2018/06/05 業界コラム 杉田 美保子 スペインの知られざる文化 No.14 スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子 スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。...もっと見る スペイン・バルセロナ滞在27年を経て、2015年に帰国。 石川県金沢市でスペインの生活や、スペイン語の楽しさを細々と伝授中。「故郷」バルセロナとはリモートでの繋がりが中心となっている中、余暇に畑を耕したりしながら、日本の生活も楽しんでいる。 京都のバルセロナ文化センターのスタッフとしても、どのようにしてスペイン語の面白さをみなさんに伝えられるか、日々模索中。 スペインの教育文化スポーツ省認定のスペイン語能力試験 DELE の C1(上級)所持。 筆者は高校卒業後、大阪に進学し、その後スペインのバルセロナに移住したため、地下鉄、バス、鉄道の発達した町に住み続けることとなりました。都会では自動車を持つ必要がなかったので、かなり遅くに普通免許を取得することになったのです。40 歳前には運転免許証を取らないと、体も頭も衰え、試験に受からないのではないか、という焦りと、わずか 200 キロ弱というフランスのスペイン国境沿いの村を訪れたときに、公共交通手段の少なさに、移動に丸一日を費やした、という苦い経験から、イースター明けの日に自宅近所の自動車学校に入校したのが、今から 14 年前の 2004 年でした。このエピソードは去年のコラム(車事情、所変われば)でお話ししましたね。 自動車学校、何が違う?現在はタブレットが導入され、テストもデジタル化されつつあるスペインでの筆記試験は 30 問。制限時間は 30 分、ミスは 3 つまで。日本の仮免、本試験の学科試験と比べれば、かなり問題数が少ない感じがしますね。 黄色と黒のデザイン。教習車は目立たないといけないから?さて、日本の自動車学校では、学科を進めながら構内で実地が行われますが、私の行ったバルセロナの学校は学校構内に練習場はありませんでした。そのため、学科試験が受かって、日本で言う仮免許となり、初めて実地が行われるのですが、いきなり路上です。でもご安心ください。サグラダファミリア教会横でいきなり仮免の教習生が運転を始めることはないですので。 また、当時のスペインの自動車学校の教習車は、土日は先生のプライベート車となっていました。車体側面には自動車学校の名前がマグネットで取り付けられ、屋根の三角錐の看板も土日は外したので、外見上はサイドミラーが二重になっていること以外、普通の乗用車、と言うわけです。ただ、「きちんと運転してね。助手席のブレーキを使うことになると、そのメンテナンスが大変なんだ。だから、僕には絶対ブレーキ踏ませないで」と言うコメントがやんわりとあり、おかげさまで試験を含め、先生にブレーキを踏ませることにはなりませんでした。 路上教習は、だいたい 25 コマほど取れば習得できるように設定されていますが、習得速度には個人差があり、頭ではわかっていても手足が付いてこない、言われても即座に手足が動かない、というのが普通の人だと思います。極端なケースとしては、一緒に学科を合格した近所の女性が、60 回乗っても習得できず、結局免許証の取得を断念してしまった、というのがありました。私もほぼそれに近く、40 回近く乗り、やっと自信がついた(=貯金が底をついた)ので、実地試験に挑んだわけです。 免許証の本試験前に健康診断があり、視力、聴力、血圧や心電図などを調べるのですが、スペインの場合、免許センターではなく、その周辺の外部保健施設による証明書を提出することになっており、そこに約 40€(日本円で約 5000 円)が必要となります。また、提出書類に貼る写真も持参しなければならなかったので、そういう細かい部分を考えると、手間とお金がかかった、というのが感想です。ただし、免許センター周辺には色々な外部委託のサービスが入っているため、身分証明書のコピー、写真、健康診断などは、手際よく用意できたのも事実ですが。 今回、中型自動車免許の取得のため、日本の自動車学校にお世話になりました。受付には 5 人ほどの方がユーザーの様々な質問に対応してくださり、その奥に 10 人ほどが事務処理などをしてくださり、そのまた奥には、ある時は厳しく、ある時は優しく叱咤激励、指導してくださる先生方がたくさん控えていらっしゃり、スペインの自動車学校とは全く正反対の世界を見ることができました。教習も、一段階、修了検定、仮免、二段階、卒検、卒業式、と、「学校」という意味が理解できました。 スペインの自動車学校では、実地試験は自動車学校では行わず、免許センターの試験官を乗せ、試験ルートを走行するというものです。フアン先生に乗せられて集合地点に行き、そこで先生が助手席、後部座席にほかの受験生と試験官が乗り込み、試験開始です。集合は朝 8 時。当日は、朝 7 時の 1 時間で予習をしてもらい、数ある試験ルートの 1 つを模擬試験として走り、準備は万端です。 進入禁止はよく似ているが、ストップは全然違う。それぞれ左がスペイン、右が日本の標識試験開始が 8 時 15 分。