2019/09/03 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.29 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 初心者マークをつけて走っていると、必ず後ろからクラクションを鳴らされた、という経験があるのですが、それがスペインでのあおり運転だったのでしょうか? 初心者マーク=ノロノロ運転、という認識のもと鳴らされるクラクションですが、日本ではめっきり聞かなくなりました。去年受けた教習で、「警笛鳴らせ」という標識の前で「ぷふっ」と鳴らし、教官に「もっと警笛らしく鳴らさないと聞こえないので、危ないですよ」と言われるほど、クラクションを使うことはなくなりました。また、後ろからパッシングされることもほぼなくなりました。それもこれも、日本ではドライブレコーダーが発達したからなのかもしれません。 あおり、あおられ昨今、なかなかクラクションが 鳴らせないご時世になってきたさて、スペインでの交通事情は、自動車学校のことを含み、お話しした(スペインの知られざる文化 No.14)ことがありますが、昨今の日本の陰湿なあおり運転事象には本当に驚かされます。これも、ストレス満載の日本社会の暗の部分なのでしょうか? 高速道路の真ん中で他車を停車させるなんてことは、常識をはるかに超えた行為です。被害者は、自分に起こった突然の災難に声を震わせ恐怖を語り、それがメディアの波に乗り、ますますドライブレコーダーの売上アップ、という構図ですね。あおり運転さまさまのようです。 筆者は決して暴力を肯定しないし、あおり運転は撲滅しなくては、と思うのですが、それでも運転中に「イラっ」と来ることもあるので、何故あおり運転をする人がいるのかは、わかる気もします。どういう時にあおり運転加害者の気持ちがわかるか、というと、目の前の車を追い越ししたいときに、追い越しできない時です。いえいえ、走行車線を走っている車に、ではなく、その横の追い越し車線を追い越しせずに並走している、そこの「あ・な・た」! スペインの高速道路は、地方色が出る。 料金が高いと、利用者も少ないのストレス満載の気持ちは、スペイン国境を超えてフランスに入った途端、いっぺんに和らぎます。 「ん? 美保子さん、意味不明ですが?」という声が聞こえてきます。では、スペインとフランスの違いを説明しましょう。 スペインの高速道路の最高速度は 120 キロというのがスタンダードで、一部都市近郊や高速道路の標準サイズに満たないようなバイパスなどで 100 キロに規制されることがあります。一方フランスの高速道路は基本 130 キロ。ただし雨が降ると 110 キロ規制になる標識が数キロ置きに設置されています。スペインとフランスでは、時速で 10 キロの差があります。フランスの方がスピードが早いです。でも、国境を超えフランスに入ると、何故か安定感が増します。もちろん道幅が多少広がるためでもありますが、全体のスピードが上がるのに、増していく安心感。それは、前方に見えている 2 もしくは 3 車線の道路には、一番右の車線(走行車線)、つまり自分の走っている道の前にしか車が見えないからです。とってもゆったり感があるのです。これは、「道路走行は、走行車線。追い越しは追い越し車線で」が徹底しているからなのです。 坂道では速度の遅い車両に気をつけなさい、 という標識(スペイン)高速道路ではなくバイパス。その脇が歩けるとは、珍しい。真ん中車線と追い越し車線を行く車両 ここまでガラガラだと、誰にも追い越されないことも多いスペインの高速道路 スペインでの教習でも、「基本走行車線を走り、必要に応じて追い越し車線で追い越すこと」、と習ったのですが、みなさんの地域はどうでしょうか? 走行車線が丸空きなのに、追い越し車線を走っていく車、いませんか? 追い越し車線なのに、走行車線の車と並走するスピードの車、見ませんか? この追い越し車線のドライバーの中には、「この先で右折するから~」とおっしゃる方もいるでしょう。でも、右折が 15 キロ先なら、まだ右車線を走るのは、早くないですか? 大型車は走行車線、 乗用車はそれを追い越しながら進む ©S.Nakamuraスペインでも、この「のんびりさん」が追い越し車線をふさぎ、後ろのドライバーをイライラさせるケースが多々あります。「¡Mira, qué feliz va! (ミラ, ケ・フェリス・バ)見て、なんて幸せに走っているの?」と揶揄するのですが、クラクションかパッシング程度の警告が後ろから飛ぶでことしょう。 先日のドライブレコーダーの映像では、あおり運転をする側を非難する目でコメントが集中しましたが、誰も走行車の位置関係は言及しません。そしてあおった人は「前の車が遅かった」と言っているのです。 そして、つい教習所の教官になった気分で「レクチャー」したのが「あおり運転」と言われてしまった、と加害者は主張しているようですね。 スペインの場合も、「あおり運転」ということに対する処罰は特定されていないようですが、「Conducción temeraria(コンドゥクシヨン・テメラリア)=無謀運転」という名が付き、それに対する処分は厳しいものです。 この無謀運転とは、「その運転方法によってリスクや危険を引き起こし、その車両の運転者、同乗者だけでなく、同じ道路を共有するその他のユーザーに影響を与える運転」です。交通安全法では、とても重大な罪に問われ、500 ユーロの罰金と違反点数 6 点が差し引かれます。 (バルセロナ) (メノルカ島マオン) 交差点ではなく、一方通行のロータリーが多いが、これも失敗すると、周りから非難のクラクションが飛んでくる。 両側が縦列駐車だと、モタモタするとやはりクラクションが それとは別に、刑法 380 号では、「モーターを有する車両を高リスクかつ危険な方法で運転することによって、第三者の生命を脅かすこと」には、6 ヶ月から 2 年の禁固刑、そして 1 から 6 年の免許取り消しの刑も定められています。高速道路で第三者を止めるのは、やはり重大な罪ですよね。 ロータリーから出て、道路に入るときには、 右車線をキープするのが普通。これは慣れると難しくない ©S.Nakamura フランスにも「幸せさん」が追い越し車線に。 イタリアは道が狭い感じ ただ、私の経験したスペインでのあおりには、クラクション、パッシング、そして窓から中指の立った手が差し出されるぐらい、でしょうか? たまに怒鳴り声も聞こえてきます。いずれにしても、最近の日本のあおり運転に比べると、カワイイもんですね。 ということで、走行車線がガラ空きなのに、追い越し車線を走ることに対して、ちょっと反省が必要なんじゃないかって思うのですが…。 そこの あ・な・た、追い越し車線に入ったら、ちゃっちゃと追い越して、走行車線に戻ってくださいね! でも…、これって、もしかして、私…、『あおって』る? ¡Por favor, vaya con cuidado! (ポル・ファボール、バジャ・コン・クイダード) 気をつけて行ってください。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月