スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

先月は、ルイスとののんびり散策をお伝えしました。今月は、20代30代の若者の旅行スタイルを少々。私にも20代はあったな、とノスタルジーに浸ってしまいました。

若者たちの旅行スタイル

2023年2月20日に、「お久しぶり、美保子、私のこと覚えてる ? バルセロナのカルマよ。元気にしてる ? ねえねえ、大ニュース ! なんとついにポールが日本に行くかも ! 」そう言ってメッセージをくれたのは、かれこれ20年以上お付き合いのある友達の一人。30歳ぐらいの時に、当時の友人を介して知り合ったのが、パーティーになると総勢40人にはなるであろう、というグループ。スペイン人、カタラン人はもちろんのこと、イタリア人、日本人、アルゼンチン人、などなど何しろ多国籍グループ (2017年3月号) 。その中の一人がカルマさん。

17年前のポール (左の写真の一番右、右の写真の左) 、両親と一緒にパーティーに連れてこられる、推測12歳。この頃の記憶しかなかったので (流石に15歳ぐらいになれば、両親とのパーティーより、友達とのお出かけの方が楽しいだろう) 、どんなに大きくなっているのか、想像が膨らんだ

「息子のポールは最近アジアにはまっていてね。今年も中国に行くんだけれど、そこから日本に行こうかなって言っているのよ。美保子の連絡先を伝えとくね ? ほんとはサプライズにするつもりだったみたいだけれど、言っちゃったわ、私が (笑) 」

9月のチケットは既に予約済みとのこと、半年の放浪 ( ? ) の旅の途中で日本に、となると、いつぐらいになるかな、とニンマリしながら、ポールからの連絡を待つことにしました。当時まだ少年だったポール、今回は彼女同伴で来日。さて、どんな滞在になるのかしら、と。

度々髪型が変わり、大人びて見えるが、実は12-13歳のポール。両親、その友人たち、全てが音楽ファンで、その影響も ? 推しのグループのTシャツに、手に持つのはヘビーメタル雑誌 ! 「ヘビメタ」と聞くと、引く人もいるが、実はシャイな人、優しい人が多い。いつかもう一人のヘビメタ青年をご紹介したい。年に3回はパーティーが開催されたこのお家、庭だけではなく、内部スペースでもセッションが始まる

「美保子、僕のこと覚えてる ? ポールだよ ! 」とメッセージが来たのが9月。そこでこのコラムを書くにあたって履歴を探すも、当時のメッセージがなかなか見つかりません。スペインとの連絡は、WhatsAppであったり、Messengerであったり、はたまたTelegram、そして普通にメール、です。でも、あまりにも通信手段が多すぎて、「あ、Instagramだった ! 」と気づくのに、10分以上かかってしまいました。それほど多岐にわたる連絡方法ですが、昭和生まれの私、便箋と封筒をコレクションし、切手を買っての「文通」から始まり、「ファクス」、当時流行りのモデム回線を導入しての電子メール…。それが「携帯電話」から「スマホ」に移行。ついて行くのがやっと、な訳です。

「ねえ、日本に行きたいと思っているんだけれど、中国からの出入国と日本への入国時点で往復チケットを買わなきゃいけないんだ。日本滞在には何日あればいいかな ? 」に始まって、質問攻めです。彼らのインスタを見ていると、活気のある中国の町々の写真が目に入って来ました。「彼らの想像している田舎の風景を見せてあげられるかしら ? 」など、ドキドキでした。ただ、初めての来日。まだまだ若い二人。いつかまた違った日本を別ルートで回る日が来るであろう、という想像の元、やっぱり美保子流の旅しかできないかな、と。

まず、9月に質問された時に気づかなかっこと、それは10月から始まる外国人旅行者向けのJRパスの値上げでした。聞くところによると、約3割の値上げとのことで、今までのように格安で日本国内を動くことが難しくなって来たようです。というわけで、その後彼らが11月に日本行きを真剣に考え始めた時には、購入には時すでに遅しだったわけですね。

浅野川、長町武家屋敷など、徒歩で散策。12月も半ばなのに、歩けば汗ばむ変な気候。そして最近、若者の間ではスマホで写真を撮るのではなく、カメラが復活しているようで、それも面白い
千里浜海岸の砂の像と、毎回来てしまう五箇山相倉ごかやまあいのくら合掌造り集落。この日は快晴、冬の北陸では珍しい。海に山に、少しでも違った風景を、と思ったが、気に入ってくれたことを祈るのみ

何しろ若い二人。途中でレンタカーにしようか、とか、色々と情報収集もしたようで、その時には「12月に来るんだったら、冬道よ。もしかしたら雪が降るかもしれないし」ということで雪の装備やら何やら、金沢暮らしで培った経験から、ちょっとアドバイス。

「美保子、日本に着いたよ ! 金沢には7日か8日頃かな、到着は〜」こちらも私に負けず劣らず、行き当たりばったり。そして当日…。金沢駅まで迎えに行き、「さ、今日は鍋よ ! 」自宅晩ご飯、再び ! スーパーに寄り、飲み物、食べ物の調達をし、いざ ! 何しろ積もる話は沢山あります。

