スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

バルセロナ到着後、しばし郊外のお家で時差ボケを治し、のんびりしましたが、今月号では5年ぶりにバルセロナ市内へお散歩に出かけたお話しをします。

遊歩道と緑が増えたバルセロナの新市街

バルセロナ郊外の美々ちゃんのお家から、カタルーニャ公営鉄道に乗り、およそ30分弱でバルセロナ市内に到着。本日のメインイベントは、お友達にサプライズ訪問です。20年以上飲食店を営む旧友のお店は、Una mica de Japó (ウナ・ミカ・デ・ジャポ=カタルーニャ語で、「ちょっと日本」という意味) 。地元民や、日本の味を懐かしむ現地在住日本人など、常連さんが多く、そこに土曜日のお昼に訪ねる、という失態をしてしまいました。サプライズは成功したものの、積もる話をするどころか、座る場所もないくらい混んできたので、日替わり弁当を用意してもらい、カウンターでいただき、お会計後にお散歩続行です。その日はその後、誰とも約束せず、街ブラです。

昔は車道だった道が、遊歩道に。駐車場にはアクセスできるが、基本、車の通行はない

バルセロナの新市街中心部は、京都に似て、道路は碁盤の目になっています。一本が上に向かえば、その両隣となる道路は下に向かう。200メートルほどのマス目になっているので、右から左にも道があり、一度方向を失うと、間違った方向に歩いても気づかない感じです。27年の在住経験を持ってしても、今回の休暇中に、2度ほど方角を間違えて歩いてしまったりもしました。なんかどの道も同じに見える、というのが原因のようです。

空は青く、適度な雲。暑くもなく、寒くもない初夏のバルセロナ

町を歩きながら、まず目に着いたのは、自然食品やbio製品を扱うお店がかなり増えたこと。そこで地下鉄を降りたあと、すぐに目についたお店に入店。お野菜、調味料、穀類やグルテンフリー食材をはじめ、いろいろなものがあります。15キロもある茶道のお道具、風炉と釜をスーツケースに詰め込んだせいで、そこにシャンプーやトリートメントを入れる余裕などありませんでした。そしてスペインの硬質なお水のせいか、シャンプーを持参しても、髪の洗い上がりが日本にいるときとは違う感じがするので、大体現地調達です。

店内を無駄に歩きまわるよりも、「シャンプーはどこにあるかしら ? 」と聞く方が早いと思ってしまうので、店員さんを探します。「シャンプーならこれね。空容器持ってきてくれたら、量は好きなだけどうぞ」というアプローチに、しばし固まる筆者。「え ? シャンプーって、容器に詰められてお店の棚に並ぶんじゃ無いの ? 」…。どうもそうではないようです。

読書をしたり、お昼を食べたり、自由に使えるテーブルと椅子。車道が歩道へと変化したため、スペースに問題は無し

「あとは、この棚と、この棚ね」と教えてもらうのですが、固形になっているシャンプーとトリートメント。それも髪質によって様々なものが並んでいます。石鹸からボディーソープへと変化した時には、なんて簡単に泡立つのだろう、思っていたのですが、今は回帰とでも言うのか、液体シャンプーが固形に変わりつつあります。確かに、シャンプーやトリートメントが固形だと、旅行の時の持ち運びには便利かもしれないぞ、ということで、試しに買ってみました。

ただ、初めて使う固形シャンプーに少々不安を抱いていた筆者、液体計り売りハーブシャンプーにも興味が。バッグに入れてあったのを思い出し、「あ、このお水のペットボトルでも大丈夫 ? 」と尋ねれば、即座に「¡Claro que sí! (クラロ・ケ・シ=はい、もちろんよ) 」。

「ただね、今の在庫が残り少なくて。ちょっとあなたのボトルに入れてみるけど、あるだけでいいかしら ? 」。10リットルほどの大容量容器には、コックがついていて、そのコックから好きなボトルにシャンプーを注ぎ込む形式です。これもSDGsの一環、プラスチック製品を使い捨てにしない、ということのようです。持っていたのが500mlペットボトルで、一杯にはならなかったのでその分の料金を払い、もちろん自然保護重視のお店なのでビニール袋などはくれず、バッグに入れようとすると…、ボトル、ベタベタではないですか、お姉さん…。さすがにこのままではバッグに入れられないので、キッチンペーパーをもらい、ベタベタを拭き取ります。まあ別にシャンプーだから汚いものではないからな、とバッグにしまい、目的地に向かいます。

