2022/12/13 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.62 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 今年もあと数週間となりましたね。「あっ」という間でした。厳密には、「あっ、まあその、暑いね、寒いね、云々」という間ではございましたが、何しろ時が経つのが早すぎます ! 11月半ばにやっとトマトやらナスやらの残渣処理を終えたのに、年が明けると春の畑準備が待っています。晴耕雨読のはずの畑仕事も、最近の少雨のため、ほぼ連日何かしらの作業に追われ、背中はバキバキ、腰はドンヨリ、誰ですか、『畑仕事は健康に良い』なんて言っているのは !? でもまあこれも、華麗に加齢している証拠なのでしょうか ? 老眼、ですって ? なんか「老」の字って…49歳でバルセロナを引き上げて帰国した当時は、就寝前の読書が大好きだった筆者。読み始めると夜更かしをしてしまうエキサイトな本であったり、読み始めて「す~っ」と夢の国に行ってしまうドリーミーな本であったり、さまざまな作品を読んだものです。 日本引き上げ時に荷物持ちとして同行してくれた心優しい友達は、3歳年下だったにもかかわらず、「老眼鏡」が無いと字が読めない、と言っては、日本のホームセンターやショッピングセンターで老眼鏡を見つけては買い求めていました。「だって、バルセロナで「老眼鏡」を買おうと思ったら、薬局にしかないし、可愛くないし、高いし…」そんな彼女を笑っていた私にも、ついに「小さい字が見えない」という現実がやってきたわけです。 カメラのピントが合わず、まさに「老眼」が再現されていた。老眼になると左のように遠くがよく見え、老眼鏡をかけると手前にピントが合うある日、就寝前に本が読めなくなってしまったのです。厳密には、「あ、目が疲れた」であったり、「なんか本を読むのが面倒だな」であったり、いろいろな症状が現れていたのですが、何のことはない、「老眼」という域に達しただけだったのですね。半年ほど就寝前読書をしなかった時、「あら ? これはなんて書いてあるの ? 」と思ったのが、スーパーで商品を手に取り、説明書きを読もうとした時…。これは、まさに ? そう。「老眼」です。 これもカメラのピントぼけ現象。でも、今見ると、まさしく老眼の見え方えええええ ? まだ・・50歳になったばかりなのに ? いえいえ、もう・・50歳になった、わけですね。 でもね、この「老眼」っていう言葉、哀愁漂いすぎではないですか ? なんかこう、医学用語でカッコいい言葉ってないものでしょうか ? …探しました…。「老視」だそうです。やっぱり「老」がつくのですね。 さて、スペインではどうなのでしょうか ? 以前、2020年4月号でバルセロナのとあるデンタルクリニックのお話をしました。ラッキーなことに、治療をされる方の付き添いで行ったため、写真を撮らせてもらえましたが、今回は現地取材ができていません。また、バルセロナでは一度だけ、救急で眼科に行っただけで、目の問題に悩まされたことがないのです。どこまでご説明できるのかはわかりませんが、もう少しお付き合いくださいね。 スペイン語で「老眼」のことは、一般的に「Vista cansada (ビスタ・カンサーダ=疲労した視力) 」と言われます。そうそう。疲れたんですよ、目も。医学用語では「Presbicia (プレスビシア=老眼、老視) 」と言うそうです。この医学用語はバルセロナ滞在中に使ったことがなく、今日初めて目にしました。もっぱら「ビスタ・カンサーダ」で用は済んでいたのです。なんか、優しくないですか ? もちろん『加齢』によって視力が疲労するのですが、「ロウガン」という響きより、優しい気がするのは、私だけでしょうか ? そこで、このPresbiciaという言葉、よくよく調べてみましたが、古代ギリシャ語派生で、これをスペイン語に訳すと「anciano (アンシアーノ=歳をとった、老いた) 」という言葉が出てきちゃいました。そうか、古代ギリシャ人も、「老い」を感じていたのか…。 二階に2つ、バッグに1つ、普段使いは現在行方不明、どこかに置き忘れたと思われる本当は、スペインは「老い」なんて言葉とは無縁なんですよ~、というコラムにしたかったのですが、1500文字書いて、挫折ということになります。下調べ不足、申し訳ございません ! 