私の他に、受験生がいなかったため、後部座席には試験官のみが乗るはずが、試験ルートの最終地点、 車庫入れの試験を行う会場までの足が無いという大型車の試験官も乗り込むこととなり、大緊張です。試験が始まると、なんとフアン先生と予習で走ったコースと全く同じに、つまり、ヤマが当たったのです! そこで余計な車線変更をしてしまい、試験官のペンの音と、フアン先生の「チラリ見」があった(先生は隣に乗るだけで、指導はしてはいけない)のですが、なんのことはない、その先が工事中で左に寄らなければならないのを予習で知っていたためなのです。 朝 8 時半のバルセロナの町は、ラッシュの最中で、交差点も大渋滞。ルートはメインストリートではなかったため、信号待ちの時間も長く、それも一回の青信号では通り過ぎることができず、再び信号待ち。あまりの緊張に汗が出るだけではなく、クラッチを踏んでいる左足が「がたがたがたがた」と震えてきたのです! ハンドルを持つ姿勢もチェックされるので、体勢は変えず手を少しずらし、左肘で震える足の太ももを抑え、なんとかエンストするのをこらえたのでした(苦笑)。あの 5 分ほどの時間が、永遠とも言える長さに感じたわけですね。 「試験中に失敗したら、冷静に『Perdón(ペルドン=すみません)』と謝れば良いからね。焦るなよ」と言われていたのですが、それを言う状況に陥ってしまいました。ヨーロッパには、信号のある交差点ではなく、環状交差点が多く、慣れるまでが大変なのですが、そこで車の流れが切れるのを待つ間に、とうとう左足に力が入らず、クラッチを踏んだと思ったものの、シフトが入っておらず、出発でアクセルを踏みすぎる、という失態、つまり空ぶかし状態となってしまったのです…。「ぶうううううううん」というエンジン音。先生の「チラリ見」。試験官たちのおしゃべりが止み…。「Perdón」。 環状交差点。この逆三角マークはスペインでも「徐行(Seda el paso)」。ストップの八角形とははっきり違う無事免許がもらえたのは、このペルドンが功をなしたのか、どうなのか…。このまま謎にしておきましょう。そして、初心者マーク! 骨折した友達の大きな車の運転手もしましたよ。 白抜きの「L」は初心者マーク。英語の “learner” の頭文字。49cc のバイクにも付ける義務がある。もちろん車にも! 現在、私の母校 ZonaF は、バルセロナで唯一実地の練習スペースを有するまでになっているようで、次のバルセロナ滞在では挨拶がてら、是非覗いてみたいな、と思っています。 ¡Nos veremos el próximo mes! (ノス ベレモス エル プロキシモ メス) 来月、お会いしましょう! という意味。 この記事に関するお問い合わせはこちら 問い合わせする スペイン語通訳・翻訳 / スペイン語講師 杉田 美保子さんのその他の記事 2024/10/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.70 2024/09/10 業界コラム スペインの知られざる文化 No.69 2024/08/07 業界コラム スペインの知られざる文化 No.68 2024/07/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.67 2024/06/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.66 2024/05/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.18 2024/04/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.17 2024/03/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.16 2024/01/10 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.15 2023/12/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.14 2023/11/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.13 2023/10/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.65 2023/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.64 2023/07/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.12 2023/06/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.63 2023/05/09 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.11 