スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師

杉田 美保子

スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。
石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。
京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。

スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。

22 歳まで日本で過ごし、それから 49 歳までスペインで過ごし、なんてことを単純に計算すると、人生の半分以上をスペインで過ごしたことになります。そして、あと数年で日本滞在の方が長くなってしまうのでしょう。筆者にとっては、人生の半分をスペインで過ごしたからといって、スペイン人にはなれなかったし、かと言って「日本人かな?」と考えるとお茶もお花も、着物も着ることのできない、中途半端な人間に出来上がったので、自分の位置付けに困る時があります。まだまだこれから先、何十年もあるのだから、奮起して色々なことを学ぶ、というのもこれからの目標なので、「スペインに行ってフラメンコを習ってみる」、「着付け教室に行ってみる」、など楽しみはまだまだたくさん残っています。

お誕生日だったのね? ごめん、気づかなかった!

ところ変れど、お誕生ケーキのろうそくは、吹き消すのだ

しかし、それってどう映るものなんでしょうね?

外国帰りのちょっと風変わりな人、なんでしょうかね?

 

最近、中学、高校、大学、そして果ては小学校の同窓生たちと集う機会が増えてきました。日本で生まれて、日本で育ったのだから、普通ですよね。そして同窓生たちからたまに聞くのが、「そういえば、杉田っておもろかったな、昔から」というコメント。そうか、もともとちょっと変わっていたのかな? それが、スペインに行って増大したのかな?  そんなことを考えるようになりました。

それぞれの年がバレないような、粋な計らい

11 月になると、文化の日、というのがあります。

特に「文化」と言わなくても、日本には生活のいたるところに日本文化が見られ、なぜ、この日を文化の日にしたんだろう、と思います。大学時代の 11 月も学園祭の季節で、筆者の誕生日は毎年、その振替休日となっていました。ですので、「うちで誕生日会するよ」と友達を集めてパーティーをしたものです。

こんな風に誕生会をしちゃうから、多分、大学時代は近しい友達みんなが私の誕生日を知っていて、でも今のようにインターネットもラインも SNS もなかったので、バースデーメッセージは現代のように、いたるところに出てくることもありませんでしたね。「お誕生日おめでとう」という一言の重みが、当時と今とでは違っているかもしれない、と思うのは、酷なのでしょうか?

 

そして、「ねえねえ、もうすぐ〇〇君の誕生日だね。みんなで何かプレゼントする?」という類の会話も、若い時にはしていたような気がします。これが、日本の細やかな心遣いだな、と思っていて、今日のテーマです。

 

バルセロナ時代は、フリーランスとして、そして会社員として、自宅での仕事以外に職場がたくさんあり、たくさんの方々とお知り合いになりました。その先々で日本とはちょっと違った風習を見て、最近真似ているのが、「今日は私の誕生日だよ」というアナウンス以外に、ちょっとしたお菓子などでおもてなしをする、という風習です。

お誕生日だからみんなに「祝ってもらうのが当たり前」という、小さい頃からのコンセプトが覆され、「お誕生日だから、みんな、祝福してね。これ、食べてね」というのが、同僚や友人たちとの誕生日の過ごし方なんだ、という考え方に感化されたことです。

よく午前中に食べるサンドイッチ。 ボカディージョといい、バゲットで作る

お誕生日当日は、パン屋さんで甘い系、しょっぱい系のミニクロワッサンやクッキー、チョコレートボンボンなどをトレーに詰めて包装してもらい、もう一方の手には「カヴァ(Cava)」と呼ばれる発泡性ワイン(シャンパンと思っていただければ大丈夫です)を何本か持ち、出勤です。時間があるときにはもちろん手作りで、カナッペや、細巻きを持って行ったこともありました。

スペイン人にとって「スシ」はエキゾチックなもので、大抵どのパーティーに持参しても喜ばれます。

スペインの勤務体制には、「10 時と 3 時のお茶」に似たような「朝食の時間」があり、だいたい 10 時半ぐらいに 20 分ほどの休憩を入れ、それぞれが家から持参するサンドイッチ(ボカディージョ Bocadillo)を食べます。このためスペインの昼食開始時間が 13:30~14:00 と遅めでも頑張れるのです。ですので、その時間を見計らって、「は~い、みなさん、どうぞ。今日は私の誕生日なのです」と持参したものを広げます。朝の 10 時半にカヴァ?  もちろん!  乾杯するんだから、皆さんどうぞ、どうぞ。これ、日本で同じことをしたら、怒られちゃうでしょうね。こういう日は、休み時間がちょっと伸び、それでも「めでたい日だからね。Feliz cumpleaños, Mihoko(フェリス・クンプレアーニョス=お誕生日おめでとう)」となるのです。

大誕生会は郊外で行われることが多い。駐車場も広々

つまり、大学時代は、前もって「誕生日だからパーティーしよう」=「友達に気を遣わせちゃってプレゼントをいただいていた」という形式のものを、当日に「今日は誕生日だから、みんなでこれを食べましょう、飲みましょう」というスペイン風サプライズ系に変えたのです。

 

11 月に誕生日の友達が、とある仲良しグループ内に 3 人いますが、この 20 人以上のグループでは、誕生日だから集まる、というよりも、忙しい日々だからせめて「誕生日」を理由にして集まりましょう、というコンセプトでパーティーが開かれます。

食べ物・飲み物は誕生日の人が用意をし、デザートは、デザートの得意な人が用意してくれ、プレゼントは誕生日の人それぞれに一つずつ、みんなで頭割りする、というのもこのグループの暗黙の了解です。「プレゼントに、何か欲しいものはない?」という質問も大有りで、こうやって友達に甘えて欲しいものをおねだりできる、というのもこのグループの特色です。

友人の節目の誕生日には、 サプライズのパーティーで、本人は感動で涙!

また、40、50、60 など(日本では 60 歳から還暦をお祝いしますが)、そういうお誕生日には家族や親しい友達などで盛大なパーティーをする、というのも習わしです。

お祝いスタイルはレストランでの食事であったり、友達を呼んでのパーティーであったり。2009 年には「スコーピオンパーティー」と称し、4 人の誕生日の人、総勢 60 人以上でホームパーティーをしたこともあります。

そういう観点で行くと、日本人はきちんとお誕生日を手帳につけていて(もちろん、スペイン人の友達にも細やかな人がいるので、ご安心を!)、お誕生カードを送ったり、はたまたサプライズでプレゼントが届いたり。それに奥ゆかしさを感じるのは私がオープンな人間だからかしら?

 

ということで、だいたいお友達の誕生日はチェックしているのですが、「お誕生日だったのね?  ごめん、気づかなかった…」ということも多々あります。お祝いされるのを待つのも奥ゆかしくて好きなんだけれど、「ねえねえ、祝って!」という、ちっちゃな自己主張もたまには楽しいかな、というお話でした。

Qué cumplas muchos años más もっと年を重ねて行ってね、というお祝いの言葉

(ケ・クンプラス・ムーチョス・アーニョス・マス)

総勢 60 人ともなると、みんな前日からせっせと料理をする。旬のキノコも到着
特別あつらえのTシャツでお出迎え!パーティー会場で直に焼かれる腸詰類。熱々でお祝いだ