日本に来た私のスペインの友人達が、安全ボケして帰って行くのをたくさん見てきました。
フェリーに乗っていた時、私の知らぬ間に私の隣の席に開けっ放しの財布を置き、デッキへ写真を撮りに行ってしまったというのが、これまで最高にヒヤッとした瞬間でした。私も席を立とうとすると、財布があったので「あああ、こんなところにお財布、それも開けっ放し! どうしちゃったの?」と尋ねると、「だって、美保子、そこに座っているでしょ。安全よ」ですって。一言「お願い」と言ってよね。というか、たかが 15 分のフェリーの中で、お財布は必要ないでしょ、バッグにしまっておきなさい〜。
日本は本当に安全か? ¡Ojo! 「気をつけて!」という意味

お買い物中にバッグを開けっ放しで歩いたり、服選びの時にバッグを棚に置きっ放しにしたり。日本は安全、というのが肌から伝わってくるのでしょうかね? それとも私が用心棒だと勘違いするのかしら? それほど、私の友人達はリラックスしてしまうのです。
確かに、金沢でショッピングに行くと、ほとんどのお店は広々としていて、ゆったりとお買い物ができます。 お店が広いので、お客さん達が同じ場所に集中することはあまりありません。なので、怪しい人も怪しくない人も含めて、周りに「人」というものが存在しないので、それでリラックスしちゃうのでしょうね。
それと、日本人の習性として、人との距離を保つ、というのがエチケットになっているのも一因でしょう。挨拶はハグとほっぺたに二回、チュッチュッとキスをするスペインの国民性と、お互いの距離をとって頭をさげる日本の国民性は、お買い物の時の距離感にも現れるのでしょうね。日本では、よっぽどボーッとよそ見をして歩かない限り人とぶつかることはないし、ぶつかりそうになっても「すっ」と体をかわして謝るのが日本のエチケットなのかな、と感じています。スペインで人にぶつかりそうになると、肩や腕に手を添えて、「あ、大丈夫でしたか、失礼」と、なるのが普通で、初対面の時でも挨拶でほっぺたチュッチュをするので、腕や肩に手がかかるのは、別段おかしなことではないようです。

で、そこを突いてくるのが、スリの方々ですね。
わざとアイスクリームをなすりつけて油断させる、なんてのを聞いたことがありますし、それ以前に、抜き足差し足で近寄り、後ろからバッグに手を入れる、というのまで、様々です。母を連れてバルセロナの地下鉄に乗った時は、私の後ろを歩いていた母の首から下げたバッグにあからさまに手を入れたスリも(すでに強盗の域に入っていますかね)いたし、マドリードの地下鉄では、父の隣に立った人が、ごそごそとカバンに手を入れ、財布と勘違いしてメガネケースを持って行ったりしました。筆者自身は、バルセロナのバスの中で、布製のバッグをナイフでざっくり切られ、お財布をすられかけた、という経験があります。

この時すられた財布は、バッグを切り裂き盗んだ人の仲間の手に渡っていて、その人が自分のカバンを盾にして持っていたため、背の高い筆者は自分の財布を上から覗き見ることができ、「何よ、それ、私の財布でしょ! 返しなさい」と取り返すことができたのです。その時にバッグを切られたことに気づいていなかったのでできた行動ですが、後で思い起こすと、泥棒はナイフを持っていたんだ、と冷や汗をかいたものです。
そのため、スペインでほとんど見かけないのが、トートバッグです。書類を入れたりするのに便利な、口の開いたバッグですが、問題はファスナーが付いていないのでバッグが開きっぱなしになってしまうことです。

じゃあ、それの何がいけないの、ということですが、やっぱりスペインでは NG です。後ろから、簡単にバッグに手が入ってしまいますよね。これはダメですね。何しろ、バッグにファスナーが付いていても、それをそっと開ける、という技術も持っているわけですから、かなり緊張して歩かなければならないのです。日本に帰ってきて 2 年半が経ちましたが、「バッグを抱え込み、時折振り向き、背後を確認して歩く」という癖がやっとなくなりました。
それほど日本は安全なのですね。
日本は安全、というのが今日のテーマなのですが、まだ驚くことがあります。今年も金沢は暑い夏でした。地下鉄のない金沢での移動は、バス、タクシー、自転車、いろいろありますが、一人一台に近いマイカーが主流でしょう。
通勤を始め、通学のための送迎、スーパーはもちろんのこと、銀行や郵便局も車で行くので、お客さま用駐車場のないお店はほとんどないと言って構わないぐらいです。そして、夏は、いかに短距離のドライブでも、カーエアコンは必需品なのが金沢です。
そんな暑い夏、筆者もコンビニに立ち寄ることがあったのですが、そこでの光景です。駐車して、エンジンを止めて、ロックをかけて、というのは、筆者の長年の習性なのですが、ふと隣に止まっている車を見て、びっくりしたのです。誰も乗っていないのに、エンジンがかけっぱなしなのですから。25 年ほど前に、祖父がバンを運転して大阪の空港まで迎えに来てくれたことがあるのですが、その時サービスエリアでエンジンをかけたまま食事に行こうとした時と同じ衝撃がありました。そうです。エンジンを止めるとエアコンも止まってしまうので、エンジンを切らずにコンビニでお買い物、ということになるのだそうです。それを説明してもらったのは、かなり後のことでしたが。