「なんかやたらとネイルのお店が目に付くんだけど」「靴屋さん、意外と少なくなってるかも」ぶつぶつ呟く筆者。そうなんです。1988年に初めてバルセロナに住み着いた時に思ったのが、「なんて銀行の支店、薬局、靴屋が多いんだろう、この国は」だったからです。現在は、さまざまな銀行の支店は閉店し、アプリやPCでのデジタル口座が増え、その波に乗れない高齢者やデジタル弱者は、数が極端に少なくなった銀行の支店窓口に列を成し、朝数時間しか開いていない顧客案内で手続きをしなければならなくなっているのが現状です。よって、2024年現在、「なんて薬局、ネイルのお店、外国人が開いている野菜やフルーツを売るお店が多いんだろう、この国は」になってしまいました。

昔ならば交差点の真ん中、という場所に、お野菜を売るスタンドがあったり、青空レストランが登場したり。イベント開催にはもってこい

お店を出て右に出て、海方向に下っていくのですが、元々、他の道より細い感じで、自転車ロードもあった道なのですが、なんだか様子が変わっています。Una Mica de Japòのあるアラゴン通りを一本下りると、Consell de Cent (コンセイ・ダ・セン) 通りです。その通りがすっかり緑地化、歩行者道路になっていたのです。

バルセロナ中心部を、海・山に並行して走るこの道路、かなりの距離で車の通行ができなくなり (近隣の商店への荷物搬入や、ビルがそれぞれ持っている地下駐車場などには入ることができるのですが) 、その代わりたくさんの花壇が設置され、まるでガーデンセンターに迷い込んだかのような錯覚に陥ります。もちろん、基本遊歩道なので、犬の散歩、子供たちのかけっこ、などなど、他人に迷惑をかけなければ、何をしても自由です。また、ベンチも増えていました。そしてピクニックにも利用できるテーブルと椅子も、かなりの数設置されています。

たまに、縦と横の道とも遊歩道になっていたりするので、それらの通りが交差する場所では、青空市が開催されたりもしていました。たまたま土曜日ということもあり、有機栽培のお野菜を作っている農家さんが数軒、お店を開き、交差部分中央では「パエリヤ、飲み物、デザートで10€」、などという青空レストランもありました。そこで目についたのは、フォークやナイフ、スプーンは木製、お皿は紙製。暑い夏に嬉しい冷たい飲みものには紙製のストロー、というふうに、プラスチック製品はほとんど見なかったことです。

建築中の建物もあれば、空き地にして近隣住人が管理する都市菜園もある
建物のない空間には、菜園ができ、昔より緑が増えた。一息つくためのベンチも多数設置されている

そして、今回5年ぶりで見たのは、この碁盤の目のような新市街に稀にある、空き地の変貌、です。以前は、取り壊し予定のビルなどがあっても、入り口に柵があって立ち入り禁止だったり、建物のない空き地があっても、何にも利用されずにいたのですが、そこが軒並み、近隣住民が利用する都市菜園と化していたのです。

植物を守ろう ! 水は命 ! というスローガン。貸本もあれば、子供達の遊べる玩具も、住民たちが持ち寄る

ということで、その他の町の様子は、コラム内の画像でお楽しみください。なんせ、到着直後は、スマホを手放せなかった筆者。5年でこんなにも変わるのか、というのが感想です。かなり興奮気味で、次々とお話ししてしまいましたが、来月以降、またしばらく、最近のカタルーニャ地方の様子をお楽しみください。

多種多様な植物が寄せ植えされているが、近寄ってみればなんとナンテンではないか。スペインにもナンテンがあったのか !

通りが歩行者天国になったため、横断歩道も道一杯に広がって、どこで渡ってもいいとは…。なんと広々しているのだろう。両端の点線の間が全部横断歩道 !

緑の多い新市街中心部。昨今の水不足ゆえ、管理はなかなか大変だろうとは思うが…

今月のフレーズ

- スペイン語 -
¡Claro que sí! (クラロ・ケ・シ)
「はい、もちろんよ」

- カタラン語 -
És clar que sí! (エス・クラー・カ・シ)
「はい、もちろんよ」