2023/04/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.10 2023/03/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.9 2023/02/14 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.8 2023/01/11 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.7 2022/12/13 業界コラム スペインの知られざる文化 No.62 2022/11/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.61 2022/10/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.60 2022/09/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.59 2022/08/09 業界コラム スペインの知られざる文化 No.58 2022/07/12 業界コラム スペインには無い日本の魅力 No.6 2022/06/14 業界コラム スペインの知られざる文化 No. 57 2022/05/11 業界コラム スペインの知られざる文化 No.56 2022/04/12 業界コラム スペインの知られざる文化 No.55 2022/03/08 業界コラム スペインの知られざる文化 No.54 足立 正二安藤 真安藤 繁青木 徹藤嶋 正彦古川 怜後藤 一宏濱﨑 利彦早川 美由紀堀田 智哉生田 幸士大西 公平䕃山 晶久神吉 博金子 成彦川﨑 和寛北原 美麗小林 正生久保田 信熊谷 卓牧 昌次郎万代 栄一郎増本 健松下 修己松浦 謙一郎光藤 昭男水野 勉森本 吉春長井 昭二中村 昌允西田 麻美西村 昌浩小畑 きいち小川 貴弘岡田 圭一岡本 浩和大西 徹弥大佐古 伊知郎斉藤 好晴坂井 孝博櫻井 栄男島本 治白井 泰史園井 健二宋 欣光Steven D. Glaser杉田 美保子田畑 和文タック 川本竹内 三保子瀧本 孝治田中 正人内海 政春上島 敬人山田 明山田 一米山 猛吉田 健司結城 宏信 2024年10月2024年9月2024年8月2024年7月2024年6月2024年5月2024年4月2024年3月2024年2月2024年1月2023年12月2023年11月2023年10月2023年9月2023年8月2023年7月2023年6月2023年5月2023年4月2023年3月2023年2月2023年1月2022年12月2022年11月2022年10月2022年9月2022年8月2022年7月2022年6月2022年5月2022年4月2022年3月2022年2月2022年1月2021年12月2021年11月2021年10月2021年9月2021年8月2021年7月2021年6月2021年5月2021年4月2021年3月2021年2月2021年1月2020年12月2020年11月2020年10月2020年9月2020年8月2020年7月2020年6月2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月2019年6月2019年5月2019年4月2019年3月2019年2月2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月2018年2月2018年1月2017年12月2017年11月2017年10月2017年9月2017年8月2017年7月2017年6月2017年5月2017年4月2017年3月2017年2月2017年1月2016年12月2016年11月2016年10月2016年9月2016年8月2016年7月2016年6月2016年5月2016年4月2016年3月2016年2月2016年1月2015年12月2015年11月2015年10月2015年9月2015年8月2015年7月2015年6月2015年5月2015年4月2015年3月2015年2月2015年1月2014年12月2014年11月2014年10月2014年9月2014年8月2014年7月2014年6月2014年5月2014年4月2014年3月2014年2月2014年1月2013年12月2013年11月2013年10月2013年9月2013年8月2013年7月2013年6月2013年5月2013年4月2013年3月2013年2月2013年1月2012年12月2012年11月2012年10月2012年9月2012年8月2012年7月2012年6月2012年5月2012年4月2012年3月2012年2月2012年1月2011年12月2011年11月2011年10月2011年9月2011年8月2011年7月2011年6月2011年5月2011年4月2011年3月2011年2月2011年1月2010年12月2010年11月2010年10月2010年9月2010年8月2010年7月2010年6月2010年5月2010年4月2010年3月2010年2月2010年1月2009年12月