海外では、強盗が走行中の車を止め、「おーい。ほら、パンクしているよ、後ろのタイヤ」と運転手を車から降ろし、その隙に車ごと盗んでしまう、という手口があったりもしますが、日本のコンビニでの光景は、「さ、エンジンかかっているよ、ロックはかかっていないよ〜。何でも持って行っていいよ。ついでに車も運転して行くかい?」と言わんばかりに見えるのは、外国かぶれしているからなのかしら? それも、シーズン中に 1、2 台、というのなら別ですが、コンビニに止まるたびに必ず 1 台は見るのですから、日本では普通の光景なのでしょうか。バルセロナなら 5 秒も保たないでしょうね、というのがこの夏金沢に遊びに来たスペイン人たちの見解でした。
それ以外に、荷物を置きっぱなしにしてトイレに行く、財布をズボンのお尻のポケットに差し込んで歩く、などなど。日本は本当に安全です。筆者も安全ボケのため、かなり適当に所持品を置いて、お手洗いに行きます。
人を見たら泥棒と思え、というのはあまり好きなフレーズではないのですが、それでも最低限の安全確保は必要ですよね、どこにいても。
¡Ojo!
オホ! と発音します。
(「目」という意味のスペイン語から、「目を離すな」ということで、「気をつけて!」という意味。)
¡Cuidado!
クイダード! と発音します。
(注意! 気をつけて! という意味です。)
公開日が 10 月 3 日、と言うことで、ちょっとホットなコメントを入れてみますね。
10 月 1 日のカタルーニャで Referèndum、「カタルーニャ独立住民投票」が行われました。スペイン政府から見ると「非公式」と言われる住民投票は、これまで何度か行われていて、実は筆者も過去にバルセロナで投票しています。ちょっとしたお祭り気分で、のんびりとしたカタルーニャ人たちが日曜日の朝に小学校に列を作り、投票の順番を待つのです。
スペイン政府が「非公式」と裁判で判決を下しているこの住民投票ですが、今回 10 月 1 日の投票では、スペイン警察が出動する、という、ちょっと過激なシーンが世界を駆け巡ってしまいました。今回、筆者はバルセロナにいなかったのですが、カタルーニャ地方に住んでいる数人の友人からは、オンタイムでメッセージが届きました。バルセロナのオルタ地区に住民票を持つダニエルさんは、投票所に行くと、スペイン警察のバンが 10 台止まり、そこから暴動防止部隊が次々と下車していたとのこと。今回の投票は場所指定ではないため、投票するために彼女であるライアさんの村まで車を走らせたとのことです。ライアさんのお母さんとお姉さんは早朝 6 時半から投票に出かけ、問題なく投票をしたそうです。
バルセロナ市内の友人、エンカルナさん夫婦は、6 時間の待ち時間の末、無事投票しました。投票箱の前からの笑顔の写真が届きました。バルセロナのパウさんは実家の村に行き、そこで無事投票を済ませました。それでも、様々な投票所での事件のビデオを送って来てくれました。
カタルーニャ州がスペインから独立「したいか、否か」という住民投票で、もちろん独立したい人ばかりではないのです。カタルーニャにもスペインから独立したくない人もいるわけで、「じゃ、ここらでみんなの意見を出してみよう」ということなのに、スペインはこの動きを非常に敏感に取り扱っています。どうしてでしょう? スペインに非がなければ、カタルーニャで「非公式」の独立投票があってもなくても、そんなに焦る必要はない、と思うのですが? 投票結果が「独立したくない派過半数」という可能性だってあるんですからね。
と言うことで、政治の話はこの辺りにしましょうね。
さて、実は 9 月の末に、宮島の厳島神社の結婚式にお呼ばれされました。
やっぱり世界遺産になる場所は、素晴らしいのですね。感動しました。コラムとは全く関係ないのですが、兼六園の紅葉が始まった「ことじ灯籠」の写真と、「厳島神社」の素敵な姿で癒されてくださいませ!
では、また来月お会いしましょう!

10月1日の兼六園

9月24日夕方の厳島神社の鳥居
スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事
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