2023/05/09 業界コラム 杉田 美保子 スペインには無い日本の魅力 No.11 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 春もたけなわ、ゴールデンウィークも終わり、新緑が眩しい季節に突入です。ライアの旅の続きですが、すっかり季節が変わってしまい申し訳無い気持ちが半分。それでも、彼女目線の画像が楽しくて、つい異国人目線で何度も見てしまう筆者。私たちには日常にある様々なものが、ライアの写真を見るとハッとさせられるのです。今日はそんな景色をご紹介しますね。 いただきます ! 目移りしちゃう〜 !1988年、バルセロナにたどり着いた頃は、バルセロナ市内にはたった4軒しかなかった日本食レストランですが、2015年の日本帰国時には、100軒とも、200軒とも言われるほど、日本食レストランの数は増えました。そうです。日本食ブームとなったのです。一口に「日本食レストラン」と言っても、必ずしもオーナーが日本人である必要はないわけで、様々な国籍の人たちが開業しました。多分、どの国に行っても、外国料理というものは国名でくくられてしまい、その店一軒に行けばすべてのご当地料理が食べられる、というシステムになっているのではないでしょうか ? 例えば、日本でならば「たこ焼きが食べたい」「お好み焼きが食べたい」「天ぷらが食べたい」となれば、それぞれ専門のお店に行くことになると思います。でも外国で、となると、このような専門店では経営が成り立たないわけです。 2007年に初めて会ったライア。バルセロナの町中の日本料理レストランにてバルセロナに住み始めたばっかりでした。いくら物価が安いとはいえ、働かなければ所持金は目減りする一方。そんな時、このたった4つの日本食レストランのうちの1つにアルバイトとして雇ってもらえたのです。週三、四日ほどでしたが、まかない付き。こんなにラッキーなことが起こるとは~。もちろん、お寿司、天ぷら、焼きそば、カツ丼、焼き魚、などなど、全てを網羅したレストラン。私には、なぜか卵焼きが作れる、という特技があり、握り寿司のネタの1つの卵焼き、巻いていました。この卵焼きを巻いた日には、お給料が当時の100円ほどアップされたことを思い出しました。その100円、35年前にはずいぶん助かったのを今でも覚えています。あの頃レストランで知り合った人たち、元気かしら ? スペインには、チップという制度があります。例えばタクシーでの料金が6,70ユーロだったとすると、7ユーロを渡し、お釣りは取っておいてください、という感じです。レストランでもしかり。現金で払った場合、お釣りのうちのいくばくかをお皿に乗せて席を立ちます。最近ではカードで払うことの方が多くなり、チップ制はどうなっているのか、次回友人が来日した際に聞いておきますね。そして、このチップ、これは給仕してくれた人へのお礼、ということで、オーナーは一切タッチしない、というのが暗黙の了解です。レストラン従業員がいただくチップは、誰がもらってもレジ横の缶や箱などに一緒にストックされ、休みの前日に全ての従業員の目の前でジャラジャラと置かれ、勘定が始まります。そして、頭割りでみんなに配られるのです。このチップ収入もバカにならず、もちろん非課税。給仕する人だけでなく、調理する人、皿を洗う人にも平等に (もしかすると、出勤日数によって振り分けられていたのかもしれませんが、記憶にありません) 分けられるのです。 「焼きそば食べたい!」「寿司食べたい!」「餅も〜」「あんこも〜」と、ライアの休日の食事に取り入れられる日本食そして現在、数々の日本食レストランが開店し、ライアも度々食事に行きます。何しろ、彼女と初めて知り合ったのも、回るお寿司屋さんで、2007年にはすでにメール通信していたのですから、確か彼女がまだ15歳ぐらいだったと記憶しています。日本のマンガやアニメ好きがこうじて、食文化へも傾倒です。その中でも、スイーツには目がないライアが、日本で食べないわけがない ! 日本に住んでいると、至る所で大福餅、どら焼きなんていうおやつは買えますし、アンコ、抹茶なども入手しやすいですよね。「いいなぁ」と言われるのですが、いやいや、バルセロナだって、どこに行ってもトルティーリャ (Tortilla=スパニッシュオムレツ) は食べられますよね~。それと同じで、外国のものはどこにいても、なかなか手に入らないんですよ。それならばぁ、「自分で作るしかない ! 」なのです。 10年ほど前に、バルセロナで日本料理のワークショップや講座を受け持っていましたが、現地の食材でできるもの、そしてスペイン人の口に合うもの、と数々試して教えてきました。