スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

春もたけなわ、ゴールデンウィークも終わり、新緑が眩しい季節に突入です。ライアの旅の続きですが、すっかり季節が変わってしまい申し訳無い気持ちが半分。それでも、彼女目線の画像が楽しくて、つい異国人目線で何度も見てしまう筆者。私たちには日常にある様々なものが、ライアの写真を見るとハッとさせられるのです。今日はそんな景色をご紹介しますね。

いただきます ! 目移りしちゃう〜 !

1988年、バルセロナにたどり着いた頃は、バルセロナ市内にはたった4軒しかなかった日本食レストランですが、2015年の日本帰国時には、100軒とも、200軒とも言われるほど、日本食レストランの数は増えました。そうです。日本食ブームとなったのです。一口に「日本食レストラン」と言っても、必ずしもオーナーが日本人である必要はないわけで、様々な国籍の人たちが開業しました。多分、どの国に行っても、外国料理というものは国名でくくられてしまい、その店一軒に行けばすべてのご当地料理が食べられる、というシステムになっているのではないでしょうか ? 例えば、日本でならば「たこ焼きが食べたい」「お好み焼きが食べたい」「天ぷらが食べたい」となれば、それぞれ専門のお店に行くことになると思います。でも外国で、となると、このような専門店では経営が成り立たないわけです。

2007年に初めて会ったライア。バルセロナの町中の日本料理レストランにて

バルセロナに住み始めたばっかりでした。いくら物価が安いとはいえ、働かなければ所持金は目減りする一方。そんな時、このたった4つの日本食レストランのうちの1つにアルバイトとして雇ってもらえたのです。週三、四日ほどでしたが、まかない付き。こんなにラッキーなことが起こるとは~。もちろん、お寿司、天ぷら、焼きそば、カツ丼、焼き魚、などなど、全てを網羅したレストラン。私には、なぜか卵焼きが作れる、という特技があり、握り寿司のネタの1つの卵焼き、巻いていました。この卵焼きを巻いた日には、お給料が当時の100円ほどアップされたことを思い出しました。その100円、35年前にはずいぶん助かったのを今でも覚えています。あの頃レストランで知り合った人たち、元気かしら ?

スペインには、チップという制度があります。例えばタクシーでの料金が6,70ユーロだったとすると、7ユーロを渡し、お釣りは取っておいてください、という感じです。レストランでもしかり。現金で払った場合、お釣りのうちのいくばくかをお皿に乗せて席を立ちます。最近ではカードで払うことの方が多くなり、チップ制はどうなっているのか、次回友人が来日した際に聞いておきますね。そして、このチップ、これは給仕してくれた人へのお礼、ということで、オーナーは一切タッチしない、というのが暗黙の了解です。レストラン従業員がいただくチップは、誰がもらってもレジ横の缶や箱などに一緒にストックされ、休みの前日に全ての従業員の目の前でジャラジャラと置かれ、勘定が始まります。そして、頭割りでみんなに配られるのです。このチップ収入もバカにならず、もちろん非課税。給仕する人だけでなく、調理する人、皿を洗う人にも平等に (もしかすると、出勤日数によって振り分けられていたのかもしれませんが、記憶にありません) 分けられるのです。

「焼きそば食べたい!」「寿司食べたい!」「餅も〜」「あんこも〜」と、ライアの休日の食事に取り入れられる日本食

そして現在、数々の日本食レストランが開店し、ライアも度々食事に行きます。何しろ、彼女と初めて知り合ったのも、回るお寿司屋さんで、2007年にはすでにメール通信していたのですから、確か彼女がまだ15歳ぐらいだったと記憶しています。日本のマンガやアニメ好きがこうじて、食文化へも傾倒です。その中でも、スイーツには目がないライアが、日本で食べないわけがない !