実は、1歳半からメガネと共同体、という友達が金沢に来ていたので尋ねたのですが、「眼科に行ってもいろんな検査があるからね、ちょっと一概には説明できないわ」と言われてしまい、自分なりに検索したものの、今回は調べ切りませんでした。 視力検査にも、さまざまな測量方法があるようで、日本とスペインの測量方が違う、ということなのですね。重さも長さも、速さの単位も、スペインと日本の両国で共通なのだけれど、視力検査方法は違うのですね。いつか機会があればご紹介することにします。 こんな細かな紐通しが、裸眼でできたなんて ! 若いって、素晴らしい ! 『老眼も気から』、なのかも ? 連日子供達に囲まれていた筆者、眼力ももらっていたのかも ? でも、ここでコラムが終了するのはフラストレーション満載なので、話題変えてみます。 日本でよく耳にする「血液サラサラにするお薬」という言葉に、違和感満載となった筆者。父の病院に付き添った時に処方されていた数々のお薬の中にありました。そんな目でドラッグストアに行ってさまざまなお薬を見ると、パッケージがとても鮮やかで、どれを買えばいいのか目移りさえしてしまいます。スペインでは基本、医者に行き、処方箋をもらうと、年齢によって自己負担額は違うものの、保険負担でお薬が買えます。もちろん、ビタミン剤や、治療目的ではない疲れ目などの目薬、風邪薬などは処方箋なしで買えますが、これは保険適用ではありません。日本と同じですね。なので、たいていの人が処方箋をもらってお薬を買います。 新型コロナ感染症が始まる随分前に、スペイン人カップルが金沢に遊びに来ました。彼らは、友達の友達だったのですが、「何かあったらいつでも連絡ちょうだいね」と連絡先を渡してあったのです。 「初めまして ! ちょっと相談したいことができちゃったんだけど」とメッセージが来ました。 「あのね、彼のほうが足を挫いちゃって、イブプロフェンが欲しいんだけれど、ドラッグストアに行くとたくさん種類があって、カフェインが入っていたりして、どれが良いかわからないの」というものでした。 「あら、うちに前回スペインに行った時に持って来たものがあるからどうぞ使って~。パラセタモールもあるから、セットで差し上げるわ。ホテルはどこ ? 」 アストゥリアス地方の観光地 クディレロの風景ここから、バルセロナ以外のお友達の輪が繋がるのです。アストゥリアス地方在住の彼ら、彼は看護師、彼女はドクター、必要最低限のお薬は持って来ているものの、イブプロフェンとパラセタモールは、かなりの頻度で使用されます。日本人が旅行の際に胃薬と頭痛薬を持って行く、という感覚ですね。やはり飲み慣れたお薬の方が効き目を想像でき、そこに思わぬハプニング。手持ちのお薬がなくなって現地調達に走ったけれど、探しきれなかった、ということ。 薬剤に関して専門家ではない筆者が書くことはあまりないのですが、それほど世間に出回っているのがこの2つのお薬です。 つまり、スペインではお薬の名前を呼ぶことが主流で、その効果で呼ぶことはないのです。だから、「血液をサラサラにする薬」とか「血圧を下げる薬」とかの説明書きのフレーズが面白いな、と。抗血栓薬にも、降圧剤にも、いろんな薬剤が存在し、飲む方の既往症などによって変わるものだと思うので、一概に「血液サラサラ」も「血圧の薬」も薬名ではない、ということですね。お薬と一緒にいただける説明書には薬の名前が印刷されているのですが、まあ、確かにこのカタカナの長い薬剤名全てを覚えて、それをお医者さんに説明するには、ハードル高そうですよね。その辺りを加味して、一般の方が何を飲んでいるかがきちんとわかるような説明書きが付いているというのが、とっても日本らしいな、と思いました。 今日は、「老眼」の優しくない『老』の字遣いの表記と、「血液をサラサラにする薬」の優しい表記のギャップについてお話ししてみました。 ちなみに、筆者は目が良かったので、急激に老眼が進んでしまいましたが、眼科医に相談すると「あなたの場合、乱視などが入っていないので、どんな老眼鏡でも大丈夫ですよ」と言われているので100円均一のお店で選びます。家のあちこちに、バッグに1つ、職場に1つ。そして、こだわりとしては、「老眼鏡」表記ではなく、「リーディンググラス」表記のものを購入するようにしています。せめてもの抵抗、というのかしら ? 今月のフレーズは ¡¡Aún soy joven!! (アウン・ソイ・ホベン ! ) 「まだ私、若いわよ ! 」 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月