2018/01/10 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.10 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 寒い北陸を脱出し、温暖なバルセロナに来ています。久々の故郷でのクリスマス・年末年始です。 Navidad(ナビダー)はスペイン語、Nadal(ナダル)はカタルーニャ語、しかしやはり「Christmas」と言う言葉もスペインを始め、世界各国で使われています。キリスト誕生、そして、年明け 1 月 6 日は東方から三賢者がやって来て、誕生を祝う、と言うことで、二週間以上もクリスマス期間が続きます。 クリスマス時期は、どこにいっても素晴らしい景色が楽しめる。オリンピックポートにてクリスマス? スペインでは「ナビダー」、カタルーニャでは「ナダル」町中には、このクリスマスをモチーフとした飾りが、いたるところに現れ、それを見るために行列ができたり、入場料を払ったり、写真に収めたりと、とても賑わいます。ただ、外国人の目から見ると、とても不思議な飾りもあったりするので、今日は少し解説をしていこうかな、と思います。 カタルーニャ地方の場合、まず、12 月 24 日には、サンタクロースではなく、ティオ(Tió)がプレゼントを持って来る、と言う事実。それも・・・。 ティオ(Tió)と言う丸太でできた人形。棒で叩き、「カガ・ティオ(Caga tió)うんこしろ!」と囃し立てる 12 月 8 日の無原罪の御宿りの日から、Tió de Nadal(ティオ・デ・ナダル:クリスマスの丸太)が登場します。赤い Barretina(バレティーナ、カタルーニャ地方独特の羊毛の帽子)をかぶり、毛布を被った状態で、おうちに設置されます。子供達は毎日 Tió にミルク、クッキーなどの食べ物をお供えし、翌朝にはそれらは食べ・飲み干され、またまた夜になると子供達がお供えをし、というのが繰り返されます。もちろん、子供達が眠った後に、大人がお供えを空にしておく、と言うのがカラクリです。 12 月 24 日の夜、もしくは 25 日に、子供達は棒きれを持って、クリスマスの歌を歌いながら、Tió を叩きます。「Caga Tió(カガ・ティオ)」というのが、「丸太、うんこしろ」という意味で、毛布に隠れたお尻あたりからプレゼントが見つかるので、「うんこしろ」ということになったのだそうです。子供の見ていないところで、毛布の下にプレゼントを隠すのも大人の役目で、甘いキャラメルや小さなおもちゃがもらえるのがこの日だそうです。ちなみに、現在の可愛いお顔と帽子は、近年になってつけられたもので、昔はただの丸太だけだったそうです。 次に街角で見かけるのが、ベレン(Belén)またはペセッブレ(Pessebre)と呼ばれるクリスマスの飾りです。 サイズは、小テーブルに乗っかるものから、庭全体を使うものまで、様々です。テーマは多岐にわたり、クリスマスの二週間の物語からいろいろなシーンを選び、作り上げます。 サグラダファミリアの「誕生のファサード」はペセッブレ、 まさにキリスト誕生のシーンを表したものだそして、他にも人々が集まるのが、ランブラス通りのベレン教会の横のペセッブレ展示会場です。今年 55 年を祝ったこのグループの活動は、単にクリスマス飾りを作る、というだけではないのです。ここか? という入り口を入り、階段を降りると、受付があり、「入場料 2,5€」と言われます。お金を払うとカーテンから中に入る、というのは、昔の遊園地の「お化け屋敷」の入り口と似ています。 中に入ると、薄暗い部屋に、幾つもの舞台が作られ、それをガラス越しに覗くという趣向です。 10 ほどの舞台を覗くと、いろいろなキリスト誕生のシーンが楽しめ、また、その当時の馬小屋の様子や、農民たちの畑、使用していた農具や食器などがいたるところに登場します。と、今までは、漠然と眺めていたのです。ただ、今年は違います。このコラムで説明しなければ、という使命感および興味にくすぐられ、受付の人に質問です。 「このプレートを見てみて。この中の 1 人が、来年 91 歳になるんだけれど、この会が発足されて55年、一度たりとも欠席せず、55 年間欠かさずペセッブレを作ってきたんだ。発足当初は 10 人だった作者が、今は見ての通り 5 人さ。老齢化が進んでいるのは、どの世界も同じだね」 同じベレンでも、バルセロナ大聖堂の中庭のものはリアリズム(左)。 市庁舎のあるサンジャウマ広場のものは、アブストラクト階段を降りると、展示会場。5 人の作家の名前がウエスカ県の Montañana 村の実際の風景漠然と見ていたペッセブレですが、話を聞いてびっくり。 「ここにある 10 ほどのペッセブレは、9 月ぐらいから現場で製作が始まるんだ。で、これらの舞台、何を参考にして作るかわかる? 実は、ここに出てくるキリストの誕生のシーンの舞台は、実在するんだ。会員たちは 5 月から 6 月にかけてスペインの様々な村々を訪れ、実際に存在する町並みを取材し、ここに忠実に再現するんだ。ほら、これがその町の一つさ。Motañana という村。」と言い、写真を見せてくれました。 「ほら、去年の会報の写真、見てごらん。綺麗にできているだろ? 普通、9 月から作られる舞台は、クリスマスが終わると、全て粉々に壊しちゃうんだ。なんと言っても、石膏で作り、そのあと色付けをするわけだから、次の年のために場所を確保しなきゃならない。ただ、この写真の舞台だけは、あまりにも美しくできたので、今年はそれをそのまま残し、少しアレンジして、雪化粧にしたんだ。それが、青いネオンで照らされたものさ。ご想像通り、二度と同じものは飾らないのさ。」 左が去年の作品。右が雪化粧された同じ舞台想像だと思っていた舞台は、実は今もスペイン各地に残っているそしてやはり毎年恒例が、クリスマスリース。最後に、筆者の友人エリセンダさん(https://www.instagram.com/elisendabachs/)の作品をいくつか紹介し、2017 年のクリスマスとはお別れです。2018 年もどうぞよろしくお願いいたします。 フェリス・アーニョ・ヌエボ(Feliz Año Nuevo)。新年明けましておめでとうございます。 手芸好きなエリセンダさんの作品には、ワインのコルクが使われていたりと、そのアイディアにはハッとさせられる この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月