日本に住んでいると、至る所で大福餅、どら焼きなんていうおやつは買えますし、アンコ、抹茶なども入手しやすいですよね。「いいなぁ」と言われるのですが、いやいや、バルセロナだって、どこに行ってもトルティーリャ (Tortilla=スパニッシュオムレツ) は食べられますよね~。それと同じで、外国のものはどこにいても、なかなか手に入らないんですよ。それならばぁ、「自分で作るしかない ! 」なのです。

10年ほど前に、バルセロナで日本料理のワークショップや講座を受け持っていましたが、現地の食材でできるもの、そしてスペイン人の口に合うもの、と数々試して教えてきました。「寿司が作りたい」「天ぷらって ? 」「日本食ってベジタリアンにふさわしいって聞いたけど」などなど、質問はたくさんありましたが、それ以上に多かったのが「日本のデザート、何か教えて〜」というものでした。デザート ? ううううん。

「食後に梨とかリンゴとか食べるし、頂き物の羊羹がお茶と一緒に食される、というのはあったも、自分で作る『食後のデザート』っていうコンセプト、あまりないかもしれないな〜。甘いものは『おやつ』だし…」

そんな中、バルセロナ出身の映画監督イサベル・コイシェの邦題「ナイト・トーキョー・デー(Mapa de los sonidos de Tokio)」という映画が公開されました。主人公が仕事の後に頬張る「大福(いちご大福なのか、どうなのかは忘れましたが)」が話題となり、「Mochi(餅)」作りたい〜、という人が爆増でした。

小豆を一晩水につけて、茹でこぼして、煮て、という行程はさすがに二時間のワークショップでは無理だし、スペインで「豆」と言えば料理の付け合わせだったり、サラダだったりさっぱり塩味系で、「あの餡子は小豆でできているのよ」なんて言おうものなら、「え〜、豆が甘いの ? 」となるわけです。お茶を濁すが如く、缶詰の餡子をゲット、そこにフルーツ入れちゃえ的な、なんちゃって大福を教授することになったわけです。お餅を作るために中華食材店でうるち米やもち米の粉末を入手。二時間のワークショップを確立するために、実はかなりの下準備と試行錯誤があったのです。

食品サンプルのない居酒屋さん、こんなにハードル高いのに、どうやって注文 ?

指で適当に注文したのか、はたまたお隣のテーブルを覗き込んで頼んだのか、それとも知っている言葉「餃子」を連呼したのか ? ちゃんと美味しそうなものを選んでいた

「お、これは ! 好きなものが選べるではないか ! 」というライアの心の声が聞こえて来そう

「念願の有名な甘味処に行けたのよ ! 大感動 ! 」とのメッセージが。バルセロナでもこれを参考にデザートを作るのだろう

ライアもその1人。ワークショップのために作成したレシピを送ってあげて、わかりにくいところは口頭で説明。私の自宅で実際にトライ。その後お家に帰ってもトライ。あああ、日本のご飯が恋しいわ、となるわけですね。

その日によって好きなところで食べる、というのが一人旅の醍醐味。同じ食材でも、国が変わると味付けも変わる

今回の日本一人旅では、「私、1人でレストランには入れないわ」なんて甘いことは言っていられません(元々1人でもレストラン行くのですが)。4週間毎日友達に会うわけではないので、自ずと1人で食事、ということが多々あったようです。日本の食品サンプルがすごい、という話もありましたが、最近お店の前に食品サンプルがあるのって、百貨店の飲食店入り口、とかに限られていませんか ? 昔はもっと、ラーメン屋さんだったり、食堂なんかにもサンプルがあって、それにつられてお店選びをした、ではなかったですか ? それとも、友達が遊びにきた時にしか町中の飲食店には行かないので、私が知らないだけなのかしら ? それにしても、食品サンプルのないお店、ライアはどうやって注文するのかしら ?

金沢の母 (姉かな ? ) の心配をよそに、美味しいものを次々と食べて行くライア。旅の醍醐味である。もちろん毎日の活動によって、ちゃんとカロリーは消費されて行く
2016年に来沢の折に行ったお好み焼き屋さんにて

ライアは東京、大阪、京都はもちろんのこと、広島、福岡、松山と飛び回り、毎日がワクワクで、「今日はここでご飯食べた〜」なんていう写真付きメッセージも来たりして、日本を大満喫したようです。これからますます旅行客が増えますね。もっともっと「日本の魅力」を楽しんでいただきたいと思います。

では、今月のフレーズもお楽しみください。

今月のフレーズは

¡Hola! ¡Encantada* de conocerte, Laia! (オラ ! エンカンターダ・デ・コノセールテ、ライア)
「こんにちは ! 初めまして、ライア ! 」

¡Mucho gusto, Mihoko! (ムーチョ・グスト、ミホコ)
「こちらこそ、美保子 ! 」

* 話し手が男性の場合、Encantado (エンカンタード)