「寿司が作りたい」「天ぷらって ? 」「日本食ってベジタリアンにふさわしいって聞いたけど」などなど、質問はたくさんありましたが、それ以上に多かったのが「日本のデザート、何か教えて〜」というものでした。デザート ? ううううん。 「食後に梨とかリンゴとか食べるし、頂き物の羊羹がお茶と一緒に食される、というのはあったも、自分で作る『食後のデザート』っていうコンセプト、あまりないかもしれないな〜。甘いものは『おやつ』だし…」 そんな中、バルセロナ出身の映画監督イサベル・コイシェの邦題「ナイト・トーキョー・デー(Mapa de los sonidos de Tokio)」という映画が公開されました。主人公が仕事の後に頬張る「大福(いちご大福なのか、どうなのかは忘れましたが)」が話題となり、「Mochi(餅)」作りたい〜、という人が爆増でした。 小豆を一晩水につけて、茹でこぼして、煮て、という行程はさすがに二時間のワークショップでは無理だし、スペインで「豆」と言えば料理の付け合わせだったり、サラダだったりさっぱり塩味系で、「あの餡子は小豆でできているのよ」なんて言おうものなら、「え〜、豆が甘いの ? 」となるわけです。お茶を濁すが如く、缶詰の餡子をゲット、そこにフルーツ入れちゃえ的な、なんちゃって大福を教授することになったわけです。お餅を作るために中華食材店でうるち米やもち米の粉末を入手。二時間のワークショップを確立するために、実はかなりの下準備と試行錯誤があったのです。 食品サンプルのない居酒屋さん、こんなにハードル高いのに、どうやって注文 ? 指で適当に注文したのか、はたまたお隣のテーブルを覗き込んで頼んだのか、それとも知っている言葉「餃子」を連呼したのか ? ちゃんと美味しそうなものを選んでいた 「お、これは ! 好きなものが選べるではないか ! 」というライアの心の声が聞こえて来そう 「念願の有名な甘味処に行けたのよ ! 大感動 ! 」とのメッセージが。バルセロナでもこれを参考にデザートを作るのだろうライアもその1人。ワークショップのために作成したレシピを送ってあげて、わかりにくいところは口頭で説明。私の自宅で実際にトライ。その後お家に帰ってもトライ。あああ、日本のご飯が恋しいわ、となるわけですね。 その日によって好きなところで食べる、というのが一人旅の醍醐味。同じ食材でも、国が変わると味付けも変わる今回の日本一人旅では、「私、1人でレストランには入れないわ」なんて甘いことは言っていられません(元々1人でもレストラン行くのですが)。4週間毎日友達に会うわけではないので、自ずと1人で食事、ということが多々あったようです。日本の食品サンプルがすごい、という話もありましたが、最近お店の前に食品サンプルがあるのって、百貨店の飲食店入り口、とかに限られていませんか ? 昔はもっと、ラーメン屋さんだったり、食堂なんかにもサンプルがあって、それにつられてお店選びをした、ではなかったですか ? それとも、友達が遊びにきた時にしか町中の飲食店には行かないので、私が知らないだけなのかしら ? それにしても、食品サンプルのないお店、ライアはどうやって注文するのかしら ? 金沢の母 (姉かな ? ) の心配をよそに、美味しいものを次々と食べて行くライア。旅の醍醐味である。もちろん毎日の活動によって、ちゃんとカロリーは消費されて行く2016年に来沢の折に行ったお好み焼き屋さんにてライアは東京、大阪、京都はもちろんのこと、広島、福岡、松山と飛び回り、毎日がワクワクで、「今日はここでご飯食べた〜」なんていう写真付きメッセージも来たりして、日本を大満喫したようです。これからますます旅行客が増えますね。もっともっと「日本の魅力」を楽しんでいただきたいと思います。 では、今月のフレーズもお楽しみください。 今月のフレーズは ¡Hola! ¡Encantada* de conocerte, Laia! (オラ ! エンカンターダ・デ・コノセールテ、ライア) 「こんにちは ! 初めまして、ライア ! 」 ¡Mucho gusto, Mihoko! (ムーチョ・グスト、ミホコ) 「こちらこそ、美保子 ! 」 * 話し手が男性の場合、Encantado (エンカンタード) この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年11月2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月