「ところでポール、今は何しているの ? っていうか、いくつになったんだっけ ? 」

「半年は、様々な音楽イベントの人員募集に応募して、がっつり節約・貯金。残りの半年は、国外を旅するんだ。えええ ? 歳 ? 30になったんだよ〜」

「えええ ? 30 ? ? ? 」のけぞってしまいました。だって、私が最近で知っているポールは、友達グループの子供達の中では1番上で、でもまだ12-3歳って頃で、それより小さい8歳とか6歳の子供達が「ポール、ポール ! 」と金魚のフンのようにくっついて来ていて、でもポールは大人の楽器セッションにも入りたくて、という多感な年頃だったからです。あれから17-18年がすぎましたかぁ。そりゃ、30歳にもなるでしょう…。

「へー。そうなんだ〜。30ねえ〜。すごいねぇ。だって、私だって一応30代だったもんね、初めて知り合った時〜」と感無量の筆者。彼のパートナーであるジュリアは何て言ったって、まだ25歳。若い ! 逆算すると、子供のポールに初めて会ったのは、彼が8歳ぐらいだったのかな、と。

さすが9月から旅行しているので、ワードローブはちゃんと考えている。暑かったら脱ぐ、寒かったら着る

そんな彼ら、9月からアジアを旅していて、途中市場で買った、という防寒ジャケット、フリースのジャケットと冬用のブーツ、そして大きなリュックサックで登場しました。「日本に来て、だいたい一日1500円ぐらいで動いているかな〜」と。やっぱりいつの時代も若いっていうのはそういうことです。バックパックでインドを旅する、というのが日本でも流行った時代がありましたよね。ユーロが強いヨーロッパから来ると、円安の恩恵で何もかもが安く感じてしまう、という彼らにとって非常にラッキーな時期だったとも言えますね。

金沢は兼六園と白山ひめ神社、私が好きなルートをドライブ。もちろん富山にも行きました。実は、金沢に到着する前に、東京から夜行バスで富山に行き、富山から高山を往復、あの飛騨高山の古い町並みにいたく感動した二人。あああ、高山ですかぁ、ちょっと負けちゃいますか、金沢は…。ということで、12月は畑には大した作物もなく、どちらかというと面白くないものでしたが、田舎を案内したわけです。その前の週に滞在したルイスの興味とは全く違う、若者たちのその日最後の目的地、どこだと思われますか ? はい。富山県の高岡に行って来ました。「富山県なら、ここに行きたい ! 」と言われた先が、「高岡おとぎの森公園」。

高岡市の「高岡おとぎの森公園」、これはフォトジェニック ! たくさんの親子連れが写真撮影をしている中、まるで彼らの親のように、微笑ましい撮影風景を観察した。次の来客が日本のマンガ好きならば、ぜひじっくり訪れたいものだ

うううん、日本に戻って来て、かなりたくさんの友人たちが金沢まで足を運んでくれましたが、ここは知らなかったです ! ポールとジュリアも広々とした公園の、未来の猫型ロボットとその仲間たちの銅像前でご機嫌に記念撮影です。彼らの周りでは、私の記憶の中にあるポールと同じぐらいの子供たちがはしゃいで記念撮影していました。そうです。何年経っても、子供の頃の憧れのマンガの主人公は、やっぱりヒーローなのです !

ということで、またもや昼食の時間がずれてしまい、遅い昼食というか、ほとんど早い夕食の時間に、高岡の回るお寿司屋さんで食事をし、帰路に着きました。やはりお魚は、北陸ですね。回るお寿司屋さんでこの品質ですから、回らないお寿司屋さんたるや、都会には負けません。

若者と行動を共にすると、いろんなことを学べます。10年前に帰国した時、日本のWiFi環境が想像以上に悪かったことを思い出しますが、最近の友人たちはしっかり準備して来ます。数年前は、スマホデータはSIMカードで、もしくはポケットWiFiというのが定番だったのですが、最近ではeSIMというシステムで、カードを入れ替えなくてもインターネット経由でデータの購入ができる、とか、ほとんどみんな、スマートウォッチをつけていて、支払いなどは腕を「ぴっ」と機械に近づけて、などなど。スペインに住んでいたときには「日本はテクノロジーが発達しているんだってね」と言われていたのですが、今は全く逆転です。それに追いついて行っていない筆者、このまま乗り遅れてアナログを貫くのか、どうするのか、頭がいたいものです。

今月は、息子、娘の歳ほどの若者たちとの集いでした。来月は何をお話ししましょうか…。バルセロナには5年ほど行っていないのですが、まだまだテーマがありそうです。去年に次いで、今年も日本に遊びに来たライアとダニーの「超短、金沢滞在五時間コース」になるでしょうか。はたまた京都のバルセロナ文化センターの「サンジョルディ」のイベントになるのでしょうか…。また来月もお付き合いいただければ幸いです。

今月のフレーズ

- カタラン語 -
Hola, sóc la Carme! (オラ、ソック・ラ・カルマ ! )
「こんにちは、私、カルマよ ! 」

- スペイン語 -
¡Hola, soy Carme! (オラ、ソイ・カルマ ! )
「こんにちは、私、カルマよ ! 」