痛感したものです。「ね、Mihoko。今、彼女が何を学んでいるか知っている?」というジュリアの質問に、とっさに答えることができなかったので、「さあ、何をしているのかしら?」と訊ねると、「獣医さんになりたいの。今は、特に馬の生態を勉強しているわ」。 ただの暇つぶしの、たった 30 分の乗馬が、誰かの人生にこんな影響を与えるなんて想像していなかった私に、「ほら、小さい時、Mihoko が乗馬に連れて行ってくれたでしょ? あれって、どこだっけ? ジュリアは遊んでくれなくて、Mihoko が一緒にいてくれたのよね。私、それから馬が大好きになったのよ。それで、獣医さんを目指している、っていうわけ」という話を目をキラキラさせながらしてくれたのです。え〜? そんなに簡単に進路を決めちゃって良いの? 多分、それで良いんでしょうね。きっかけではなく、熱意ですね。 さて、今日はガウディのお話をしようと思いましたが、そこからこんな結末になってしまいました。ガウディは、世界周知の建築家なので、ご興味のある方はいろいろな文献を探してみてくださいね。ということで、今月から、スペインの知られざる文化、ということで、あまり有名でないお話をします。スペインに行く機会がありましたら覗いてみるのも楽しいかな。また、こんなささやかな楽しみが、みなさんの周りにもあれば良いかな、という感じです。 どこの国に行っても、陶器・磁器には素敵なものがあり、つい買いたくなるのですが、割れ物なので躊躇します。 でも、この Brots Creatius のモザイク製作キットは、世界で二つと同じものができない、それに、最初から割れたタイルが入っているので、移動中に割れる心配がないというわけで、一押しです。 ¡Nos vemos! (ノス・ベモス、「また会いましょう!」の意) この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月